計算気象予報士の「こんなの解けるかーっ!?」

「ローカル気象」の様々な問題に「数値シミュレーション」と「数理ファイナンス」の視点からアプローチ・備忘録

気象情報を企業活動に活かす仕組み?

2019年01月11日 | オピニオン・コメント
 最近は「天候リスクマネジメントへのアンサンブル予報の活用に関する調査」の報告書に加えて、「企業の天候リスクと中長期気象予報の活用に関する調査」の報告書を少しずつ読み進めています。

 これらの資料は過去にも何度か読書にトライしましたが、予備知識に乏しく途中で挫折しておりました。しかし、ビジネス社会における実務経験や気象業務の知識・経験に加えて、新たに経済学や金融工学の基礎を学んだことで、ようやく読み解くことができつつあります。理解できる内容が増えてくるにつれ、自分の思考も深まって行くのを感じます。それでも「読書百篇」の言葉通り、引き続き何度も読み返すことになりそうです。

 さて、前回の記事でも書きましたが、私が専門領域として掲げているのは「計算・局地気象分野」と「経済・金融気象分野」です。これは、下図のように、大きく分けて3つのキーワードから構成されています。


 まずは「地域気象」です。地域に根差した「どローカル気象」を対象として、予報・解析・研究を行うという考え方です。

 続いて「数値シミュレーション」です。対象地域の局地気象特性を調べ、その知見を基に解析モデルを構築し、様々なデータと組み合わせて予報・解析・研究するものです。私は、その実現のために「熱流体解析(ラージ・エディ・シミュレーション)」や「人工知能(ニューラル・ネットワーク)」などの数値解析を用いています。

 そして残るのが「数理ファイナンス」です。これは「気象情報をビジネスに活用する」と言う考え方です。ビジネスにおける「天候リスクマネジメント」と言っても良いでしょう。その一環として、天候デリバティブの研究に取り組んでいます。事業を進めていく上で潜在的に存在する天候リスクの分析(計量化)、すなわち天候リスクの「見える化」を図る必要があります。このための手法について、天候デリバティブのプライシングの考え方には大いに学ぶものがあると考えています。

 以前は「地域気象」と「数値シミュレーション」を組み合わせた「計算・局地気象分野」に重点的に注力してきましたが、近年は新たに「地域気象」と「数理ファイナンス」を加えた「経済・金融気象分野」に取り組んでいます。一見、これらの分野はバラバラに独立しているようにも見えますが、下図のように連携することができます。換言すれば、「気象情報を企業活動に活かす仕組み」の姿を模索しているのです。


 気象に関するデータは大きく分けて、観測データと予測データがあります。過去の観測データの分析を通じて、地域気象の特性を明らかにすることは、地域気象の情報サービスを担う上で重要なコアとなるでしょう。さらに、その知見と種々の予測データを組み合わせることで、地域に根差した詳細な予測情報を提供することも、気象情報会社には求められます。

 そして、経営・財務・事業データと気象データを組み合わせて分析することにより、当該地域において事業を進める際の天候リスクを把握することもまた重要です。公共性の高い分野の例としては防災・減災がまず挙げられますが、それに留まらず、より身近なビジネスにおいても天候リスクを抱えている事業は少なくありません。自社の事業動向が天候の影響に左右されると言う認識を「何となく感じる」段階から、ある程度「計量化」して「見える化」を図り、定量的に把握するニーズが高まるかもしれません。

 その大きな目的は「収益の安定化」です。天候によって収益の動向が振り回されるのは、ある程度は致し方ないにせよ、その振れ幅(金融工学的にはボラティリティ)を小さくすることで、収益のアップダウン(リスク)をより安定的にキープできる可能性があります。そのためのリスクヘッジ手法として、様々な金融手法が開発されつつあります。また、単に金融手法に頼るばかりでなく、気象情報を有効に活用できる可能性も広がって来ています。

 このような「気象情報を企業活動に活かす仕組み」についても検討・研究を重ねて行きたいと考えています。
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鬼の居ぬ間に・・・いや、雪の降らぬ間に、書く。

2018年12月15日 | オピニオン・コメント
 天気図上でも「冬型の気圧配置」が頻繁に現れるようになりました。この時期は、毎年恒例の「降雪量の予報」が重く圧し掛かります。この他にもローカルメディアの番組に向けた原稿の執筆などもあり、一年の中でも最もビジーなシーズンが始まりました。

 これらのルーティン・ワークの傍らで、最近は時間の合間を見ながら「天候リスクマネジメントへのアンサンブル予報の活用に関する調査」の報告書を少しずつ読んでいます。この調査は、平成13年~14年度に気象庁が経済産業省と連携して実施したものです。気象の変化が事業に与える影響やリスクヘッジのための気象情報の活用と言った視点で、様々な分析やアプローチが行われております。

 確かに「気象情報をビジネスに活用する」を言う発想は以前からありましたが、ニーズとシーズのミスマッチや予測限界などの課題もあり、気象情報サービス産業の市場規模は300億を超える程度で停滞する状態が続いておりました。しかしながら、気象情報をビジネスに活用することへの潜在的なニーズの高まりや気象予測技術の発展も後押しとなって、気象ビジネス推進コンソーシアム(WXBC)が、昨年の3月に立ち上がりました。

