計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

2022年8月3日の山形県置賜地方の大雨(2)

2022年08月17日 | 山形県の局地気象
 前回の記事の続きです。

 今回は、アメダス観測値を基に降水量と風の流れ(流線)の解析を試みました。これは不規則に散在するアメダス観測値をIDW(逆距離加重)法で格子状に規則正しく内挿・外挿して解析するものです。

 まずは、8月3日の山形県周辺の24時間降水量分布を解析しました。


 前回と同様に、山形県南部の置賜地方が明瞭な極大域となっています(手書きで書くよりも詳細な分布の特徴が判ります)。

 続いて、同日18時・21時の風の流線を解析しました。


 この結果、置賜地方で西寄りの風と南寄りの風の収束域が形成された後、村山・最上地方を経て庄内地方から海へ抜ける流れが現れました。

 西寄りの風に伴って、西置賜(小国周辺)は水蒸気の流入を直に受ける形となりました。そこからさらに、内陸の東南置賜(米沢周辺)まで進入したと考えられます。当時は前線の南側では西風も顕著だったため、海上で生じた線状降水帯がこの西風に伴って輸送されたと考えられます。

 一方、南寄りの風は標高の高い飯豊連峰(小国の南側)・吾妻連峰(米沢の南側)を乗り越える形となります。このため風下側の麓(米沢)では、フェーンやおろし風に伴う昇温や下降気流に寄与しやすい傾向にあります。このため、東南置賜付近では西風との間で収束域となり、その後は北に抜けていく形になったと考えられます。
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2022年8月3日の山形県置賜地方の大雨

2022年08月04日 | 山形県の局地気象
 2022年8月3日は山形県内で大雨に見舞われました。さらには、一時的に大雨特別警報が発表されるに至りました。まずは、被害にあわれた皆様に、お見舞いを申し上げます。


 雨の状況を概観するために、この日の山形県内の24時間降水量の分布を見てみましょう。山形県南部の置賜地方が明瞭な極大域となっています。例えば、南東部の米沢では239mmが観測されています。


 参考までに米沢の平均的な雨温図を見てみると、夏場は1か月で150mm程度の降水です。1日の間に1か月半の雨に相当する降水があったことになります。



 この大雨の背景として、梅雨末期のような前線が山形県置賜の北側に停滞したことが挙げられます。その上空では南西から暖かく湿った空気も流入し、大気の不安定化が進みました。これに伴い、水蒸気も持続的に供給され湿潤場が形成されました。



 また、前線の停滞位置が、山形県置賜地方から見て「佐渡島2~3個分だけ」北側であったことも大きな要因の一つです。一般的な梅雨前線の構造を考えると、前線から見て「佐渡島2~3個分だけ」南側が前線帯の南端に相当し、この付近で対流活動が活発になります。この条件下で海上において何らかの形で収束を生じ、線状降水帯が発生したと考えられます。

 前線の南側では西風も顕著で、海上で生じた線状降水帯が内陸まで進入しました。このような場合、朝日・飯豊の両連峰で雲の進入に歯止めが掛かることも期待されます。しかし、夏場の対流雲は特に上空まで発達する(背の高い雲となる)ため、この歯止めも効きにくかったようです。この結果、西置賜から東南置賜まで大雨の範囲も拡大しました。
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