計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

今年(2023年)の猛暑を甘く見てはいけない

2023年08月25日 | 気になるニュース
【2023年08月25日(TUY / Yahoo!ニュース)】
救急車到着後も練習継続 体育祭の練習中に熱中症で中学生13人搬送

 先日、同じ山形県の米沢市で悲しい出来事があったばかりです。その教訓が全く活かされていないようです。

 山形市における8月の日最高気温の推移(1976~2023年)を調べました。日最高気温は「猛暑日」「真夏日」「夏日」「夏日未満」の4階級に分け、各々の出現回数を表示しています。今年(2023年)は24日までの集計ですが、「猛暑日が14日、真夏日が9日、夏日が1日」と、特に「猛暑日」が多く現れています。


 続いて、山形市における8月の降水量の推移(1976~2023年)を調べました。年毎にバラツキはありますが、平年の月降水量「153mm」に対し、今年の降水量は24日までで「60.5mm」(平年の4割程度)に留まっています。ちなみに、新潟県新潟市(観測・新潟)では24日までの時点で「0mm」の状況です(図略)。


 山形では1933年7月25日に最高気温「40.8℃」が観測され、その後「2007年8月16日」に更新されるまで、実に「74年」もの長きに渡って「国内最高気温」の記録を守り続けました。幾ら「北日本」と言えども、ひとたび「フェーン現象」が牙を剥くと気温の上昇は顕著となります。

 先日の記事でも言及しましたが、今年(2023年)の夏は「暑さが際立ちやすい」状況となっています。学校関係者各位が中学生だった頃の「昔の夏」の感覚とは(少なくとも今年の夏は)「別物」であると言えるでしょう。「意識」のアップデートが必要です。

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ノーベル物理学賞2021

2021年10月06日 | 気になるニュース
【ノーベル物理学賞に真鍋氏 温暖化予測、気候モデル開発(日本経済新聞)】
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC055BF0V01C21A0000000/

 気象・気候分野の研究では初の「ノーベル物理学賞」のニュースに、気象関係者の間でも歓喜の声が上がっています。

【ノーベル賞公式サイトより】
https://www.nobelprize.org/prizes/physics/2021/manabe/facts/

 今回の受賞理由は「地球気候の物理的モデリング、変動性の定量化、および地球温暖化の確実な予測」とのことです。

 地球気候の物理的モデリングである「大気・海洋結合モデル」は、今や気象・気候分野の研究の礎となっています。このモデルを活用することで、気候変動の様々なメカニズムについて研究が進められています。
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米沢牛のふんからメタンガス?

2020年10月12日 | 気になるニュース
 面白い記事を見つけました。米沢牛の「ふん」から「メタンガス」を取り出して、「発電」に活かすそうです。

「米沢牛のふんで発電 全国初の技術に脚光 山形・飯豊」(河北新報・2020-10-11)
gooニュースhttps://news.goo.ne.jp/article/kahoku/business/kahoku-01_20201011_52021

 さて、火力発電の燃料は主にLNG(天然ガス)、石油、石炭に分けられます。日本国内の主な発電方法を表にまとめてみました。



 二酸化炭素(CO2)排出量の観点で比較すると、LNGは石炭に比べて4割減、石油に比べて2割減とアドバンテージがあります。

 また、火力発電の方法(発電機の回転動力を生じる仕組み)は、大きく3種類に分類できます。蒸気タービン、ガスタービン、コンバインドサイクルです。

 (1)蒸気タービンは、お湯を沸かして得られる蒸気をタービン(鋼鉄の羽根車)にぶつけることで、タービンを回転させるものです。主に、石油や石炭を燃焼することで生じる熱でお湯を沸かします。タービンにぶつかった後の蒸気は、冷やされて水として排出されます。


