計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

速度ポテンシャルΦ と 流れ関数(流線関数)Ψ

2024年08月12日 | お天気のあれこれ
 大気の流れを表す指標には「速度ポテンシャルΦ」と「流れ関数(流線関数)Ψ」があります。

 大気は速度ポテンシャルΦの低い方から高い方に流れ、その極大・極小は収束・発散の中心を表します。また、流れの速度ベクトルの向きは、速度ポテンシャルの等値線(Φ=一定)に対して直角です。簡単な場を考えてみましょう。


 一様な西風と南風の2つの場合を考えてみます。速度ポテンシャルΦは、東西風(u成分)の場合は東西方向(x軸方向)に勾配を持つ一方、南北風(v成分)の場合は南北方向(y軸方向)に勾配を持ちます。

 西風の場合は東西位置x、x+δxにおける速度ポテンシャルΦ(x)、Φ(x+δx)と風のu成分の関係を差分で表現し、u>0(西風)となる条件を求めます。この結果「Φ(x+δx)>Φ(x)」となり、「(風下のΦ)>(風上のΦ)」となります。

 南風の場合は南北位置y、y+δyにおける速度ポテンシャルΦ(y)、Φ(y+δy)と風のv成分の関係を差分で表現し、v>0(南風)となる条件を求めます。この結果「Φ(y+δy)>Φ(y)」となり、「(風下のΦ)>(風上のΦ)」となります。


 こちらの図では、速度ポテンシャルΦが同心円状に分布する場を考え、その中心がΦの極大・極小になる場合を考えてみましょう。速度ポテンシャルΦの値が低い方から高い方に風は流れるので、中心が極小の場合は、中心から周囲に向かって風が流れます(発散)。一方、中心が極大の場合は、周囲から中心に向かって風が流れます(収束)


 続いて、大気は流れ関数(流線関数)Ψの高い方を右に見るように流れ、その極大・極小は高気圧性・低気圧性循環の中心を表します。また、流れの速度ベクトルの向きは、流れ関数(流線関数)の等値線(Ψ=一定,流線)に沿った(接線)の向きとなります。簡単な場を考えてみましょう。


 一様な西風と南風の2つの場合を考えてみます。流れ関数(流線関数)Ψは、東西風(u成分)の場合は南北方向(y軸方向)に勾配を持つ一方、南北風(v成分)の場合は東西方向(x軸方向)に勾配を持ちます。

 西風の場合は南北位置y、y+δyにおける流れ関数(流線関数)Ψ(y)、Ψ(y+δy)と風のu成分の関係を差分で表現し、u>0(西風)となる条件を求めます。この結果「Ψ(y)>Ψ(y+δy)」となり、「Ψが高い方を右手に見るように」流れを生じます。

 南風の場合は東西位置x、x+δxにおける流れ関数(流線関数)Ψ(x)、Ψ(x+δx)と風のv成分の関係を差分で表現し、v>0(南風)となる条件を求めます。この結果「Ψ(x+δx)>Ψ(x)」となり、「Ψが高い方を右手に見るように」流れを生じます。


 こちらの図では、流れ関数(流線関数)Ψが同心円状に分布する場を考え、その中心がΨの極大・極小になる場合を考えてみましょう。流れ関数(流線関数)Ψの値が高い方を右に見るように風は流れるので、中心が極小の場合は、反時計回りに風が流れます(低気圧性循環)。一方、中心が極大の場合は、時計回りに風が流れます(高気圧性循環)。

 最後にもう一点、速度ポテンシャルの等値線と流れ関数(流線関数)の等値線は直交します。
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モンスーントラフ と モンスーンジャイア

2024年08月07日 | お天気のあれこれ
 この記事を書いている2024年08月07日の時点で、日本の南海上には2つの熱帯低気圧が確認されています。梅雨が明けて、本格的な夏を迎えました。これから気になるのが、熱帯低気圧や台風です。

