計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

ニューラルネットワークを学ぶことは、人間の「学習」を学ぶことに通ず

2015年06月22日 | 計算・局地気象分野
 ニューラルネットワークは、もともと脳の構成する神経細胞の機能を真似した数式の集合体で、要は脳の機能を数式モデル(ニューロモデル)で表現しようとしたものです。詳しいことはこちらの記事にて解説しています。

 さて、ニューロモデルが学習を行う場合は、例えば入力値に対して得られた出力値と、本来得られるべき正解値(教師信号)を比較して、その誤差をより前段のニューロンに順次伝播し、各ニューロンに設置されたシナプスはそのパラメータの値を自動的に調節していきます。このプロセスを繰り返すことで、段々とニューロモデル全体としての最適化が図られていきます。

 ニューラルネットワークの勉強していて思うのは、「人の学習というのも、そういうものかも知れないな・・・」ということです。

 新しい事をやろうとしても、初めから上手くいくということは、そうそうあるものではありません。何度も繰り返し練習するなり、試行錯誤を繰り返して、段々と身についていくものです。このプロセスの中で、私たちの脳も徐々に最適化を図っているのだ、と理解することができます。

 そう考えると、失敗は必ずしも悪いことではなく、あくまで脳の最適化のプロセスの最中にあるのだと考えることもできるのです。

 上達の早い遅いというものも、結局は脳の中のシナプスのパラメータの情報がお互いに違っていることの現れに過ぎないのです。シナプスのパラメータの情報は、それまでの経験や勉強などいろいろな形での「学習」によって形作られるわけなので、人それぞれです
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ニューラルネットワークと重回帰分析

2015年06月21日 | 計算・局地気象分野
 ニューラルネットワークと重回帰分析を比較してみると・・・説明変数と目的変数の数が少ない場合は、どちらを用いても良いのですが、(a)説明変数や目的変数の数が膨大になるケースや、(b)分析に用いるデータベースが頻繁に更新される場合は、ニューラルネットワークの方が使いやすいのかも知れません。要は、予測モデル式のメンテナンスが容易ということです。

 そもそも、重回帰分析から得られる回帰式は計算式ですが、ニューラルネットワークもまた膨大な数の計算式の集合体です。

 (a)説明変数や目的変数の数が膨大になると、目的変数の数だけ重回帰分析を行う必要があり、一つの重回帰分析に用いる説明変数が多くなると、なかなか面倒です。かつて説明変数が30種類近い重回帰式を100本近く、エクセルで、手動でちまちまと作成したことがありますが、ハッキリ言ってしんどい作業でした。

 これに対して、ニューラルネットワークは入力層と出力層のニューロン数を、各々、説明変数と目的変数の数に対応させ、後はデータを学習させれば良いのです。学習が進むにつれて、ニューラルネットワークは自動的に、説明変数と目的変数に最適化されていきます。

 (b)分析に用いるデータベースが頻繁に更新される場合、重回帰分析の式はその都度、重回帰分析を行って回帰式(計算式)のアップデートを行う必要があります。

 これに対して、ニューラルネットワークは、既にある状態のまま、新たに更新されたデータベースを追加学習してゆけば良いのです。こちらでわざわざ式を作り直す必要がありません。要は、ニューラルネットワークが勝手に学習して、自らを最適化してしまうのです。
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久々にニューロ・モデルの実験に取り組む

2015年06月18日 | 計算・局地気象分野
 今日は久々にニューラルネットワークの実験に明け暮れました。


 現在考えているのは、入力層・中間層・出力層の3層からなるフィードフォワード型のニューラルネットワーク構造を持つ「ニューロ・モデル」を構築し、その入力層と出力層にレベル変換モジュールを設けています。この変換モジュールの機能を表す数式を(1)式と(2)式として表記しています。


 一気に実験を進めて、早くもその結果の取りまとめに掛かっています。課題は多いですが、ようやくニューロ・モデルとの付き合い方が、少しずつ判ってきました。
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「グローバル」 VS 「どローカル」

