計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

明日は9月1日

2015年08月31日 | オピニオン・コメント
 明日は9月1日

 この日は「防災の日」でもありますが、学校の「新学期の始まりの日」と言うことで「鎌倉市図書館のツイート」が話題となっています。素晴らしいツイートですね。

 学校に通っている間は余り意識しておりませんでしたが、学校という「閉鎖的な空間」だけが「この世の全て」ではありません。広い世界から見れば、学校なんて、本当にちっぽけな、狭くて窮屈な世界なんです。だからこそ、敢えて「その場所を離れること」や「思い切って場所を変えること」は「正当防衛」であり「勇気ある決断」なのです。

 学校社会だけではありません。企業社会の現場でも、それこそ常軌を逸する激務に苛まれることだってあります。所謂「ブラック企業」に勤めてしまった人は、そのまま過労死するまでその企業に勤め続けなければならないのでしょうか。その時、誰も助けてはくれないものです。自分を救う決断ができるのは「自分だけ」です。

 学校もまた同じです。明日は「防災の日」です。「命を守る」という点では、これもまた、一つの「防災」と言えるのではないでしょうか。
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「コリオリの力」について考えてみる。

2015年08月26日 | お天気のあれこれ
 北半球上では、運動する物体の進行方向から見て右側に向かって、見かけ上の力(慣性力)が働きます。これを「コリオリの力」と言います。


図1・北半球を回転する円盤に置き換えてみる

 ここではまず図1のように、北半球回転する円盤に置き換えて考えてみることにしましょう。そして、次の図2のように、この円盤の中心端側に人が立っていて、キャッチボールをすることをイメージしてみましょう。この時、場が回転する影響で、ボールはどのような軌道を描くのでしょうか


図2・回転円盤上でキャッチボールをする

 円盤が回転していない場合は、そのまままっすぐに飛んでいくわけですが、円盤が回転するとちょっと複雑になりそうです。そこで簡単のため、中心の人が端側の人に向かって投げる場合を考えてみましょう。


図3・ボールの軌道を作図してみる

 ここでは、ボールがどのような軌道を描くのかについて、これを作図で考える方法を考えてみます。円盤が回転する状態で、鉛筆を中心から端側に向かって真っすぐに引いていきます。


図4・反時計回りに回転させた場合の鉛筆の描く線

 ここでは、ピッチャーがボールを投げた瞬間から円盤が反時計回りに回転した後にキャッチャーがボールを受け取る場合をイメージして、ボールの軌道を描いてみました。ボールを投げた側から見るとまっすぐに投げたつもりの筈なのに、ボールが右に逸れているように見えるのです。

 つまり、回転する円盤上では、進行方向を徐々に右向きへと逸れさせていくような力が働いているように見えるわけです。そして、この力は、実体を持たない「見かけの力」なんです。

図5・北半球上の運動する物体に働くコリオリの力

 このように、北半球上で運動する物体は、まっすぐに進もうとしていても、その進行方向は、少しずつ少しずつ、右向きに傾いているのです。このコリオリの力と、物体に働く他の力が合わさって、運動方向は次第に定まっていくのです。
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ニューロ・モデルの結果が意味するものとは?

2015年08月22日 | 山形県の局地気象
 昨日の記事にて紹介した局地気象ニューロ・モデルの解析結果を再掲します。


 上の段が降水域(水色が雪が降りやすい地域)、下の段が低温域(水色が冷気が停留しやすい地域)です。また、左側は季節風が弱い場合、右側は季節風が強い場合です。

 この結果が得られたことで、2014年11月02日の記事において指摘していた、次図のような2つのパターンの存在を(過去の観測データから)検出できました

(左:季節風が弱い場合 右:季節風が強い場合)

 季節風が弱い場合は、朝日連峰よりも海側を中心に広がり、内陸側への広がりがあまり見られません。このため、内陸部の広い範囲で放射冷却の影響が顕著に現れやすくなります。

 季節風が強い場合は、朝日連峰の北東側と南東側の内陸部へと深く広がろうするため、最上地方や東南置賜地方でも季節風の影響を受け降雪しやすくなります。これに伴い、放射冷却の影響が顕著に現れやすい領域は村山地方付近(と季節風の影響を受けにくい最上地方北部)に限定されていくようです。

 この降雪域の分布パターンの特徴は2014年10月30日の記事でも紹介した熱流体シミュレーションの解析結果でも現れています。

(左:季節風が弱い場合 右:季節風が強い場合)


 こうして、ニューロモデル熱流体シミュレーションの解析結果から、局地気象パターンの特徴が浮き彫りになってきました。
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「大人の学び舎」が必要なのではないか?