 熱帯低気圧や台風の発生するメカニズムは多様ですが、日本の南側の海上に見られる「モンスーントラフ」や「モンスーンジャイア」の動向も重要なカギとなります。

 日本の南側の海上では、まず南西から季節風(モンスーン)が流れ込みます。一方、太平洋高気圧の縁辺を回るように貿易風(東風)も流れ込むため、2つの流れが収束します。そこで形成される低圧部のことを「モンスーントラフ」と言います。この海域では熱帯低気圧や台風が発生しやすいのが特徴です。

 このモンスーントラフにおける低気圧性循環が成長することで、閉じた等圧線で囲まれた同心円状の低圧部(※)を形成することがあります。これを「モンスーンジャイア」または「モンスーン渦」と言います。この閉じた等圧線の直径は約2500kmにも及びます。また、モンスーンジャイアに伴う雲は、渦の中心から離れた東縁部~南縁部に形成されます。


 また、モンスーンジャイアと似た現象に「モンスーン低気圧」があります。こちらも閉じた等圧線で囲まれた同心円状の低圧部(※)となりますが、その直径は約1000km程度です。また、中心付近に対流活動を持たず、全体としてドーナツ状の雲分布を持つのが特徴です。

 いわゆる「台風」は中心付近で対流雲が組織化されるのに対し、「モンスーンジャイア」や「モンスーン渦」は中心ではなく周辺部で対流活動が活発になる傾向があります。

(※)実際の天気図上は、必ずしも綺麗に「閉じた同心円状」になるとは限りません。
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2024年07月25日の庄内・最上地方の大雨

2024年07月26日 | 山形県の局地気象
 2024年7月25日は山形県内で大雨に見舞われました。さらには、一時的に大雨特別警報が発表されるに至りました。まずは、被害に遭われた皆様に、お見舞いを申し上げます。

 この間、梅雨前線が日本海北部を通って北日本へ延びており、南西から暖かく湿った空気も流れ込んでいました。大気の状態も不安定になり、線状降水帯が発生したようです。持続的な大雨に見舞われた地域は「梅雨前線の南側(佐渡島2~3個分)」に位置しており、ちょうど対流が活発な部分に重なったものと推察されます。

 2024年7月25日06時~翌26日06時の山形県の「24時間降水量」の分布を見てみましょう。比較のため「平年の7月の降水量(1か月分)に対する比率(%)」を併記しています。


 左側の図は「24時間降水量」です。庄内~最上地方を中心に顕著な降水が観測されました。また、右側の図の「平年の7月の降水量に対する比率」が100%を超える地域も見られました。すなわち、この24時間で1か月分に相当~それ以上の大雨に見舞われたということです。


 続いて、2024年7月25日06時~18時の12時間について「3時間毎の降水量の推移」を見てみましょう。初めは庄内地方を中心に顕著な降水が観測されました。その後、最上地方まで広がり、やがて村山地方や置賜地方の一部に達したようです。




 2022年8月3日にも置賜地方を中心とする大雨(記事1,記事2)に見舞われており、その影響が心配されます。
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梅雨明けの時期

2024年07月19日 | 気象情報の現場から
 6月9日の「梅雨入りの時期」と同様に、梅雨明けの時期も検討してみます。

 さて、この記事を書く時点(2024年07月19日)で、沖縄・奄美・九州南部・四国・東海・関東甲信の梅雨明けが発表されました。本格的な夏が近づいているのを感じます。

 まずは、1951-2023年の梅雨明けの時期を地方毎に「箱ひげ図」で比較しました。沖縄・奄美では6月下旬~7月初旬、その他の地域では7月半ば~下旬が多いようです。

 前回も述べた通り、梅雨入り・梅雨明けは「人間の主観的な判断」によるものであり、明確な基準があるわけではありません。その意味では「概ねこの日辺りの時期」という目安です。「平年値」も公表されていますが、変動の幅が広いことが見て取れます。

