計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

法曹人口の増加に立ちはだかる課題

2006年09月29日 | オピニオン・コメント
 さて、現状の局地予報の精度を把握するために、自分の局地予報と気象庁予報の的中精度をちょっと集計してみました。気象庁予報をそのまま局地予報に適用したとして、的中率ベースでは結構当たっているような感じですね。しかし、スレッドスコアで見てみると・・・なるほど~ぉ・・・と妙に納得。

 自分の予報と気象庁予報を比べた場合、的中率ベースでもそれなりの改善が見られていますが、そもそもの気象庁予報の的中率もそれなりに良いので一見パッとしないんですよね。そこで、スレッドスコアで比較してみると、やはり局地気象を研究している専門家が関与することで局地予報としての適正化が図られる、との結論に達しました。

 これからさらに経験を積み、学習する事でさらなる精度向上を図っていかなければなりません。さて、「天気の予報とはすなわち決断だ」と前回は書きました。そして、その決断の背景にどのようなドラマがあり、苦悩があり、葛藤があり、総観場に対する理解が合っていたとしても、結局は指定された局地で「当たったか外れたか」で評価されます。ですから、ビジネスである以上、いかに「当たる」決断をするか、が重要です・・・って当たり前のことなんですけどね。

 裁判だって「自分に有利な判決や和解条件を得るため」に、要するに「裁判で勝つ」ために法律家の先生に依頼するわけですよね。というわけで、ちょっと気になる記事を見つけました。


司法修習生、107人が「落第」 過去10年間で最多 (朝日新聞) - goo ニュース

 法律家になるための最後の関門にあたる司法研修所の卒業試験で、受験者の7.2%の107人が合格できずに落第。記録が残るここ10年間では最多。従来は司法修習生の数も700名程度だったが、司法試験合格者の増加に伴い1200名程度に増加した影響も。

 法曹への道は険しいですね・・・。これからは法科大学院修了者が受験する新司法試験の実施に伴い司法試験合格者の増加しますのでこういった事態も珍しくはなくなるのかもしれません。ところで、司法修習が卒業できない、と言う事はもう1回「修習やり直し」なんでしょうか?まさか・・・もう1回司法試験からやり直し!ってことはないでしょうけど・・・。

 実は、新司法試験は受験資格が厳しいのです。この試験の受験資格は、(1)法科大学院の修了者もしくは(2)司法試験予備試験の合格者(まだ実施されていない)であり、その資格を取得してから「5年以内」かつ「受験回数3回以内」であるというものです(詳しい事は法務省のページで見て下さい)。

 ですから、例えば法科大学院を修了して5年以上経つ場合や、3回の受験で新司法試験に合格できない場合は、もう一度大学院を修了するか司法試験予備試験から始めなければならないとか!?

 やっぱり司法試験は厳しい・・・。しかし、本当に厳しさは実際に法曹として社会に出てからなのかもしれません。このまま法曹人口、特に弁護士の数が増えていけば弁護士同士(法律事務所間)のサービス競争が激化することでしょう。依頼者にとっては、選択肢が増えると言うメリットがありますが。(これは気象予報事業者にも同じ事が言えるでしょう)

 さて、法曹人口の数の増加は、新しい法律・司法サービスの可能性を広げる事になるかもしれません。従来は「弁護士≒訴訟」のようなイメージがありましたが、様々な分野に精通・特化した「先生」が登場して、それぞれの専門分野に関するそれこそ訴訟までを含めた総合的な法律コンサルタントとしての活躍の方向性も具体化してくることでしょう。

 企業の法務部などに勤務して、企業内の予防法務や契約締結を行うなど・・・。特に企業コンプライアンスが声高に叫ばれているわけですし、法制度も非常に複雑ですからね。

 あと、問題は費用がどうなるか・・・。「裁判は金が掛かる」と言われますが、その多くは弁護費用とも言われております。また賠償金額が安い比較的小さな事件は、弁護士サイドでも割に合わず受任しないこともあるようですし・・・(これも司法書士の訴訟代理業務参入の実現要因か?)裁判に限らずADR(裁判外紛争解決手続)でもやっていけるのかもしれません。

 もしかしたら近い将来、気象関連の訴訟事件を専門に扱う弁護士の先生が現れるかもしれませんね。
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局地予報における決断

2006年09月18日 | 気象情報の現場から
 メールマガジンの文章を推敲していたのですが、折角なのでブログにも掲載しちゃいます。これが世に言うチラリズム精神・・・?