 これまでも「気象情報をビジネスに活用したい」と言う潜在的ニーズはありましたが、それらに応えられるだけのソフト&ハード両面のインフラが漸く今、徐々に整いつつあるのかも知れません。いわば「現実が漸く理想に追いつき始めた」と言うのが率直な感想です。

 かつて気象業務法が改正され、気象予報士制度が創設されるに至った背景にもまた、「気象情報をビジネスに活用する」と言う潜在的なニーズがあったものと認識しております。つまり、「欲しい時に、欲しい所の、詳しい気象情報」を民間企業が独自に提供するためのライセンス制度です。これを「街の予報官」と言うキャッチコピーで触れ回る通信講座もあったほどです。しかし、気象情報サービス産業の市場規模は先述の通り、停滞~漸増と言う状況が続いています。

 その一方で、気象情報をビジネスに活用する方向性とは別に、防災分野における気象予報士の活躍の場を広げる動きが活発になっています。例えば気象庁では、気象予報士などを対象に「気象防災アドバイザー」を育成する研修を実施しました。地方公共団体の防災の現場で即戦力となる気象防災の専門家を育成することを目的としたものです。

 これに留まらず、(一社)日本気象予報士会では、各地の気象台で実施される「お天気フェア」のイベントへの協力や、各地の気象台と連携して防災知識の普及を目的とした出前講座を実施しています。地域の皆様に対し、一般的な気象に関する知識を広め、理解を深めて頂くことは、グラスルーツ(草の根)の防災啓蒙活動と言えるでしょう。個人的な印象としては、どちらかと言うとビジネス面への応用と言うよりも、広く防災面の啓蒙活動の方にベクトルが向いているように感じています。

 さて、私が専門領域として掲げているのは「計算・局地気象分野」と「経済・金融気象分野」です。これは大きく分けて3つのキーワードから構成されています。


 一つは「地域気象」です。山形県の冬の気象への取り組みに代表されるように、あくまでも地域に根差した「どローカル気象」を対象として、予報・解析・研究を行っています。従って、気候変動や地球温暖化などの話には余り詳しくありません。

 続いては「数値シミュレーション」です。過去の記事「一人の『工学屋』のポジションから『局地気象』に向き合う」でも述べたように、気象予報士は「対象地域の局地気象特性を調べ、その知見を基に解析モデルを構築し、気象庁等から発表される様々なデータと組み合わせて予報できる」人材であると考えています。

 私は、その実現のために「熱流体解析」や「人工知能」などの数値解析を用いています。その取り組みの詳細については「計算・局地気象分野」のカテゴリをご参考下さい。

 そして3つ目が「数理ファイナンス」です。地域に根差した気象情報を発信するために、地域の気象に関する研究・解析を重ねて、予報を行うわけです。そこで、改めて考える必要があるのは、そのような詳細な「どローカル気象情報」が必要とされるのは何故か?と言うことです。どこに向けて発信し、どのように役立てていくのか。

 確かに、地域の防災に役立てる意味はありますし、地域のコミュニティ放送でも役に立てるでしょう。他には何があるのか・・・。ここで答えに詰まってしまうと、それこそ「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と、5歳児のチコちゃんに叱られてしまいます。

 そこで「気象情報をビジネスに活用する」と言う原点に立ち戻るのです。気象データの解析や局地気象の予測を行い、さらに「その知見を様々なビジネスに活用する」こと。これが、気象予報士の活躍するフィールドになると思います。そこまでを見据えたときに、ビジネスにおける気象情報の活用の意味を改めて考えると「マーケティング」と「リスクマネジメント」が大きな所ではないかと考えます。

 とは言え「マーケティング」もまた「売れ筋商品の潜在的なニーズの変動」と捉えれば、これもまた一つの変動し得る「天候リスク」になるので、究極の所「天候リスクマネジメント」に収斂するでしょう。

 気象要素の変動の幅を早い段階で予測することができれば、その範囲で必要な対応策を講じることができる、と言うことです。株価などの変動の幅を予測する上で用いられるのが金融工学ですが、気象要素は物理法則に則ってある程度は予測可能です。しかしながら、現時点では金融工学的手法に負う所が大きいのではないか、と感じております。その基礎理論にも登場する確率微分方程式を数値解析で解く、というものまた興味深い研究分野です。

 また、実際の事業計画に際しては、意思決定からその効果が発現するまでの時間(リード・タイム)が短期間であれば「ウェザー・マーチャン・ダイジング」、長期間であるならば「ウェザー・デリバティブ」などの使い分けも可能です。

 さらに、最近は長期予報の情報も充実してきています。本業では余り長期予報を扱わないのですが、特に2週間~1か月程度の中長期予報の予測データ(GPV&ガイダンス)に関する高解像度化が進んでいます。このようなデータを用いたウェザー・リスクマネジメントに関する研究にも取り組んでみたいと思っています。

 この冬は『会社のスタッフ』の本業としては、降雪予報やローカルメディアの気象担当、その他諸々など、ビジーな日々を過ごしております。しかし、それは私にとっては「ホンの一部」に他なりません。本業の枠にとらわれることなく、『一人の専門家』として「地域気象の数値シミュレーションから、地域における天候リスクマネジメントまでを俯瞰できるようなビジネスモデル」にも取り組んでみたいと考えています。

