計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

詩人ポープの言葉

2012年07月29日 | 気象情報の現場から
Nature and nature's laws lay hid in night.
God said "Let Newton be" and all was light.
(by Alexander Pope)

自然界と自然を司る法則は、夜の闇に隠れていた。
神は言った「ニュートン、出でよ」と。そして、全ては明るくなった

(アレクサンダー・ポープ)

 これは、物理学の基礎を築いたアイザック・ニュートンの功績を讃えた詩です。彼が打ち立てたニュートン力学は、物理学における大きな支柱となっています。もちろん、気象力学の理論の出発点にもなっています。


 そこで、不謹慎ながらも、(ニュートンにあやかり)、この詩を文字って・・・

新時代における気象予報士の活躍のヴィジョンと、
この地の局地気象のメカニズムの理論は、未だ夜の闇に隠れていた。
ついに神は言った「●●、出でよ!」と。
そして、全ては明るくなった・・・。


 この●●に自分の名前が入る事・・・これが私の密かな野望です(笑)。


 私の会社は、ある意味気象台の予報業務と大学の研究室システム開発会社の機能を併せ持ったようなもの」です。気象資料を分析して現状を把握し今後の動向を予測しますし、各種データを解析する事で独自の気象予測モデルの研究開発も行い、その成果を局地予報にフィードバックすると共に、それらの知見をコンピューターでシステマティックに連動させるための環境を整備していきます。特に興味深い成果が出れば学会発表も行います。高校で言えば、数学と理科と情報、そして工業などの教員を兼務しているようなものでしょうか・・・。

 私にとって核となるのは「局地気象の特性を定量モデル(数式やアルゴリズム)に表現し、コンピューターがシステマティックに予測・解析できるような手法を構築する」という事です。これは「どの要素の、どんな所に着目し、どのような基準で、どのように判断すればよいのか」と言った予報者の思考過程をコンピューターにティーチングしていく、と言い換えることもできるでしょう。

 そのためには「自分自身の思考過程」を一から順を追って明らかにする必要があります。人間の感性を数値化・指標化したり、工学的手法や物理学の法則に照らし合わせて定量モデルの形に落とし込んで行くわけです。このようなプロセスを経て多種多様な自動解析・予測ツールを開発し、気象の状況把握や予報・解析に役立てています。つまり、自然現象のメカニズムに対する自分の考え方=自分なりの理論・感性を持つという事と、それを順を追った計算式に形に表現できる事、さらにそれをプログラミングにより具現化する事、と言う3段階の能力が求められます。

・・・そんな業務の傍ら、個別指導の学習塾にお邪魔して中高生の理数系科目の指導に関わっています。折しも夏期講習も真っ盛り。普段は夜の時間帯に集中している学習塾も、朝から晩まで授業ラッシュの状態で、私も午前中に学習塾、午後から夜遅くは気象業務、そして週末はセミナーや研修と言う日々を送っております。受験生にとってはこの夏の頑張りが受験の行方を左右すると言っても過言ではありません・・・とは言っても、夏のお祭りやイベント毎でついつい・・・と言うのが実際の所。

 秋からの追い込みに備えて、私はしっかり受験勉強もしなければなりません・・・高校と大学と両方・・・。別に、私が受験するわけじゃ無いんですけど・・・(爆)。
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今日はいつになく、暑い!

2012年07月28日 | 気象情報の現場から


 社内で用いられている、向こう1週間の各地点毎時間帯別の暑さ指数(=熱中症に関する注意喚起の指数)です。レベルの高い方から、危険、厳重警戒、警戒、注意の順に色分けされています。今日の新潟県内は最高気温が33~34℃にまで跳ね上がりました。どうりで暑さ指数のレベルの高いわけですね・・・。

 今日はコーチング研修を受講してきましたが、駅から会場まで歩いただけで、疲労を感じました。受講後に戻ってきて、アメダス観測値を見て納得・・・かつて東京都内に在職していた頃の強烈な暑い夏を思い出しました。
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突如、むくむくと沸き起こる雲・・・

2012年07月23日 | 気象情報の現場から

第1図・2012年07月23日12時のレーダーアメダス解析雨量図


第2図・2012年07月23日12時の地上気温(範囲:15~30 ℃)


第3図・2012年07月23日12時の地上風ベクトルと発散D(範囲:-500~+500 × 10-6 1/s)
D≡(∂u/∂x)+(∂v/∂y)

 梅雨明けが発表され、この週末はちょっと気温も下がり気味でしたが、夏らしくなってきました。レーダーアメダス解析雨量図(第1図)のエコーを見ると、ちっこい?エコーの塊がチラホラ・・・。中には大きなものもありますね。このような雲の出現を予測するのは、非常に難しいのです。