 平年と比べて「○日早い」「○日遅い」とも言われますが、この「○日」が概ね±5日程度であれば、「通常の変化の範囲内」と言えるでしょう。

 その事を踏まえつつ、「梅雨明けが年々早まる、または遅くなっているのかどうか」が気になる所です。そこで、梅雨明け日の年次変化の傾向(経年トレンド)をを調べてみました。ここでは、北陸地方と東北地方南部を例に取り上げてみます。

 まず、北陸地方の場合は回帰直線(赤線)が右上がりになっています。しかし、相関係数は0.1387と小さいため、年(x)と入梅時期(y)の間に相関があるとは言えません。


 続いて、東北地方南部の場合も回帰直線(赤線)が右上がりになっています。こちらも相関係数は0.1793と小さいため、年(x)と入梅時期(y)の間に相関があるとは言えません。

 少なくとも、梅雨明けの時期が年々「早まる」または「遅れる」と言った傾向は見られないと言えるでしょう。引き続き、週間予報の推移を見守りましょう。
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梅雨末期の降水

2024年07月09日 | 山形県の局地気象
 前回の記事では、今年(2024年)6月の山形県内の降水量が平年よりも低かったことを紹介しました。

 暦は7月に入り、梅雨前線も日本海まで北上してきました。この影響で、山形県でも昨日(8日)と今日(9日)と2日連続でまとまった降水が見られました。


 左は昨日(8日)の6時~12時の6時間降水量の分布です。梅雨前線が日本海から東北地方に延びており、この前線に向かって暖かく湿った空気の流入が顕著となりました。このため、前線付近の対流が活発となり、山形県内でも強い雨となりました。これで、水不足は緩和されるのでしょうか。

 右は本日(9日)の6時~12時の山形県内の6時間降水量の分布です。新潟県村上市から山形県の庄内・最上地方にかけて、まとまった雨が観測されました。新潟県村上市付近では朝日連峰、山形県最上町付近では奥羽山脈に沿うような形で降水量の極大域が形成されています。土砂災害や河川の増水などにも注意が必要です。


 続いて、本日(9日)の気象場のポイントを見てみましょう。梅雨前線が日本海にあって、東西に長く延びています。また、南西からの暖かく湿った空気(高相当温位)が太平洋高気圧の縁辺に沿って北上し、梅雨前線に持続的に流入しました。上空の気圧の谷の影響も加わり、前線付近では対流が活発となりました。

 梅雨末期は、急な強い雨や大雨のおそれもあるので、最新情報の確認を心掛けましょう。まずは、お手持ちのスマホに「お天気アプリ」をインストール、またPCを使用される方は「お天気サイト」を幾つかブックマークに入れておきましょう。
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2024年6月の降水量

2024年07月05日 | 気象情報の現場から
 山形県と新潟県の6月の積算降水量について、平年値と今年(2024年)で比較しました。

 山形県の一部(北部の酒田・新庄)では平年よりも多い傾向が見られました。一方、その他の地点では、梅雨入りが平年より遅れたこともあり「少雨」傾向が顕著となりました。今後の水不足などの影響が気になる所です。


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梅雨入りの時期

2024年06月09日 | 気象情報の現場から
 この記事を書く時点(2024年06月09日)で、沖縄・奄美・九州南部・四国の梅雨入りが発表されました。梅雨の季節が近づいているのを感じます。

 1951-2023年の梅雨入りの時期を地方毎に「箱ひげ図」で比較しました。沖縄・奄美では4月下旬~5月半ば、その他の地域では5月半ば~6月半ばが多いようです。また、北陸地方の平年値は6月11日頃、東北南部は12日頃、東北北部は15日頃ですが、今年はどうなるのでしょうか。

 そもそも、梅雨入り・梅雨明けは「人間の主観的な判断」によるものであり、明確な基準があるわけではないのです。従って、「この日」が梅雨入り・梅雨明けした、と言うよりも「だいたいこの辺りの時期」という目安です。

 そのような事情を踏まえつつ、「梅雨入りが年々遅くなっているのかどうか」が気になる所です。そこで、梅雨入り日の年次変化の傾向(経年トレンド)をを調べてみました。ここでは、北陸地方と東北地方南部を例に取り上げてみます。