 さて、来る2019年2月23日には、(一社)日本気象予報士会「第11回研究成果発表会」が開催されます。先日、正式に発表の申込手続を完了しました。今回は「天候デリバティブ」に関する演題でエントリーしました。十数年前、余りの難解さに「天候デリバティブ」を学ぶことを一旦は放棄した私ですが、そのような経験を持つからこそ「天候デリバティブの考え方について少しでも判りやすく解説したい」という熱い想いを持って挑みたいと思います。

 このような私の取り組みは、気象界の中でも正に「グラスルーツ」です。もとい、見過ごされがちな雑草のような存在です。しかし、そこから新しいイノベーションにつながれば、何か飛躍のチャンスが巡ってくるのではないか、と感じております。少しでも興味を持って頂けたら、嬉しいです。
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2018年12月07~09日の降雪量と降水量(山形県)

2018年12月11日 | 山形県の局地気象
 この週末は本格的な冬の到来を実感しました。

 山形県内では7日~9日にかけて大雪となり、大蔵村肘折では110cmの降雪となりました。この3日間のアメダス降雪量の分布に等値線を描き加えてみると次のようになります。


 真ん中より少し上の110cmが大蔵村肘折です。この周辺では特に降雪量の多い領域(極大域)となっています。庄内・最上地域の朝日連峰沿いで60cm以上の降雪に見舞われたようです。一方、右横の9cmが県庁所在地の山形です。朝日連峰の風下側に当たるため、降雪量は少なくなっています。

 また、南部の置賜地方では20cm台の降雪量となりました。左下の20cmが小国、右下の26cmが米沢です。この付近は小国付近は飯豊連峰、米沢付近は吾妻連峰が連なっており、その影響も現れているようです。

 続いて、この3日間のアメダス降水量の分布に等値線を書き加えてみました。


 朝日連峰の周辺で100mm以上の降水域となっています。また、朝日連峰から南の飯豊連峰にかけて、80mm以上の極大域となっています。

 冬の季節風が朝日連峰や飯豊連峰に向かって吹き付ける形となり、この地形に沿って降水量の極大域となったことが窺えます。ただ、気温の条件に応じて雪やみぞれ、あるいは雨になるなどの違いが現れたようです。
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講演も無事に終わりました。

2018年11月19日 | 気象情報の現場から
 昨日は、社団法人の会合の場をお借りして『 「天候リスク」に備える「お天気ビジネス」新時代 ~異常気象に「保険」をかける?~ 』と題した講演を行いました。

 実はちょうど半月前には、仙台で開催された気象学会において、15分程度の時間枠で「ニューラルネットワークを用いた新潟県内の冬期降水域の解析」と題した研究発表を行いました。こちらは「冬の季節風の条件に応じて、新潟県内で雪が降りやすいのはどこか?」をAI(ニューラルネットワーク)で学習および予測するという取り組みです。

 一方、今回の時間枠は「約60分」と長きに渡る講演ということもあり、前半では「2018年の顕著な気象現象」を振り返り、そのメカニズムについて概観しました。先の冬の新潟県内の大雪や夏の猛暑、さらには西日本の豪雨に関する事例を取り上げ、解説を試みました。

 また、後半では「気象変化と経済活動に関わり」を念頭に、気温と売れ筋商品の傾向や天候に伴う様々なリスクを概観しました。具体的には、昇温期・降温期における売れ筋商品のトレンドや夏と冬の電力需要、さらに猛暑の野菜価格への影響を取り上げ、さらに「天候デリバティブ(天候リスク保険)」の契約例を幾つか御紹介しました。

 肝心の「保険の掛け金」に相当する「(オプション)プレミアム」については触れませんでしたが、この辺も関心を持たれた部分です。実際、天候デリバティブに関する研究では「プレミアムの算定(プライシング)」が重要なテーマとなることが多いのですが、さすがにそこまで行くとCAMJ等のレベルになってしまいます。

 このように、これまでの講演の中では余り扱ってこなかったテーマを多く含んでいるので、その意味では「チャレンジ」でもあり、「博打」のようなところもありました。また、所謂「懇親会」の講演(卓話)の場で、災害を及ぼす気象現象という「ネガティブ」な話題や、生々しい「カネ」の話をするのもどうかと・・・正直、一抹の不安はありました。

 しかし幸いなことに、参加された皆様にも興味・関心を持って頂き、盛況の内に終わることができました。思い起こせば、このオファーを頂いたのが4月の事でした。それから、企画・構成を思案し、試行錯誤を重ね、ようやく講演講師の大役を果たすことができました。

 先の学会発表に続いて、今回の講演も終わり、今年最大のイベントは閉幕しました。

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学会発表の次は講演です。

2018年11月04日 | 気象情報の現場から
 日本気象学会・秋季大会が終わり、ホッとしたのも束の間。実は、2週間後に「更なる山場」が控えています。

 11月18日(日)に開催される社団法人の会合の場をお借りして『 「天候リスク」に備える「お天気ビジネス」新時代 ~異常気象に「保険」をかける?~ 』と題した講演を行います。