 現在は気象実況監視や局地予報業務がメインとなっている私ですが、それだけに未来を予想する事の「責任」を痛感しております。例えば、局地予報で雨の予報を出す際、大多数のケースにおいては、降水の有無はおおよそ見当がつくのですが・・・微妙な時=複数のシナリオが考えられる(もしくは確信をもってどちらかに割り切れない)というケースに直面することがあります。

 さて、このような時がもっとも厄介なのです。「降水あり」と予報して実際に雨が降らなかった場合は「空振り」、「降水なし」と予報して実際に雨が降ってしまった場合は「見逃し」と言いますが、どっちも「外れ」には変わりありません

 そこで、的中率にこだわるあまり、想定されうる全てのシナリオを予報として発表するという方法が考えられます。しかし、それでは「降るのか降らないのかどっちなんだ!」と言われてしまいます。ある意味、このような批判は的を得ているのかもしれません。というのも、その究極の判断を下す事が、気象予報士の仕事なのですから。複数のシナリオを提示されても、ユーザーには気象に関する判断が出来ません。

 ユーザーが求めているのが「降る」のか「降らない」のかの二者択一である場合、白黒はっきり裁かなければならないのです。例えて言うならば、刑事裁判において被告人が有罪か無罪かを裁く裁判官のようなものです。気象データを分析し、理論的に考察をする段階では、まさに弁論や論証を繰り返す検察官や弁護人の立場です。

 刑事裁判においては「疑わしきは罰せず」という原則があります。それでは予報においてはどうかのでしょうか?こればかりは担当する気象予報士によって、またその時の気象場や数値予報プロダクト、実況データによっても判断が異なります。そして「どちらの事態も起こりうる」という究極のケースにも直面するのです。こうなると、予報者は頭を抱えるのです。

 停滞前線の位置がギリギリの所まで接近しているのに、もう一歩雨雲が届くか届かないか・・・と言った状態のケースなど。

 こうなってくると、「空振り」と「見逃し」のどちらがより被害が小さいかが脳裏をよぎります。最終的には現象の有無に伴う被害・損失を最小限に食い止める事が重要になってくるのです。

 例えば、対策を講じていない状態で雨が降ると100万円の損失が発生する一方、対策を講じたのに雨が降らないのでは10万円のコストの無駄となる場合は、見逃しによる被害は100万円で、空振りによる被害は10万円ですから、降水の有無の可能性がどちらも起こりうる場合は、リスクヘッジの立場から対策を講じるべきだということは容易に想像できます(この話はあくまで架空の話でフィクションだよ~ん)。

 つまり、この条件で雨が降るかどうか微妙な状態だとすると、空振りを覚悟の上で「雨が降る」とせざるおえない局面もあります。降るか降らぬか「どちらかを決断しなければならない」のですから。

 これで1日中晴れるような事があれば、予報は明らかに「外れ」です。しかし、この状況で「降らない」と予報した場合、晴れれば予報は的中して「めでたしめでたし」ですが、仮にも雨が降ろうものなら、その被害は100万円では済みません。それこそ「見逃し」によって、予報に対する信頼を失う事になるのです。

 このような場合、「微妙な状況であること」を参考情報として明記した上で、雨が降る方向で対応することになるでしょう。あくまで、ケース・バイ・ケースなんですけどね。このように微妙な時、広域予報であれば「所によっては雨が降るでしょう」のたった一言で片付けられるのですが・・・。そこが局地予報のシビアな所です。