 まず、北陸地方の場合は回帰直線(赤線)が右上がりになっています。しかし、相関係数は0.1733と小さいため、年(x)と入梅時期(y)の間に相関があるとは言えません。


 つづいて、東北地方南部の場合は回帰直線(赤線)がほぼ横ばい(微妙に右上がり?)になっています。こちらも相関係数は0.0587と小さいため、年(x)と入梅時期(y)の間に相関があるとは言えません。


 従って、安易に「梅雨入りが年々遅くなっている」とは「言えない」ようですね。引き続き、週間予報の推移を見守りましょう。
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ニューロ・モデルの多層化実験

2024年04月24日 | 計算・局地気象分野
 昨年の11月半ばから今年の3月末までの4か月半に渡って「降雪予報」の期間でした。4月に入って新年度を迎えたのと同時に、このシーズンが終わりました。そこで、この1か月弱は「ニューロ・モデルの多層化」について研究を進めておりました。

 ニューロ・モデルの基礎である「ニューラルネットワーク」は、大きく分けて「入力層」「中間層(隠れ層)」「出力層」の3つから構成されます。入力層と出力層は1層ずつ設置されますが、中間層は1層以上を設置します。最も簡単な構造は、中間層を1層とした「3層構造」です。そして、中間層を多数設置したものを「ディープニューラルネットワーク」と言います。



 そして、多層化されたニューロ・モデルの学習プロセスの一例です。この実験は、入力値とそれに対する正しい出力値(正解=教師データ)の組み合わせから成る「訓練データ」を反復学習させるものです。

 入力値を与えると、それに対する出力値を計算します。その出力値と教師データ(正解)の誤差を評価して、モデル内のパラメータを出力側から入力側に向かって段階的に修正(調整)して行きます。このサイクルを何度も繰り返すことで、モデル全体として徐々に最適化が図られるものです。



 実験の詳細は割愛しますが、横軸が反復回数、縦軸が予測誤差です。初めに誤差が低減した後、暫く横ばいの状態が続いています。その後、再び誤差が大きく低減する様子が描かれています。誤差が低減するということは、それだけ学習が進んでいることになります。

 さて、私たち人間も、何らかの知識や技を習得するために、学習や練習を重ねます。しかし、その過程には多くの時間と労力を要し、途中で気持ちが萎えることもあるでしょう。どんなことでも、初めから上手くできる人はいないのです。

 そして、それは人工知能にも同じことが言えます。その割には何かと「人工知能は凄い」と持て囃されます。それでは、人工知能は何が凄いのでしょうか。おそらく「膨大な数の反復練習を、物凄い速さでこなしてしまう」ことにある、と私は考えています。

 周知の通り、機械は疲れや飽きを知りません。しかも、計算処理のスピードは人間のそれを遥かに凌駕しています。従って、「膨大な数の反復練習を、物凄い速さでこなしてしまう」ことが可能なのです。しかし、「初めから上手くできるわけではない」と言う点では人間と同じです。人間と同じようなプロセスと、人間よりも速く・大量にこなすことができるのです。

 また、先のグラフからもわかるように、最初に誤差が低減した後、暫く横ばいの状態が続いています。それはまさに「いくら練習を重ねても、その効果が結果に現れて来ない」状態なのです。そして、その後の「ある段階」で一気に誤差が急落します。これはまさに「それまでの練習の効果が一気に現れた瞬間」と言っても良いでしょう。

 問題は「その効果が現れて来ない」状態が何時まで続くのか、と言うことです。これは正直、わかりません。そして、上記の事は「人間の学習プロセス」についても言える事ではないでしょうか。

 「いくら頑張っても、一向に結果につながらない」と言う経験は、多くの皆さんが共有していることでしょう。試験にせよ、仕事にせよ、「タイムリミット」が存在する以上、「所定の期間内に一定の効果を上げる」ことが求められます。そして、それができなければネガティブに評価されるのが、私たちの社会です。その意味では、「頑張っても芽が出ない」ものを「向いていない」として「損切り」するのも、場合によっては致し方ないでしょう。