 冒頭では「私の専門分野」を紹介し、前半では「2018年の顕著な気象現象」を振り返ります。特に「大雪・猛暑・豪雨」について取り上げます(台風は間に合わなかった)。

 今年を振り返ってみると、先の冬は新潟県内も大変な大雪に見舞われました。平野部を中心に大雪傾向で、下越地方では特に顕著な大雪となりました。


 また、夏は長きに渡って厳しい暑さが続きました。特に象徴的なのは8月23日の最高気温です。県内3か所で40℃に達しました。


 このように「異常」と言いたくなるような「顕著な天候」に見舞われた要因について、解説していきます。

 後半では「天候と経済活動の関係」を概観し、最後は天候リスク保険としての「天候デリバティブ」について述べる予定です。


 ビジネス面への応用も意識して、天候デリバティブの契約例をいくつか紹介します。
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気象学会・秋季大会に出席しました。

2018年11月02日 | CAMJ参加記録
 10月29日~11月1日の日程で「日本気象学会2018年度秋季大会」が仙台国際センターを舞台に開催されました。この期間の最終日に日本気象予報士会(CAMJ)が主催する専門分科会「局地気象とくらし」も開催されました。

 私の居る長岡市から仙台へ向かう際は、まず新潟市に出て、そこから仙台行の高速バスに乗り換える必要があります。新潟市に出るためには、鉄道や県内高速バスなどの移動手段がありますが、今回は県内高速バスを利用しました。新潟市(万代バスセンターシティ)から仙台市(仙台駅東口)へは県外高速バス(WEライナー)を利用します。

 今回は大会最終日のみの参加という事で、1日(木)の朝のバスで移動しました。新潟市内は運悪く「通勤ラッシュ」に重なり、危うく仙台行の高速バスへの乗り損ねる所でした。しかし、万代バスセンターに全力疾走で駆け込み、間一髪でした。

 仙台に向かう高速バスの車内では仮眠を取りつつ、秋の深まる山々と空の織り成す景色を堪能しました。この日は雲の多い空模様となっていました。


 仙台駅から国際センターまでは地下鉄を利用しました。前回(5年前)・前々回(10年前)は市営バスを利用しましたが、今回は地下鉄で行けることを知ったので、乗ってみることにしました。地下鉄の最寄駅を出ると、案内の看板が見えてきました。


 国際センターの階段を昇って3階に上がり、ようやく見つけたD会場。この大会議室で専門分科会が行われます。室内には約40~50名程の聴衆がいたように思います。ただ、真面目に数えたわけではないので、アバウトな数字です。


 今回、発表した演題は「ニューラルネットワークを用いた新潟県内の冬期降水域の解析」。要は「冬の季節風の条件に応じて、新潟県内で雪が降りやすいのはどこか?」をAI(ニューラルネットワーク)で学習および予測するという試みです。


 ざっくり言って、主な降水域は上空の季節風の風下側を中心に広がる傾向があり、季節風が強まると全体的に山沿いの地域へ偏る傾向が見られました。これは、実際の予報経験や事例解析とも一致するものです。

 今回は初めて「オーラルセッション(口頭発表)」を体験しましたが、手持ちのPCのプロジェクターへの接続がうまくいかず、会場係員の皆さんに助けて頂く一幕もありました。ただ、その後の発表から討論まではスムーズに運んだので、ホッと一安心。

 また、プレゼンの際は指示棒を使うスタイルを貫いてきましたが、今回は場の流れに従って、初めてレーザーポインターを使用しました。今後はこういった器具に慣れることも必要なのかもしれません。


 発表後はそのまま仙台市内に一泊し、翌日・つまり今日の高速バスで長岡に戻ってきました。今朝の仙台は冷え込みましたが、綺麗な青空も見られました。
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山越え気流の2次元解析

2018年10月25日 | 計算・局地気象分野
 今から7年前に「山越え気流の解析モデル」と言う記事を掲載しました。局地気象の特性を把握するためには、地形の影響を理解する必要があります。この出発点となるのが山岳地形を乗り越える気流の解析(山越え気流)です。そこで今回は、2次元の熱流体数値シミュレーションを用いて、この問題にアプローチしてみました。

第1図・山越え気流の解析モデル

 第1図は、山越え気流の理論解析に用いられる古典的な解析モデルです。

 まず、三角形状の山を中心にその周辺の大気を二層構造と仮定します。ここで、上下層の境界面を自由表面と呼びます。また、下層の温位(ポテンシャル温度)をθ0[K]、上層の温位を少し高めのθ0+Δθ[K]と設定すると、自由表面は逆転層に相当します。

 さらに、左側面から速度U0[m/s]の一様な風が流入するという条件を付加します。ここで、重力加速度をg[m/s2]、自由表面の高さH0[m]とすると(図では省略)、フルード数Frが定まります(※)。速い流れの場合ではFrは大きな値となる一方、遅い流れの場合ではFrは小さな値となります。

(※) Fr = U0 / { g (Δθ / θ0 ) H0 } 0.5

 今回は、自由表面の高さとフルード数の条件を変化させて、山を乗り越える2次元流れの解析を試みました。

第2図・自由表面の設定(上段:High,中段:Middle,下段:Low)

 第2図は、3種類の高さの自由表面です。

 上段は山頂の2倍(High)に設定しています。様々な文献や書籍で見る山越え気流の図も、概ねこのようなイメージで描かれているものを多く見かけます。中段は山頂と同じ高さ(Middle)に設定しています。さらに、下段は山頂の半分の高さ(Low)に設定しています。逆転層が山頂より低い場合などを想定しています。

 また、フルード数Frは、Fr=0.3, Fr=0.6, Fr=0.9の3つの場合を設定しました。この時、レイノルズ数Reは一貫して、Re=1.02×103を用いています。