 (2)ガスタービンは、外部から取り込んだ空気を圧縮して高温・高圧になった所に、燃料ガスを噴射して爆発させ、その威力でタービンを回転させるものです。この燃料はLNGです。また、爆発の際の混合ガスは1000℃以上に達するため、タービンにぶつかった後の排ガスも500℃近い高温の状態です。



 さらに、この排ガスの熱を再利用するものが(3)コンバインドサイクルです。ガスタービンから排出された高温ガスの熱を使ってお湯を沸かし、蒸気タービンを回すものです。一度の燃料投入で二段階のタービンを回転させることができるため、(単一のタービンに比べて)熱効率が向上します。


 今回、どのような発電方法に用いられるのかは判りませんが、「米沢牛」が絡んでいるだけに目が離せません。
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感染症の数理モデル

2020年04月02日 | 気になるニュース
 今回はちょっと「専門外」のお話です。

 感染症の広がり方を理解するための数理モデルとして「SIRモデル」が知られています。これは「ある閉じられた領域(区画)」の中に存在する人々を、次の3つの状態(S,I,R)に分類して、その時間的な変化を解析するものです。

未感染者(Susceptible)
 未だ感染していないので、今後「うつされる」リスクがある。

感 染 者(Infected)
 既に感染しており、今後「うつしてしまう」リスクがある。

・回 復 者(Recovered)
 感染後に回復した状態であり、今後「うつす」ことも「うつされる」こともない。

 つまり、未感染者(S)感染者(I)回復者(R)の順に状態が遷移します。

 これをイメージで表すと、次の図のようになります。


 上の段は「感染過程(S→I)」を表しています。

 未感染者と感染者の(直接的な)接触により、感染が起こります。未感染者(うつされる側)の数が多ければ多いほど、また、感染者(うつす側)の数が多ければ多いほど、新たな感染者は増加します。従って、新たな感染者の発生数は未感染者数と感染者数の積に比例すると仮定することができ、その比例定数をβ(感染率)とします。

 下の段は「回復過程(I→R)」を表しています。

 これは感染者数の内の一定の割合に相当する数が回復すると仮定しています。このペースを表す比例定数をγ(回復率)とします。

 そこで、第t日目における未感染者数をS(t)、感染者数をI(t)、回復者数をR(t)と書き換えてみると、次の図のように表すことができます。



 第t日目におけるS(t)、I(t)、R(t)の時間的な変化をβ、γを用いて数式の形に表現すると、次のような連立常微分方程式で表すことができます。


 あとは初期条件とパラメータ(β、γ)の値を設定することができれば、数値計算でシミュレーションを行うことができます。(実はこの値の設定が難しい・・・)

 次のグラフは初期条件とパラメータを適当に設定して計算した一つの例です(設定は適当ですが、基本的な特徴は現れています)。

(平均回復期間 γ-1=25日,基本再生産数 R0=β/γ=3.55と設定した場合)

 未感染者数S(t)は時間の経過とともに減少する一方、感染者数I(t)が増加していきます。また、感染者数I(t)の増加に伴って回復者数R(t)も増加します。やがて感染者数I(t)はピークを迎えると、その後は減少傾向に転じます。

 感染者数I(t)に着目すると、次の2点がポイントです(図は省略)。

・感染の拡大が急速であれば、ピーク時の到来は早く、ピーク時の感染者数も増加します。グラフは急峻な形状になります。

・感染の拡大が緩慢であれば、ピーク時の到来は遅く、ピーク時の感染者数は抑制されます。グラフは丘陵な形状になります。


 なお、COVID-19の予測については、(その筋の)専門家が実施・公表されているシミュレーション結果を参照して下さい。この記事が理解のお役に立てれば幸いです。


 ご参考までに、感染症の数理モデルについて詳しく述べられている文献も紹介します。
西浦 博・稲葉 寿,2006,感染症流行の予測:感染症数理モデルにおける定量的課題, 統計数理(2006)第54巻 第2号,461–480c,統計数理研究所
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平成30年7月豪雨