 微妙だから、絶対の確信が無いから・・・予報者同士ではその理屈が通用します。しかし、ビジネスである以上顧客には通用しません。天気予報が絶対ではない(=外れることはある)事は顧客も知っています。その上で敢えて「決断」を求めているのです。ですから、予報には精度も当然求められますが、明確な決断もまた求められるのです。例えば「雨が降るかどうか」等の気象に関する決断が出来るのは局地予報のスペシャリストである気象予報士であり、顧客が求めているのもそのような「決断」なのかもしれません

 また、予報は確率論でもあるため、現象の出現期待度を、降水確率のような「指数」で表現する事もあります。このような表現についても、その情報を受け取った相手がどのように解釈するのかを含めて考慮しなければなりません。

 ビジネスにおける政治判断は顧客が下します。しかし、その意思決定の情報ツールとなる局地予報は、気象の専門家が決断しなければならない、と言う事です。その責任はとても重く、私も自らの最終決断を顧客に配信する時は、今でも震え上がるような心境なのです。

 こう言っては何ですが「所によっては降る事があるでしょう」「もしかしたら降るかも(降らないかも)しれません」のようなフレーズが使えたら、どんなにか楽だろう・・・と思います。しかし、そんな局地予報に投資価値があるかと問われたら、多分皆さん「ない」と答えるでしょうね。

 なぜなら、そこには「決断」がないのだから・・・。

 よし!この文章メールマガジンで使おう。
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3連休に台風!?

2006年09月14日 | 気象情報の現場から
 台風13号の進路が気になりますね・・・。しかもこの週末+月曜日の3連休を狙って来るとも言われているようですね。ったく、折角の連休なのに・・・ガッカリだよーっ!・・・というわけで、久々に書いています。

 最近は気象監視やら局地予報、その傍らで数値計算を強引に進めている状況です。現在は3交替シフト制による24時間戦えますか体制のため、曜日によって早朝勤務や深夜勤務、通常勤務の日に分かれます。予報や監視が入るのは早朝・深夜勤務の人なので、通常勤務はある意味、休憩日です(休日ではありません)。週末も平日よりは勤務体制も緩いので(詳しくは掛けないけど・・・)、担当時間外は基本的にぶっ倒れています。

 まあ・・・休憩できる所で休憩しないと、それこそ「お前はすでに死んでいる」状態になっちゃいますからね。・・・というわけで3連休は休憩時間(休日じゃなくて)が取れるかな~と期待モードだったのに、台風来そうです~・・・チクショー!!・・・とまあ、一応これでも世間の流行には「Catch up」してるつもりです。

 とにもかくにも、この台風の進路には注視する必要がありそうです!

 さて、地域のタウン情報誌にめでたく掲載されたので、編集局から掲載号が送られてきました。カラー写真2ページに渡っての特集で、一週間のスケジュールやら仕事の七つ道具、業務風景にインタビューなど。

 一週間のスケジュールというのは日~土曜日までの業務内容や休日を紹介するものですが、誌面上は「日~土曜フル出勤」でカッコ書きで「早朝~深夜勤務あり・休みは不規則」しかも、仕事の七つ道具の一つに「リポビタンD」が挙げられていますので(だってホントの話なんだから!)・・・これを見た先輩が一言

 休みはないし、リポビタンDはあるし、24時間戦えますか状態・・・気象予報士を目指している人がこれを見たら「ゲッ!気象予報士ってこんなにキツくてしかも休みなんてぜんぜんないのかよ~~!!」って思うだろうね、きっと。

 まあ・・・1日まるまる業務から完全に離れていられる日なんて無いわけですから、弊社では至って真実なのです(ちょっと大袈裟には書いてありますが・・・もとい、書かせたんですけどね)。

 そんなわけで休息日となる通常勤務時の私は、目がうつろ。とにかく眠いのです。私の場合は一週間のサイクルが深夜勤務→通常勤務→早朝勤務・・・なので、前日が深夜勤務で気象監視や局地予報なので、どうしても眠くなるのです。

コメント (3)
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