 以上の条件を基に数値シミュレーションを行いました。ここで、今回使用した数値計算のスキームは次の通りです。

・対 流 項:3次精度風上差分(UTOPIA)
・拡 散 項:2次精度中央差分
・時間発展:2次精度Adams-Bashforth法
・圧力解法:MAC(Marker And Cell)法

第3図・計算結果(Fr=0.3の場合 上段:High,中段:Middle,下段:Low)

 第3図は、フルード数Fr=0.3の場合の計算結果です。3種類のフルード数の中では最も「遅い流れ」に相当します。また、図中の黒い帯状の領域は自由表面に相当します。

 自由表面の高さで比較すると、Highの場合には、風下側の斜面上で剥離が生じ、時計回りの渦(鉛直循環)が形成されています。この渦の真上では、風速が部分的に増しています。また、その上空では自由表面が部分的に陥没していますが、概ね水平の状態を保っています。

 Middleの場合は、風下側の斜面上に渦は形成されないものの、部分的に風速が増しています。しかし、風下側の麓では風は弱くなっています。その上空の自由表面は、山の風下側で少し波を打ち始めています。

 Lowの場合には、風上側の斜面上で時計回りの渦が形成される一方、風下側の斜面上では部分的に風速が増しています。その上空の自由表面は、山頂から風下側で少し波を打ち始めていますが、概ね水平の状態を保っています。

第4図・計算結果(Fr=0.6の場合 上段:High,中段:Middle,下段:Low)

 第4図は、フルード数Fr=0.6の場合の計算結果です。3種類のフルード数の中では「やや速い流れ」に相当します。

 自由表面の高さで比較すると、Highの場合には、風下側の斜面上で剥離が生じ、時計回りの渦が形成されています。この渦の真上では風速が部分的に増しており、地上に向かって強い風が吹き下ろすような形になっています。上空の自由表面は、山頂より風上側では水平を保つ一方、山頂より風下側では波を打っています。

 Middleの場合は、風上側の斜面上で風速が増して、自由表面を押し上げて山頂を乗り越える様子が解析されています。この結果、風下側の斜面上で剥離が生じ、薄いながらも時計回りの渦が形成されています。この渦の真上では風速が部分的に増しており、地上に向かって強い風が吹き下ろす形になっています。また、上空の自由表面は、山頂より風上側では水平を保つ一方、山頂より風下側では地上に打ち付けるような波を形成しています。

 Lowの場合も同様に、風上側の斜面上で風速が増して、自由表面を押し上げて山頂を乗り越えています。この結果、風下側の斜面上で剥離が生じています。この様子は自由表面の形状にも反映されています。また、自由表面は風下側では地上に打ち付けられるような激しい波となっています。

第5図・計算結果(Fr=0.9の場合 上段:High,中段:Middle,下段:Low)

 第5図は、フルード数Fr=0.9の場合の計算結果です。3種類のフルード数の中では最も「速い流れ」に相当します。

 主な流れの特徴は先の第4図(Fr=0.6)と同じですが、山頂より風下側の自由表面の波動、およびHighとMiddleの風下側の斜面上における渦が顕著になっています。
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気象学会・秋季大会が間近

2018年10月14日 | 気象情報の現場から
 10月29日~11月1日の日程で「日本気象学会2018年度秋季大会」が仙台国際センターを舞台に開催されます。

 さて、近年の気象学会・秋季大会では、期間最終日に日本気象予報士会(CAMJ)が主催する専門分科会も開催されています。

 10年前の「日本気象学会2008年度秋季大会」は仙台で開催されました。その際は、CAMJ東北支部主催の大気象サイエンスカフェ「かだっぺや ─天気を知って家庭や地域をもっと元気に!─」が開催されました。

 実はこの「2008年度秋季大会」が、私の学会発表の「デビュー戦」となりました。研究テーマは「山形県置賜地方における冬季局地風の力学的機構とフルード数の関係」です。当時、私は1日目のポスターセッション、「かだっぺや」は3日目、という事で、結局「3泊4日」の日程で仙台に滞在しました。何だかんだと言いつつ、今となっては良い思い出です。当時のことは、次の3つの記事にも書き記しています。

(速報) 日本気象学会2008年度秋季大会 + 大気象サイエンスカフェ「かだっぺや」 無事終了
大気象サイエンスカフェ「かだっぺや」・・・杜の都で「かだりまくった」夜。
今回の研究発表の要旨


 今年の秋季大会も、再び仙台で開催されます。CAMJの専門分科会は、東北支部主催の「局地気象とくらし」(11月1日)です。

 私はこの場で「ニューラルネットワークを用いた新潟県内の冬期降水域の解析」というテーマで発表します。いつもは「ポスター形式」ですが、今回は(学会では初の)「オーラル形式」です。

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AIやロボットが労働を担う時代

2018年10月07日 | オピニオン・コメント
NHKスペシャル(2018年10月07日)
マネー・ワールド ~資本主義の未来~ 第2集 仕事がなくなる!?
http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20181007