2018年07月09日 | 気になるニュース
「平成30年7月豪雨」と命名、地域名は入れず(gooニュース・読売新聞)

 この度の記録的豪雨の被害に遭われた皆様には、心よりお見舞い申し上げます。

 ほぼ同時に、これほど広範囲に渡って特別警報が発表された事態には「衝撃と戦慄を覚えた」と言うのが正直な感想です。

 そもそも、特別警報とは「数十年に一度」の水準という極めて重大な危機を呼びかける趣旨のものであり、頻繁に発表されるものではありません。しかし、そのような情報が次々に発表されたという事からも、今回の豪雨の凄まじさを感じました。

 まずは、これ以上の被害が出ない事、そして一刻も早い救出、さらに一日でも早く通常の生活に戻れますよう祈念しております。
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「自信」は後からついてくる

2011年02月25日 | 気になるニュース
日本の高校生「自分に満足」わずか24%(読売新聞) - goo ニュース
日米中韓の4か国中、日本の高校生は、最も自分に自信がない――。そんな実態が、24日に発表された文部科学省所管の教育研究機関の調査でわかった。

記事によれば、

「私は価値のある人間だと思う」・・・日本:36・0%
「私は自分に満足している」  ・・・日本:24・7%
「親は私が優秀だと思っている」・・・日本:32・6%

の3項目全てにおいて、ぶっちぎりでダントツのワースト1・・・。でも、どうでしょうか?


●私は価値のある人間だと思えない

 無理してそう思えなくても良いのではないでしょうか。真に価値のある人間には、これから時間をかけてなれば良いのです。そのために人は学び、努力し、そして成長していくものではないでしょうか。

●私は自分に満足していない

 現状に満足することなく、より高みを目指して努力し続ければ良いのです。日々、少しずつでも自分を成長させることができれば、それで良いのだと思います。

●親は私が優秀だと思っていない

 何も「親だけ」が自分の「評価者」ではありません。様々な価値観や環境を経験する中で、より多くの「他者」と出会い、その中の「誰か」が自分に可能性を見出してくれれば、それでも良いのではないでしょうか。そこから自ずと道は開けると思います。この先は「自分の」勝負です。


 少なくとも、早い段階から自分の可能性を否定する事は愚かなことだ、と私は思います。自分が未来においてどのような形で人々に喜ばれ、または感動されるような仕事を成し遂げるかを真剣に考え、見定め、それに向かって努力する事、それ自体が尊い事だと思います。自分の思い描いている事が本当にできるかどうかは、やってみなければわかりません(だからリスクを伴うんです)。その一方で、何の努力も挑戦もせず、言い訳ばかりでは何もできません。

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激しい横風と強烈な寒気

2006年01月25日 | 気になるニュース
今日は気になる記事を紹介します。

JR羽越線「35メートルの横風で転覆」風工学会が試算 (河北新報) - goo ニュース

 昨年12月のJR羽越線脱線事故で、現地調査をした日本風工学会の報告会が24日あったそうですけど、そこで「竜巻と考えるのが妥当」との見方が示されたようです。この事故に関しては、私も列車を脱線せしめる横風の強さを試算しました。12/27日の日記で紹介した内容を再掲しますと・・・求める風速Vは次のような式で表現できます。(図・参照)

● V≧{Mg・sinθ / [ρL(H+h)] }^0.5 ・・・(1)

 ここで、θ:車両の傾斜角、M:車両の重量、g:重力加速度、h:盛り土の高さ、H:車高、V:求める横風の風速、L:車両の長さ、ρ:空気の密度

 この計算式からは、車両がθ=45°傾く場合、横風としてはV=44.55m/sという猛烈な風が吹きつけることになります。そしてもう一つ、列車の進行方向と風向とが互いに直角ではないことから、さらに揚力が作用した可能性も考えられます。飛行機が飛び立つ原理です。揚力は

