計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

フェーン現象と海陸風

2022年09月08日 | 気象情報の現場から
 総観スケールで南寄りの風の場となる時、北陸地方など日本海側の平野部ではフェーン現象に伴う気温上昇が顕著になることがあります。

 さて、新潟県内でフェーン現象による昇温が顕著になるのは、風向が主に南東~南寄りとなる場合です。一方、西南西~南西寄りの風になると、気温の上がり方は緩やかになる傾向があります。この他にも、フェーン現象の影響が限定的になるケースがあります。

 まずは、2022年9月5日・正午の新潟県内の気温と風の分布です。

 北陸地方では南風に伴うフェーン現象が発生する一方、上越地方の沿岸部では海風の方が顕著となりました。この付近ではフェーンの弱化(フェーンブレイク)が見られました。南風をもたらす総観場の気圧傾度より、海風をもたらす気圧傾度の方が大きいようですね。

 続いて、翌日の9月6日・正午の新潟県内の気温・風の分布です。

 日本海を北上する台風11号の影響で、北陸地方は強い南風となりました。新潟県内では上・中越で南寄り、下越では南東寄りの風となり、フェーン現象に伴って平野部の昇温も顕著になりました。

 ここまでの内容を踏まえて、海陸風とフェーン現象の模式図を描いてみました。


 総観場では北陸地方でフェーン現象が発生し得る状況でありながら、平野部では海風の影響の方が優勢となるケースがあります。従って平野部の昇温ポテンシャルを予想する際には「海陸風とフェーン現象のどちらの影響が卓越するか」についても考慮する必要があります。


 今度は視点を変えて、フェーン現象を「山越え気流」と考えてみましょう。


 上段は低フルード数、下段は高フルード数の場合の流れです。山を乗り越えて吹き降りた流れが、カウンターフローとなる海からの風に打ち勝つためには、高フルード数であることが望ましいと考えられます。

 つまり、一般流に相当する南寄りの風が「ある程度強い」ことが条件となります。この流れが弱いと、山を乗り越えた流れが海からの風に押し戻されることになります。つまり、沿岸部~平野部では海風が卓越するため、フェーンの弱化が引き起こされます。
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