 しかしながら、「頑張った効果」それ自体は、しっかりと自分の中に蓄積されているということです。結果として目に見えるまでには至らなかったとしても、もしかしたら「もう少し頑張れば、一気に覚醒できた」のかも知れません。とは言え、それは誰にも判りません。

 私が地域気象の研究を始めてから「一定の形」になるまでを考えても、ざっと10~20年は掛かっています。この間、ニューロ・モデルの研究も2~3回?途中で投げ出しています。それでも、過去に頑張った経験や感覚と言うものは、案外にも残っているものです。その積み重ねで漸くここまで到達できたのです。

 努力の効果が必ずしも「結果」につながるとは限りません。しかし、自分の中には確実に「蓄積」されているのです。
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気温の日較差の月別変化

2024年03月25日 | 気象情報の現場から
 新潟県内4地点(相川・新潟・長岡・高田)における「気温の日較差」を月別に「箱ひげ図」の形で集計してみました。

 ここで、気温の日較差とは「最高気温(Tx)と最低気温(Tn)の差(Tx-Tn)」の事です。この値が大きいほど、一日の中での気温差が大きいということです。今回は「平年」に相当する「1991~2020年」の観測値を使用しました。

 相川・新潟・長岡・高田の順にグラフを掲載します。ここで、箱ひげ図の他に記載されている「〇」は外れ値、「×」は平均値を表しています。グラフから日較差の変化傾向を読み取ると、冬と夏は極小となる一方、春と秋は極大となることが判ります。特に春(4~5月)の日較差が顕著です。






 これからの時期は特に体調管理にも注意したい所ですね。
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サクラサク・サクラチル

2024年03月10日 | オピニオン・コメント
 春の足音を感じるこの時期は、受験や合格発表の時期とも重なります。

 試験なのでもちろん「咲く桜」もあれば、「散る桜」もあります。それでも、日々のひたむきな積み重ねは、決して無駄にはなりません。ただ違いがあるとすれば、それは「見える花」になったのか、それとも「見えない糧」として蓄えられたのか、ただそれだけです。

 しかし、蓄積された「糧」はやがて、大輪の花を咲かせる大きな「力」となります。花を咲かせることはもちろん大切ですが、大地にしっかりと根を張ることもまた大切です。目の前の目標に向かって、全力で取り組むことができたかどうか、それこそが「真の価値」なのです。

 受験勉強は確かに大変だと思います。しかし、その努力はただ単に「合格」するのみならず、その後の「高度な学びのための基礎学力」および「自ら学ぶ習慣」を身に着けるプロセスでもあります。そしてこれらは今後の人生の財産となります。これらの基礎・土台を自らの中に構築することにこそ、受験勉強の意義があるとさえ感じます。

 そして、学べば学ぶほど、知識は増し、また視野も広がります。その一方で、自分の知識が未だ微々たるものに過ぎないと言う事実を、あらためて突き付けられます。どこまで学びを進めても「もう十分だ」と思えることは無く、むしろ「まだ全然足りない」と焦燥感に駆られるのです。古代ギリシアの哲学者・ソクラテスが唱えた「無知の知」の境地と言えるでしょう。
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新潟県内の花粉飛散の傾向分析

2024年02月18日 | 気象情報の現場から
 新潟県内3カ所(新潟・長岡・上越)の花粉飛散傾向を調べました。気象要素は「気象庁の観測値」、花粉の飛散量は「環境省花粉観測システム(はなこさん)」を用いています。

 まずは、2009~2020年の年別(各年の2月~5月)の花粉飛散量を集計しました。棒グラフの比較から、シーズンを通しての花粉飛散量は年によって大きく変動することが判ります。また、箱ひげ図の比較からは、新潟よりも長岡・高田の方が多く飛散しています。