 今回の雲域の発生について、実際の観測テータや数値予報のGPVを組み合わせて状況を考察してみると、次の4点を挙げることができます。

(1)上空の風が弱い(目安としてはWv_850 < 5~8m/s)。
  場において支配的な流れ(主流)がはっきりと定まらず、水平運動が不明瞭となります。主流の影響がドミナントであれば、主流の力で付近の空気全体がドンドン下流側に流されて行くため、同じ場所で対流が持続する事はできません。

(2)大気の状態が不安定(目安としては:T_500-T_sfc ≧ 30℃)
  鉛直方向の運動(対流)が励起されやすくなります。ベナールセルもこのような対流の一つです。対流が活発になると激しい上昇気流を生み出し、やがて積乱雲を生じやすくなります。
  ※ベナールセルの数値シミュレーションを行う際は、初期状態における速度成分は0として、鉛直方向の温度勾配を与える事が多いです。これは(1)の条件と合致します。

(3)エコーが解析されている付近では、Dの極小域やシアラインが形成されている(第3図)。
  Dの極小域やシアラインは流れの「収束域」を意味します。地上で収束するとその上空に向かって局所的に上昇気流を形成しやすくなります。

(4)大気の下層で湿度が高い(目安としては:Rh_sfc≧80% と Rh_925≧80%)
  熱のエネルギーと水分が対流雲の発生要因です。

(※)
・T_500 :500hPa面の気温
・Wv_850:850hPa面の風速
・Rh_925:925hPa面の湿度
・Rh_sfc:地上の湿度
・T_sfc :地上の気温



第4図・2012年07月23日13時のレーダーアメダス解析雨量図

 エコーがあちこちに解析されています・・・。色々な特徴を探っていくと、予測の糸口が見つかる・・・かもしれない?
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ひょっとして場違いだった?

2012年07月22日 | 何気ない?日常
 2010年の夏、私は創業セミナーを受講していました。思い起こせば、この会社もこの年の6月に法人化したばかりで、設立時からのスタッフの一人として知識を得たいと思い受講しました。その時の記事がこちらです。

the establish seminor (2010年08月25日)
一週間で書けるかーーっ!! (2010年09月16日)
「飲み会」出るより「セミナー」へ行こう・・・? (2010年09月21日)

 あれから二年近くが経ち、少しずつ「地域の気象情報会社」らしい形になってきました・・・。



 昨日は、2009年度の受講生と2010年度の受講生の合同での勉強会&懇親会に行ってきました。ちなみに・・・2010年度メンバー(つまり私の同期という事になる)は圧倒的に出席率が低かったようです。大多数が2009年度メンバーという事で、私にとっては顔と名前も一致しない状態でした。

 勉強会では何やらこのメンバーで任意団体を立ち上げよう!という話が(いつの間にか)盛り上がっており、その運営についての話し合いだとかで(←聞いてないよ~)・・・私に案内をくれた2010年度の幹事もこの構想について詳細は知らなかった様子で・・・どうやら2009年度メンバーが中心となっての事らしいのです。2009年度メンバーはセミナー終了後も定期的に集まって会合の場を持っていたようで、そこに2010年度メンバーもお誘い頂いた形のようです。

 正確に言うと、この創業セミナーな毎年開催されており(現在は廃止されましたが)、複数年度に渡って参加されたメンバーが橋渡し役となっていたようです。

 このような調子で何が何だか訳が分からないコトが勝手に進んでいるような感じも覚えましたが・・・それはさて置き・・・。



 実は、若干の違和感(場違い感)を感じていました・・・。昨日だけでなく、セミナー当時も・・・。この違和感はなんなんだ・・・今日はずーっと、静かに考えていました。

 私が受講した2010年度の場合は、何か「創業したい、起業したい」という気持ちがあって、自分なりのイメージやビジョン・・・要するに夢のポンチ絵を思い描いて、自分のマインドを高めている段階の受講生が多かったように思います。夢の実現の「入口」の前に立っている段階ですね。「こんな事がやりたいな」と言う段階です。彼等の目指す事業は農業、飲食業、小売業、イベント企画、士業など多彩に渡っていますが、個人事業の形態が多い印象を受けました。このような中で「気象ビジネス」というのは・・・浮いてしまいますね(正直、セミナー受講時の居心地は確かに良くなかった・・・)。

 この当時、私はと言うと・・・会社が法人化したばかりの状態で、それまでに個人事務所の形態をとって活動していた時期もありますから、「これから創業するぞ!」という段階はとうに過ぎており、法人化して「ベンチャー企業」としての方向性をどのように打ち出していくか、事業戦略の方向性をより詳細に煮詰めていく段階に差し掛かっていました。