● 揚力=(1/2)×CL×ρ×A×V^2 ・・・(2)

CL:揚力係数、ρ:空気密度、A:空気の当たる断面積、V:速度

で計算できるように、速度の2乗に比例します。列車の運行速度を下げていれば揚力の影響は低減できた可能性が十分にあります。仮に揚力が働いていたとすれば、(1) 式のMgの作用は減少しますので横風の風速が40m/sに満たないものであっても転倒する危険性が増します。

 今回の記事の試算結果も大体同じような値になりました。ダウンバーストによる突風が原因かと推測していたのですが、実際には竜巻の影響との見解が出されました。しかしどちらにしても、非常に小さなスケールの局地的な現象であり、その発生を予測する事は困難です。

 ダウンバーストや竜巻は、積乱雲に伴う現象であることが知られています。寒冷前線の通過時など、積乱雲の影響を受ける時には注意が必要と思われます。ドップラーデーターなどの設置も然ることながら、気象観測と気象予測が的確に運用され、乗客の安全・安心の向上に活かされるよう希望します。


平成17年12月の天候をもたらした要因について(速報) - 気象庁HP

 2005年12月は私の故郷でもある山形県置賜地方も記録的な大雪に見舞われました。この冬の寒気は尋常じゃない、とは思っておりましたが、このメカニズムに関する見解が、気象庁から発表されました。それによりますと

 ①例年より大きく南に蛇行した偏西風に沿って、寒気の中心から強い寒波が次々と流入した。
 ②熱帯の活発な対流活動が偏西風の蛇行を強化し、寒気の流入がさらに活発化した。

 ・・・この2つが大きな要因とのことです。詳しい事は気象庁HPを見て下さい。pdf資料に詳しく掲載されています。なるほど~ぉ、勉強になります。
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列車を横転させる横風とは?

2005年12月27日 | 気になるニュース
横風、盛り土で風が吹き上げ? JR羽越線事故 (朝日新聞) - goo ニュース

 山形県庄内町での列車事故・・・これから山形県に帰省する身にとっては人事とは思えません。被害に遭われた方々には心よりお見舞い申し上げると共に、亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。
この事故の原因については様々な見解が出されておりますが、どうやら突風による横風が有力な見方のようですね。
 記事に登場している大学の先生は40メートル以上の横風でなければ列車横転はないだろうとの見方を示しておられますが、付近の観測によれば20メートル未満だったとか?
ただ、観測の空白域だけに局所的な強風域が短時間だけ発生した可能性も否定できません。事故発生当時は吹雪や雷が激しかったことから対流雲(積乱雲)の存在が伺えますしこれにともなうダウンバースト(マイクロバースト)があったと考えると、局所的に40メートルを超える強風が一時的に発生したと考えることができます。

 さて、40トンという重量の列車を横転させるほどの風とは如何ほどなのかを、私も計算してみました。各パラメータと計算式は次の通りです。
θ:車両の傾斜角、M:車両の重量、g:重力加速度、h:盛り土の高さ、H:車高
V:横風の風速、L:車両の長さ、ρ:空気の密度

 V={Mg・sinθ / [ρL(H+h)] }^0.5 (式の導出過程は省略)

 これらの値について詳しいデータがあるわけではないので、あちこちで調べたり憶測で値を代入しています。仮に

M=40000kg
g=9.8m/s^2
h=1.0m
H=3.5m
L=24m/両
ρ=1.293kg/m^3

として、車両がθ=45°傾く場合、横風としてはV=44.55m/sという猛烈な風が吹きつけることになります。しかし、ダウンバースト(マイクロバースト)に伴う突風の場合、決してありえない数値ではないと思われます。

 観測網の盲点を付かれた形になったのかどうか・・・最終的には調査委員会の見解に委ねるしかありませんが、このような事故が二度と起こらないよう切に願っております。原因の究明と対策の実施を望みます。
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