2015年08月07日 | オピニオン・コメント
日本の成人の「生涯学習」率は先進国で最低(Newsweek)

 経済協力開発機構(OECD)が2012年に実施した「国際成人力調査(PIAAC 2012)」では、各国の成人に「現在、何らかの学位や卒業資格の取得のために学習しているか」と調査した結果、日本は先進国の中で最低だったとの事。

 日本型雇用と言うと「終身雇用で社内の教育システムがしっかりしている」のが特徴、と認識しています。かつては所謂、大企業と言う世界(=正確にはその系列子会社)にもちょこっと籍を置いておりましたので、大企業グループの充実した研修制度を目の当たりにしていました。

 しかし、実際には日常の実務をこなしながら、さらに業務に関する勉強をするというのは、なかなか難しいものです。一口に「社内の研修を受ける」と言っても、その分だけ業務の負荷が軽減されたりするわけではないので(全てがそうだ、と言うわけではないでしょうが)、なかなか学習効果につながらないこともあるのかも知れません。

 当時の私は、系列子会社の人間として、グループ本部に出向の身でしたので、言ってみれば「傍系」です。これに対してグループ本社の社員は「直系」ですね。新入社員は入社して3ヶ月程度を過ぎると(傍系は本部に出向後)、直系・傍系を問わず、共通の専門知識の導入教育を受けます。その間も、この他に実務(「雑用」と呼ばれる類もあれば、本格的な実務のサポートまで)があります。その後も入社2年目を終了する段階で、それまでに体験した業務の成果を基に社内論文をまとめ上げ、その成果を発表(プレゼンテーション)するイベントまであります。

 この後もさらに、実務に従事しながら、必要に応じて研修を受講することができる「制度」は整っていました。しかし、実際には(傍系の身では)その制度を使って受講している余裕などありません。さらに、激務の果てに心身ともに余裕を失った同僚達を何人も見送りました。今思えば、配属先にもよりますが、理解ある部署に配属されていれば、大きく成長することも十分に可能であっただろうな・・・と思います。このように充実した制度を持っているのは、やはり大企業ならではと思います。

 もし、自社内でこのような研修制度が整備されていない場合は、自分で何とか学んで行かなければなりません。資格・検定試験であれば、それに特化した専門学校通信講座もありますし、Eラーニングも発達しているかもしれません。また、社会人向けに解放された大学・大学院も現れてきています。問題は本業と学業との両立なのではないか、と正直そう思います。職場の理解がなければ、学校に行って勉強することができない。ましてや学位取得なんて、休職するくらいじゃないと厳しいのではないか、とも思います(社会人は学生のように暇ではありません)。

 学びを深めることと実務との関連性、要は「学業=コスト」と「業務上の成果=パフォーマンス」との間のコスト・パフォーマンスが明確に描けないことが、一つの要因なのかも知れません。

 そして、企業が自社内での人材育成を行う余裕が無くなってきている、という側面も無視できないでしょう。企業が行う研修の多くがOJT(=On Job Training)中心になってきています。OJTを通して得られるのは、「社会人としての自覚」は勿論ありますが、基本的にその会社・部署の文化や独自の業務の進め方、すなわち「その会社・部署でのみ通用する業務のやり方=ローカル・ルール」です。従って、その会社・部署での即戦力を育成することはできますが、そこからさらに発展することはありません。一生涯を、一つの会社内で過ごすことができるのならば、これでも何ら問題はないでしょう。しかし、企業の寿命が短くなり、また競合他社との吸収・合併やリストラ、人事異動での出向なども含め、転職するような事態に直面したときに、問題が顕在化してきます。

 一つの仕事だけできれば良い、と言う時代はとうに終わりました。私は今の会社で何社目だろうか・・・数えるのも面倒くさいのですが、毎回、仕事の内容はガラッと様変わりしています。しかし、物事の基礎・基本や本質は変わらないので、何とか対応できています。

 進化論を唱えたダーウィンの言葉として「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるでもない。唯一生き残るのは、変化できる者である」が有名です。ただ実際には、これはダーウィン自身の言葉ではないとの指摘もあります。

 この言葉を唱えたのが誰かはさて置いても、この言葉はビジネスにも相通じるものがあります。マーケットは常に変化しています。カスタマーニーズも変化しています。当然、そのニーズに応えるためのサービスの在り方も変化しています。従って、ビジネスに携わる者も常に、アップデートし続けなければ、これらの変化に対応できないのです。

 人間は、それまでに培った知識や経験、スキルなどの枠の中でしか、物事を理解したり、認識したり、思考を巡らせることができません。つまり、この自らの枠を広げるためにも、常にアップデートし続けることが必要ということになります。その手段として、人材育成や研修というものがあります。日常の業務に唯々忙殺されて、使い捨ての労働力になってしまうのは、企業にとっても社員にとっても良いことではありません。

 日常の業務もしっかりとこなしながらも、少しずつでも学びの時間を確保していく、そんな仕組みがあったら良い、と私は考えています。そんな社会人のための学び舎が、これから必要になってくるのではないか・・・とみにそう思うのです。
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