 人間の仕事のほとんどがAIに奪われる・・・そのような危機を煽られながら、歴史上の出来事が幾つか脳裏に浮かんできました。

 中世の日本における武士の主従関係、すなわち「御恩と奉公」の体制が確立したのは、鎌倉幕府の頃と言われています。将軍(鎌倉殿)と御家人は、互いに「ギヴ・アンド・デイク」の関係が成立しています。しかし、元寇の後の御家人への恩賞給与は僅かに留まったことなどから、この「ギヴ・アンド・デイク」の関係に綻びが生じました。御家人は次第にの経済的に圧迫され、幕府に対して不満を持つようになりました。この結果、鎌倉幕府の滅亡にまで発展しました。

 また、19世紀初頭のイギリスでは、資本家は労働者に賃金を与え、労働者は資本家のために労働を担っていました。資本家と労働者は、互いに「ギヴ・アンド・デイク」の関係が成立しています。さて、産業革命によって生産の機械化が進み、生産労働が人間から機械にシフトすることで、こちらも「ギヴ・アンド・デイク」の関係に綻びが生じました。労働者の失業不安は次第に高まり、機械化の波に抵抗する機運も高まりました。この結果、ラッダイト運動の嵐が巻き起こりました。

 現在の資本主義社会でも、資本家は労働者に賃金を与え、労働者は資本家のために労働を担っています。資本家と労働者は互いに「ギヴ・アンド・デイク」の関係が成立しています。さて、AIによる業務の自動化・効率化が進み、多岐にわたる分野で、「ギヴ・アンド・デイク」の関係に綻びが生じ始めています。資本家は労働者に頼ることなく、AIやロボットを使って収益を上げることが出来ます。労働者は収入を得にくくなり、さらにレーゾンデートルも失われるような事態も予想されています。

 さらに、「レーゾンデートルの喪失」という点では、明治維新に伴う徴兵令の発布が思い浮かびます。この徴兵令の発布により、レーゾンデートルを失った士族(旧武士)達の不満が高まりました。そしてそれは、後の西南戦争にまで発展しました。

 人間による「財の消費」が無ければ、そもそも経済は回りません。収入を得られなければ、人間は消費行動を起こすことが難しくなります。また、レーゾンデートルが無ければ、人間は自らの社会的な居場所を見出すことが出来ません。

 経済活動の本質は「ギヴ・アンド・デイク」です。現在のビジネスにおける「ステークホルダー」としては大きく分けて「経営者・従業員・出資者・顧客」の四者が存在します。そして、この四者は互いに「ギヴ・アンド・デイク」の関係でつながっています。この中で、AIやロボットは「従業員」のポジションにはなれますが、その他のポジションにはなれません。

 人は誰でも「財の消費」を行う際は、「顧客」のポジションに立ちます。しかし、その前提として「財の消費」に対する「貨幣(対価)」を支払う必要があります。つまり、収入があることが前提となります。その収入を得るために、多くの人は「従業員」のポジションに立って、労働に従事しています。このポジションをAIやロボットに取って代わられることは、多くの人の「収入を得る手段」が断たれることにもなり得るのです。それはすなわち、経済活動の先細りにつながるリスクでもあるのです。すなわち、「賃金収入の減少→購買意欲の減少→経済活動(消費活動)の縮小→企業収益の減少→税収の減少」という負の連鎖になるでしょう。もちろん、少子化も加速するでしょう。

 将来を見据えて、「ベーシックインカム」など、何らかの対策を考えて行かないと、経済活動が立ち行かなくなる恐れもあるのではないか、と感じています。財源の確保については「法人税」がまず候補に挙がりますが、EUでは「ロボット税」を導入しているようです。また、AIやロボットによる業務効率化を活用して、国全体としてのGDPの向上を目指すという考え方もあるでしょう。単純に「AIに仕事を奪われる」等と目先の事をセンセーショナルに煽っている場合では無く、資本主義社会の体制や構造が大きく変わってしまうかも知れません。

 「AIが得意なことはAIに、人間が強い分野は人間に」「AIに奪われるのを恐れるのではなく、AIを使ってどんな事業を進めていくのか」と言った発想の転換が必要ではないでしょうか。

 例えば、事業の方向性を示し、計画に落とし込むまでは「人間」が行い、実際の現場の最前線の仕事を「AIやロボット」が担うのです。個々の細分化された業務は「AIやロボット」に任せ、それらを統括・監督する役割を「人間」が担えば良いのです。

 世間では「AI」は何やら「不気味な存在」のようなイメージで語られることが多いですが、結局の所「過去の蓄積」に依存します。蓄積された過去のデータを与えられ、その枠の中で学習・類推し、判断する存在です。この枠の中でパターン化された仕事に特化することで威力を発揮します。従って、ある程度パターン化、シーケンス化、あるいはルーティン化された「個々の細分化された業務」に強いのです。

 一方、人間は、枠にとらわれず自由に発想することができます。従って、パターンにとらわれず柔軟な発想で臨機応変に進められる分野については、AIに対して優位性をもつのです。パターンにとらわれず柔軟な発想で事業の方向性を示し、臨機応変に計画を修正し、不測の事態に対処するのは人間の範疇です。人間は機械とは異なり、自由な発想ができます。それは機械に比べて「アバウト」であり「いい加減」、さらに言えば「気まぐれ」な気質を持っているという事も出来ます。一見、ネガティブな言葉にも見えますが、見方を変えれば「AIに対する優位性」と捉えることもできるでしょう。

