計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

確率微分方程式の数値解析

2018年05月21日 | 経済・金融気象分野

 株価などの危険資産の価格変動は、次のような確率微分方程式で記述されます。


 ここで、μはリターン、σはボラティリティ、z(t)は不規則に変動する成分(ノイズ)です。ノイズはブラウン運動に従うもの仮定し、その確率分布は正規分布として扱われます。

 今回はこの確率微分方程式の数値解析を試みました。数値積分はエクスプリシット法&モンテカルロ法を採用し、ノイズは乱数で与えることを検討しました。

 一般的に乱数を発生させる場合、プログラミング言語で用意される関数を用いると一様分布に従う乱数が生成されます。しかし、今回のノイズは平均0、標準偏差σ(√Δt)の正規分布となるため、一様乱数ではありません。そこで、任意の確率分布に従う乱数を生成させる手法として、「フォン・ノイマンの棄却法」を用いました。

 計算結果の一例を掲載します。



【 設定条件 】
 資産価格の初期値:S0 = 1000[円]
 リターン    :μ = 0.1[%/年]
 ボラティリティ :σ = 20[%]
 時間間隔    :Δt = 1/365[年]
 積分期間    :1[年]

 ※確率過程なので、同じ条件でも計算する度に結果が変わります。

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杜の都で金融工学を語る

2018年05月13日 | CAMJ参加記録
 この週末は(一社)日本気象予報士会(CAMJ)・東北支部の例会に参加してきました。その席上、「降水日数を指標とする天候デリバティブ - Black-Scholesモデルの適用 -」と題して、話題提供を行いました。

 今回のテーマは「天候リスクに保険を掛ける」というもので、「気象」というよりは「金融工学」の理論だったので、「アウェー感」が半端なかったのですが、これも予め覚悟の上でした。結局、話題としては「思いっきり滑った」感がありましたが、たまにはこういう展開があっても良いかも知れません。


 さて、気象の変化は生活や産業・ビジネスなど様々な分野に色々な形で関わりを持っています。その中で、「天候リスクを定量的に評価し、ビジネスに役立てる」ために、天候デリバティブの考え方から学べるものは多いのではないか、と感じています。

 一人の気象予報士として「自然現象(気象)に親しみ、そして楽しむ」ことはもちろん大切です。しかし、そこからさらに、どうやって役に立つ「情報ツール」に昇華させて行けるのか、と言った視点も「気象ビジネス」では必要になってきます。要は「役に立たなきゃ金にならん」のです。

 今から14年前の2004年06月26日、まだ若かりし頃には、CAMJ東京支部の例会の話題提供の折にこのようなことを述べました。

 CAMJ東京支部HPの「2004年 東京支部会合 概要」より引用させて頂きます。

───(引用開始)───
<話題提供2>
「数値計算による独自の局地気象モデルへの挑戦 ~計算力学を応用した気象データ解析に関する週末研究~」より

3)気象情報の未来への展望

 今後、気象情報ユーザから求められていくのは、局地レベルのきめ細かい予報ではないだろうか。局地の気象予測の精度を高めた上で、的確な応用ノウハウが構築できたとき、応用気象情報が活きてくるのではないか。

 気象情報が「情報ツール」へと進化していくに当たって、気象予報士は「天気を予想・解説する専門家」から「気象情報を駆使して問題にアプローチする専門家」としての可能性が広がっていると考えている。

 気象予測は精度の向上が必要不可欠であるが、その一方で応用分野に関する諸問題の解決のためには気象の専門知識だけでは不十分である。従って、ターゲットとなる分野の知識に関しても、深い理解を持つことが必要であり、それが個々の気象予報士の「コア・コンピタンス」になっていくのではないか、それを確立し、研究・研鑽を積むことが求められるのではないだろうか。

───(引用終了)───

 あれから14年も経ちますが、この考え方は未だに変わっておりません。

 これまで、地域気象について「熱流体数値モデル」「ニューラルネットワーク」「天候デリバティブ」と多様なテーマに取り組み、その成果をCAMJや気象学会(ポスター発表・論文投稿)、その他(数少ない)講演・講座の形で発表してきました。その一つ一つが私にとっては「アウェーゲーム」です。真向勝負の真剣勝負です。

 というわけで、次のアウェーゲームに向けて、これから調整を始めます。

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