 続いて、旬別の平均的な傾向を集計しました。棒グラフの推移から、旬別平均では「3月上旬~4月中旬」が大きな山となるようです。累積比率のグラフを見ると、この時期の大きな上昇カーブが現れているのが良く判ります。



 続いて、新潟県内の花粉飛散量と前年の気象要素の関係について調べてみました。今回は「山間部に多く分布するスギの花粉が平野部に拡散される」過程も考慮し、山間部での観測結果も分析対象に加えました。この結果、前年8月下旬の平均気温および9月下旬の降水量と相関が見られました。

(1)新潟の花粉と新潟・津川の前年気象の関係


(2)長岡の花粉と長岡・守門の前年気象の関係


(3)高田の花粉と高田・関山の前年気象の関係


 ちなみに、気温と降水量を同時に考慮する場合は「重回帰分析」を行うことになります。しかしながら、花粉データについて環境省花粉観測システム(はなこさん)の情報配信サービスが既に終了しております(現在公開されているのは「過去のデータ」のみ)。従って、改めて予測を試みたとしても、その予測結果の検証が出来ません。ここが、ちょっと悩みどころですね。
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2024年02月05日の関東の雪

2024年02月06日 | 気象情報の現場から
 2月5日は南岸低気圧の東進に伴い、関東地方でも大雪となりました。興味深い事例なので、メモとして記事を上げておきます。

 以前、2018年の1月に「南岸低気圧に伴う関東地方の降雪を考えてみる」と言う記事を書きました。まずはその内容を簡単に振り返ってみましょう。

 南岸低気圧の接近時、関東平野に流れ込む南東~北東の風が、北から流入する寒気を堰き止めることがあります。この結果、関東平野では寒気が滞留します。

 また、低気圧に伴う雲から滞留寒気に向かって雨粒が降り注ぎ、これら雨粒が蒸発すると、下層空気の冷却が進みます。これは雨粒の相変化に伴い、周囲の空気から潜熱が奪われるためです。こうして「地上から上空まで」十分冷えた状態が形成されます。

 従って雪から雨に融けにくくなるので、その分「雪の状態を維持したまま」地上に到達しやすくなります。


 さらに、低気圧の後面では融解層も下がるので、上空の降水が雪のまま地上に到達することがあります。この場合は「雪から雨に融けるよりも、地上に到達する方が早くなる」のです。



 さて、件の2月5日は前線を伴った低気圧が日本の南岸を東に進みました。さらに上空の寒気も南下しており、東日本の太平洋側の地域でも、北東の流れに伴う寒気の流入が見られました。



 北東から関東山地に流れ込んだ寒気は、南岸低気圧に伴う南寄りの風によって堰き止める形となりました(この点は冒頭の構図とは異なります)。さらに、上空寒気の南下に伴い融解層も下がったことで、上空の降水が雪のまま地上に到達しやすくなりました。



 2月5日の東京における時系列変化です。正午を過ぎて降水が始まり、気温も「釣瓶落とし」の如く降下しました。上空の寒気の南下に加えて、滞留寒気に降った雨粒が蒸発した効果も合わさって、下層空気の冷却が進んだようです。この結果、地上から上空まで十分冷えた状態が形成されたことで、16時以降には降雪が始まりました。

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続・2024年1月は少雪傾向

2024年02月02日 | 山形県の局地気象
 前回の記事「2024年1月は少雪傾向」の続きです。

 今度は山形県内の5地点における12月と1月の降雪量に関して、平年値(1991~2020年)と今季の比較を行いました。この結果、いずれの地点も今季は平年値を下回っていました。特に、朝日連峰にある肘折では「平年値の5~6割程度」と顕著な少雪となっています。水不足など、今後の影響が気になる所です。



 また、上記5地点の平年(1991~2020年)の月降雪量の変動は次の箱ひげ図のようになります。このグラフと比べると、今季は平年の「第一四分位点」以下となる所が多く、下方の「外れ値」の水準となる所さえありました(平年の変動範囲の25パーセンタイル以下)。