 根本的な考え方のフレームにも差異を感じていました。例えば、赤ちゃんにとっては家庭の中自分にとっての世界の全てです。これが、小・中・高校生になるとさらに広がって学校やそれに関わる空間が、自分にとっての世界の全てに加わるでしょう。しかし、大学生や社会人になると「自分にとっての世界」のフレームがグワーーッと広がっていきます

 私の会社も局地予報のターゲットにしているエリアはごく限られた範囲ですが、それ以外のマインドは常に全国(さらには世界)を意識しています。解析対象は地方に留まっているとしても、テクノロジーやマインドは全国水準でありたい、と考えています。

 どうせ田舎の会社なんだから、(なあなあの)田舎の基準に留まっていれば良い等と言う甘っちょろい考え方の地方企業は、これからバンバン淘汰されていくでしょう。会社の立地は田舎であっても、意識や目線は常に全国水準~国際水準でなければ、これからは生き残れないのではないか・・・と私は感じています(もとい、戦々恐々の心境です)。その意味では、私の場合は例えば「特定の地域の局地予報については世界一を目指す」と換言すると分かりやすいかもしれません。

 周囲の受講生の夢の話を聞いていると「自分の見ている世界」のフレームが、余りにも身近な範囲に留まっているのではないか・・・と感じました。もちろん、地元や地域の活性化を目指すのは素晴らしい事です。各自が思い描いている夢のポンチ絵に異論を挟むつもりは一切ありません。純粋な心で発想されたアイデアの一つ一つは素晴らしいのです。そこから更なる展望が見えてこないのです。

 そこに、私はちょっと噛み合わないような違和感(=場違い感)を覚えました。敢えて書けば、地元から地元に発信するだけでいいの?地元から全国へ、さらには世界へ発信しよう!って発想はないの?・・・って所でしょうね。



 もう一つ感じたのは、情熱やモティベーションの表現についてです。火山の噴火に例えるならば、プリニー式噴火ハワイ式噴火の違いでしょう。

 メンバーの自分のビジョンを語る時の熱さは凄まじい。爆発的な火山の噴火が連鎖反応の如く発生するような感じです。類似の業種を志す者同士の会話となると一気にヒートアップ。まさにマグマが成層圏にまでぶっ飛びそうな大噴火(プリニー式噴火)!!そこで話の内容を聞いていると、○○やりたい!△△もいいね!できたらスゴーイ!!と言った言葉の応酬であることに気づきます。ちょっと現実的なイメージが追い付かない、頭の中の空想のようなアイデアが交錯する様はまさにブレーンストーミング。私はただ黙って聞いていました。

 今の私は・・・ここまで爆発的な火山の噴火の如く語る事は、まずありません。そこまでハイテンションになる事も・・・まずありません。こう書くと、如何にもモティベーションを失い、やる気の失せた、戦意喪失状態のダメリーマン・・・みたいな感じに誤解されてしまうそうですね。私の場合は、無闇に情熱やモティベーションを表に出すことはしません。決して前のめりになるのではなく、冷静沈着にお話するだけです(ハワイ式噴火)。

 これは、樽に入れたばかりのワインと樽の中で何年もかけて熟成されたワインの違いと換言してもよいでしょう。様々な経験を経るにつれて相手は自分が期待しているほど、自分に興味・関心を持っているわけではないと言う事実を悟っていくでしょう。この事実を知っているかどうかの違いです。「貴方の事業には別に興味は無い」と言う人に向けて一生懸命になって話すのは無駄です。「聞かれもしない」と判っていて、それでも話さなければならないのは面接試験くらいでしょう。「気象ビジネス」に興味を持つ人がいないなら、こちらは聞き手に回るだけです。

 相手が興味を示したとき、満を持して私が話す時が来るでしょう。私がコーチング研修で学んだこと。それは「話す」事ではなく「聞く」事の大切さ。ただ単に、饒舌におしゃべりできれば良いというものではないでしょう。まさしく、巧言令色鮮なし仁



 ・・・ひょっとして・・・場違いだった?

 
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しつこい前線

2012年07月13日 | 気象情報の現場から
大雨の被害に遭われた皆様に、謹んでお見舞い申し上げます。


この梅雨前線の停滞ぶりは、一言で言えば・・・しつこい

流入暖気に大量水蒸気、九州山地にぶつかり雨雲(読売新聞) - goo ニュース

記録的な大雨のメカニズムについては↑の記事に詳しく書いてあります。

それにしても、しつこい

この前線が北上してきたら、今度はこちらが注意・警戒しなければなりません・・・。

梅雨前線の今後の動向からは目が離せません。

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