 進化論で有名なダーウィンの言葉とされているものに「強い者が残るのではなく、賢いものが生き残るのでもなく、変化に対応できるものが生き残る」があります。AIが台頭する時代は、社会が大きく変化する時代です。時々刻々と変化する社会の流れを見据えつつ、何が求められているのか、その要請に応えるためには何をどうすれば良いのか、それを常に考え、試行錯誤することが人間に役割なのかもしれません。その上で具体的な作業はAIにどんどん割り振って行くような分業体制になるのかな・・・と漠然と考えています。
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(一社)日本気象予報士会の講習会

2018年10月06日 | CAMJ参加記録
今日は(一社)日本気象予報士会の講習会を受講してきました。


 講習の中では、温帯低気圧や前線の構造、コンベアーベルトに関する気象学の講義と、専門天気図のマニュアル解析の実習がありました。

 数値モデル(LES)や人工知能(AI・NN)によるデータ・アナリシスをメインとしている私にとっては、ある意味「懐かしい」とも「初心に帰る」とも言えるようなもので、新鮮さを感じました。
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台風に備えるデリバティブ

2018年09月29日 | 経済・金融気象分野
 今年は色々な意味で顕著な気象現象が多発しているように感じます。台風の接近・通過の影響もいつになく大きいように感じています。そしてまた、新たな台風が近づいて来ています。

 このような状況を見ると、脳裏に浮かぶのが「台風リスクに対する保険」です。天候リスクに対する保険(金融派生商品)である「天候デリバティブ」の一つの種類として「台風に備えるデリバティブ」というものがあります。添付した図はその一例です。


 この事例のユーザは、8月~9月に台風の接近・通過の影響を受けやすく、これに伴い来客数の減少や減益のリスクを潜在的に抱えています。そこで、接近する台風の数に応じて補償金を受けとれるプランのデリバティブを契約しました。

 この台風の数の決定の仕方もユニークです。まずは、最寄の県庁所在地を中心とする半径150kmの円内を「通過エリア」と定めています。そして、観測期間内(8月1日~9月30日)の61日間に、この通過エリアを(台風の中心が)通過する台風の数をカウントしていきます。1つでも台風が通過した時点で、補償金が発生します。

 今後は、このような形のリスクヘッジも普及することになるのかも知れません。もちろん、台風の接近・通過の確率(頻度)が高まると、掛け金(プレミアム)も上がります。それだけの掛け金をかけてでも、リスクヘッジのために契約(利用)すべきなのかどうかが思案の為所と思います。



 そもそも、天候デリバティブは「金融派生商品(デリバティブ)」の一種です。つまり、天候の変化(気象要素の変動)から派生する形で価値が変動する金融商品(デリバティブ商品)と言うことです。これを「保険」のような形で利用することが出来るのです。従って、一般的な「損害保険」とは似て非なるものです。

 ここで、気象要素(気象指標:インデックス)の変動やそこから派生する金融商品の価値の変動が確率的に起こるものと仮定して数学的に評価するのが金融工学の考え方です。
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時速の目安のイメージ

2018年09月28日 | 気象情報の現場から
 気象庁が発表する台風の進路予想では、台風の進むスピードを表すのに「時速(km/h)」が用いられます。この時速の目安を具体的に表してみました。


 台風が日本の南をゆっくりと北上する段階では、せいぜい「自転車並み」の速度となる場合が多いですが、やがて偏西風に乗ると「自動車並みの速度」に加速して北上します。
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現時点では、人工知能は「道具」

2018年09月15日 | オピニオン・コメント
NHKスペシャル(2018年09月15日)
人工知能 天使か悪魔か 2018 未来がわかる その時あなたは…
http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20180915

 テレビをつけたら、たまたま放送していたので、そのまま見てました。人工知能が「なんだか得体の知れない存在」のように扱われていますが、要は「ビッグデータをそのように活用するか」の問題のようにも思えました。

 さて、「xを入力すると、yが出力される」という数量の関係を「y=f(x)」と表記するとき、入力と出力の橋渡しをする関係f(x)のことを「xの関数」と言います。人工知能は、多数のx(入力)と多数のy(出力)の関係を取り持つ関数のような存在です。単なる関数と異なるのは、「学習」を通して、自らを修正を図ることができる点でしょう。

 そもそもの本質は、膨大なデータを扱う「多変量解析」です。膨大なデータの中から規則性やパターンを見出し、それを定量的に関数化することができるのが大きな特徴です。イメージとしては、入力変数と出力変数の組合せ(x,y)のサンプルをたくさん用意して、それらの関係を最も上手く表現する関係「y=f(x)」を探し当てるものです。人工知能の場合は、この関係f(x)がとても複雑な形になっているものと考えると良いでしょう。

 また、人工知能が「なんだか得体の知れない存在」のように扱われるのは、この関係f(x)が良くわからないことも一つの要因でしょう。なぜ、そのような判断になるのか?それは、「入力されたパラメータを機械的に計算したらそうなった」と言うだけの話です。

 番組では、様々な人工知能の例が紹介されていましたが、視聴した限り、「何を入力変数(前提条件)として、何を出力変数(予測対象)とするのか」、その「パラメータの選定」を行っているのは人間です。また、「教師データ(学習すべきデータ)」を用意しているのも人間です。さらに、ニューラルネットワークの場合は、入力・出力共に0と1の「デジタル信号」の組合せです(私は0~1の間の実数の「アナログ信号」のように使っています)。