 上空にも目を向けてみましょう。平年(1991~2020年)と今季(2024年)1月の850と500hPa面における気温分布(秋田)を「箱ひげ図」の形で比較しました。今季は、一時的な寒気南下もありましたが、全体的に「上方シフト」の傾向でした。


 そこで念のため、1月の850hPa面気温の平均値について統計的仮説検定(z検定)を試みた結果、有意差(今季>平年)が見られました。この上方シフトは「偶然ではなく必然」と言うことです。


 やはり「1月は暖冬・少雪だった」と言うことですね。
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2024年1月は少雪傾向

2024年01月31日 | 気象情報の現場から
 この冬は暖冬・少雪の傾向にあるため「雪のイベント」にも開催規模の縮小など、影響が出ているようです。

 以前(2019年)、「開催直前の気温上昇のリスク」を想定した「天候デリバティブ」を検討したことがあります(その論文)。これは、山形県米沢市の「上杉雪灯籠まつり」を念頭に、「1か月アンサンブル予報」を応用して天候リスクの評価を試みたものです。


 しかし、現実問題としては、そもそもの原材料となる雪が少ない「少雪のリスク」をヘッジするケースも検討した方が良さそうですね。対応策としては様々なアイデアが思い浮かびます。もし、「天候デリバティブ」のプランを想定すると、期待された利益や効果が得られない場合に、そのダメージを最小限に抑えるというアプローチが考えられます。

 また、天候デリバティブで得られた補償金を元手に、降雪装置などを稼働する方向もあるかもしれません。その場合は諸々のコストと比較して検討する必要があると思われます。


 さて、新潟県内にも目を向けてみます。ここでは上越・妙高・十日町における12月と1月の降雪量に関して、平年値と今季の比較を行いました。棒グラフからも明らかなように、12月の高田を除くと、今季は平年値を下回る傾向が現れています。



 ここで、平年値とは過去30年間(2024年の場合は1991~2020年が対象)の平均値です。そこで、この30年分の「平均値」ではなく「変動の範囲」で比較してみましょう。そこで、平年(1991~2020年)の12月と1月の月降雪量の変動を箱ひげ図に表してみました。


 この箱ひげ図において、この冬の12月、1月の値がどこに来るのかを見てみると・・・12月の高田・安塚を除いては、今季は第一四分位点以下の水準となりました。やはり、この1月は「雪の少ない冬」と言えそうです。
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2023年12月の傾向(山形県)

2024年01月05日 | 山形県の局地気象
 先日の記事「2023年12月の傾向(新潟県)」と同様に、山形県における「2023年12月の平均気温と降雪量の推移」を25日まで調べてみました。

 概ね5日~17日頃までは平年より高温傾向で推移しました。その後、平年より低温傾向に転じると顕著な降雪となりました。4地点のグラフからは、17日頃を境に傾向が大きく変わっているのが見て取れます。





 
 過去の記事「2023年12月の傾向と背景」でも述べたように、12月前半は偏西風のリッジ位相が卓越したものの、後半はトラフ位相が進んできたことで寒気の南下が顕著に現れました。

 そこで、平年(1991~2020年)と昨年(2023年)12月の高層850hPa面における気温分布(秋田)を「箱ひげ図」の形で比較しました。箱ひげ図は4つ並んでいます。左から順に、平年の09時、21時、昨年の09時、21時です。この結果、昨年12月の気温は09時、21時共に「平年よりも高めの傾向」が見られた一方、その範囲は「平年の変動の範囲内」に収まっていました。



 続いて、850hPa面気温の平均値について統計学的検定を試みました。まずは、平年と昨年の各々について、09時と21時を一まとめにして「2標本(2群)検定」に持ち込みます。ここで、各標本(群)ともに標本の大きさは十分に大きいことから「大標本」と見做すことができます。

 従って、標準偏差σを標本標準偏差s(不偏分散の正の平方根)で代用した「z検定」を行いました。この結果、有意差(2023年>平年)が見られました。

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