2015年06月02日 | 何気ない?日常
 さて、5月23、24日の日程で「日本気象学会2015年春季大会」に参加してきました。


 学術的な研究は「関東平野の○○」というものから、日本を飛び出して「熱帯地域の対流」に関するものから「全地球規模」に渡るお話など、時空間スケールも多岐に渡るテーマが多く発表されています。まさに「グローバル」(一部、ローカルもありますが)な研究が盛んです。

 これに対して私が取り組んでいる範囲は本当に狭いものです。ローカルもローカルな、まさに「どローカル」の世界です。山形県の気象といえば、学術的には「清川だし」が良く注目を集めますが、私はその路線から大きく外れて「我が道を行く」ようなものです。


 今回は冬季の内陸部に現れる冷気湖を意識したアプローチを手掛けました。このようなテーマは、今までのやり残してきた部分でした。地形の影響を受けて、季節風の強弱に応じて降水域の分布が変わることは、これまでの数値シミュレーション研究で明らかにできました。

 しかし、その一方で、内陸部に冷気湖が現れて、その影響もあるのではないか、という旨の指摘やコメントを頂いており、かねがね興味を持っていたテーマでした。今回、ようやくその分野にアプローチすることができました。アメダスによる観測データの分析だけだったこともあり、学術的には余り面白いテーマではなかったと思います。それでも、色々なアドバイスを頂くことができました。

 さて、先述の「どローカル」という言葉は、以前、職場に取材に来たテレビ局の方が述べられていた言葉です。「グローバル」の対極にあるのが「ローカル」。その中でもさらに地域に密着した気象情報を提供している様を、「どローカル」と評したものです。そして、自分たちもまた地域に根差した「どローカルな番組作り」を心がけていきたい、と述べられていました。

 今、私はとある「どローカル情報番組」のための気象情報にも関わっています。アナウンサーの方が読み上げる原稿を作成したり、さらには、電話出演も行うようになりました。その時に考えるのは「どのような伝え方をすれば、相手にとってわかりやすいのか」ということです。

 これは、「講師の仕事」でも同じことが言えます。「情報を整理し、受け手にとって段階的に、こちらが思い描いているイメージを理解できるように、伝え方を組み立てる」という配慮は、講師として直接講義する場合でも、原稿作成で間接的に伝える場合でも、電話出演で話す際にも、常に意識することです。

 自分なりの絵的なイメージを描いて、それを簡潔でわかりやすい言葉で、端的に伝える。これは一朝一夕に身につくものではなく、私もこれまで様々な経験を積み重ねながら、それこそ数々の失敗や試行錯誤を重ねながら(時には罵声や怒声を浴びながら)、何とか形になってきているようなものです。これまでの様々な経験やチャレンジ、試行錯誤・・・それらの積み重ねが、天気予報の解説文にも、自ずと如実に現れるような気がしています。

 4月1日の記事でも書いたことですが、「本当にやってみたい、チャレンジしてみたいコト(夢や希望)があるのならば、そのチャンスは『自分で』掴まなければならない」と感じています。そのためにエントリーの矢を放ち続けています。チャレンジするかどうかは、自分で決めます。そして、新しいチャレンジも始まります。チャレンジした結果、成功しても、失敗しても、そのプロセスを通じて成長できる筈ですし、自分の中には新たなノウハウが蓄積される筈。そして、きっと新しい仲間との出会いがある筈。

 私が自腹で気象学会に参加し続けるのも、このような可能性があるからです。

 ちょっとずつで良い。新しいことにもチャレンジしていきたい。新しい扉を開いていきたい。そして、それらは、(会社や団体などの)誰かがチャンスを与えてくれるわけではありません。あくまで、最初は自分で矢を放ち、自分でそのチャンスを仕留め、そして掴まなくてはならないのだと、そう思うのです。その積み重ねの中で、チャンスを与え合える存在に出会うかもしれない・・・。

 そんなことを考えながら、一人、つくばの夜を過ごしておりました・・・。
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