 多種多様な入力・出力の情報を人工知能(数値モデル)で扱えるような「数値データ」の形にどうやって変換するのか、その「変換方式(インターフェース?)」を開発するのも人間です。

 少なくとも現時点では、人工知能は「天使」でもなければ「悪魔」でもなく、新しい「道具」であると言うのが率直な感想です。大切なのは、この道具を使って「何を実現したいのか?」だと思います。
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夏の暑さとキャベツの卸売価格

2018年08月18日 | 経済・金融気象分野
 この夏の猛暑の影響で、野菜の価格が高騰しているようです。そこで、夏の気象条件と夏秋キャベツの価格の傾向について調べてみました。今回、キャベツの入荷数量と単価については、1984~2017年における東京都中央卸売市場入荷分の月別の集計値を使用しました。

 まずは、東京都中央卸売市場に入荷されるキャベツについて、産地別の比率を月別で表してみます。


 この表からは、季節ごとの主な産地が判ります。11~3月(冬キャベツ)は愛知県・千葉県・神奈川県、4~6月(春キャベツ)は千葉県・神奈川県、そして7~10月(夏秋キャベツ)は群馬県・北海道・岩手県が各々主な生産地となっています。

 続いて、キャベツの入荷数量と単価の平均的な月次変動をグラフに表してみます。これは、東京都中央卸売市場におけるキャベツの入荷数量と単価の平均的な動きを表したものです。1984~2017年の各月毎の平均値を求めてグラフ化しました。


 冬(1~4月)は単価が100円/kgと高めで推移しますが、その他の時期は概ね70~90円/kgで推移しています。また、入荷数量は春(3~5月)に18~19千tと一時的に増加しますが、その他の季節は14~16千tで緩やかに変動するようです。但し、これは平均的な動きです。

 もう一つ注目したいのは、数量の極大値が4月なのに対して、単価の極小値は6月に現れていることです。需給均衡の観点からみると、供給(数量)と価格は反比例の関係にある筈です。つまり、4月の数量増加の影響が、6月の価格下落につながっていると見ることができます。数量の増減の変動が2か月後の単価の変動に反映されると考えて良いものか、判断に迷います。

 続いて、夏秋キャベツの生産地の気候について検討しましょう。夏秋キャベツの主な生産地として群馬県に注目します。8~9月のキャベツの入荷量では75~76%のシェアを誇っています。特に嬬恋村がキャベツの主な生産地として有名です。

 さて、キャベツは冷涼な気候を好む一方、耐寒性にも優れています。このため、露地栽培の生育適温は15~20℃と言われています。嬬恋村の気象の変化は田代アメダスで観測されています。月別の平均気温(平年値)をグラフに表してみます。


 平均気温を見ると、6~9月がこの生育気温の範囲内となっています。標高も1230mと高いので、気温は余り上がらず、夏秋キャベツの栽培に適していると考えられます。


 気温に続いて降水量も見てみましょう。太平洋側の地域という事もあり、冬の降水量が少なく、夏から秋にかけての降水量が多い傾向が表れています。

 ここからは、7月の気象条件と8~9月の(卸売)単価の傾向を検討します。

 ここでは、気象条件を「気温と降水量の組合せ」として考えます。さらに、気温を「低温・平常・高温」、降水量を「少雨・平常・多雨」と各々3つのカテゴリーに分類し、3×3の計9種類のパターンに分けて考えます。

 その後、過去34年分のデータを基に、上記9種類のパターンに該当する年の8月または9月の単価の「平均値・最安値・最高値」を算出して、マトリクスの形に表します。

 なお、田代の7月の平年値は「平均気温:18.6℃、降水量:208.7mm」、また今年(2018年)7月の観測値は「平均気温:21.1℃、降水量:221.5mm」でした。


 7月の気温・降水量共に平年並み(平常)であれば、8月の卸売価格(単価・1kg当たり)も43~90円の範囲で変動・平均64円の水準にあると言えます。

 しかし、今年(2018年)は降水量は「平常」の範囲内となる一方、猛暑のため気温は「高温」の範囲内にあります。従って、1kg当たり60~100円の範囲で変動・平均75円の水準と、(平常時に比べて)2割ほど値上がりしやすい傾向にあります。


 同様に9月の単価の傾向も見てみましょう。

 7月の気温・降水量共に平年並み(平常)であれば、9月の卸売価格(単価・1kg当たり)も40~91円の範囲で変動・平均64円の水準にあると言えます。

 しかし、今年(2018年)は降水量は「平常」、気温は「高温」に該当するため、1kg当たり43~95円の範囲で変動・平均77円の水準と、(平常時に比べて)2割ほど値上がりしやすい傾向にあります。
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7月の真夏日・猛暑日の年次変化

2018年08月01日 | 気象情報の現場から
 7月の「真夏日」の日数を年別に示したグラフです。また、この中で「猛暑日」となった日数を「赤色」で示しています。

 今年(2018年)は、近年の中でも真夏日の日数が突出していますが、同じ位の日数だった年は過去にもありました(例えば、2001年や1978年)。ただ、この42年間を見ても真夏日の日数が多い年であることは言うまでもありません。

 また、1990年代後半以降における猛暑日の発生頻度が増しています。長岡の真夏日(黄+赤)は26日、その中で猛暑日(赤)は6日に達していました。長岡では真夏日・猛暑日共に、この42年間の中で最も多い年となりました。





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