計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

10年ぶり、2度目の受賞

2017年08月03日 | CAMJ参加記録
 今年の2月の(一社)日本気象予報士会(CAMJ)の第9回研究成果発表会にて発表した研究「山形県内の冬季降水域および気温分布に関するニューロ・モデルの独自開発」に対し、「木村賞」という賞を賜りました。


 この賞は、CAMJ会員が行った「優れた研究成果」に対する賞とされています。先月6月17日のCAMJ定期総会の場で表彰式も行われ、会長から直々に表彰状記念メダルを賜り、併せて受賞記念講演の機会を頂きました。ちなみに、今年度の受賞者と表彰式に関する紹介は、CAMJ会報「てんきすと」107号(7月号)の紙面に掲載されています。また、次号108号(9月号)には、私のこれまでの研究の取り組みに関する記事も掲載される予定です(多分)。

  

 一連の表彰に関する正式発表は6月17日の表彰式でした。とは言え、当日の総会・表彰式に参加されたのはCAMJ会員のごく一部という事もあり、会報7月号を通じて、会員に皆様への周知されるのを待って、本ブログ上での御報告と相成りました。本日(8月3日)、今回の会報の発行が確認された(=私の所にも会報が届いた)ことを受けて、ようやくこの場での御報告に至りました

 実は、10年前にも、研究論文「熱輸送を伴う3次元乱流数値シミュレーションを用いた山形県置賜地方における冬季局地風の解析」を提出し、同じ賞を受賞しています。

 これまで、山形県の冬の気象特性に関する研究は、観測データの分析を踏まえつつ、「3次元熱流体数値シミュレーション」と「ニューラルネットワーク」を2種類の数値モデルを独自に構築し、これらの数値シミュレーションを軸に展開してまいりました。前者は10年前、後者は今回の受賞テーマとなりました。

 一連の取り組みを通して、気象予報士として「地域気象」に取り組む、一つの「モデルケース」を示すことが出来たのではないか、と感じております。

 約20年に渡る山形県の冬の気象の研究も、これで一つの大きな節目を迎えることができました。しかし、これはあくまで「節目(コンマ)」であって「終結(ピリオド)」ではありません。また、これまでに培ったノウハウを応用して、新たなテーマにも取り組んで行きたいと思っています。
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日本気象学会誌「天気」7月号に掲載

2017年08月01日 | 何気ない?日常
 昨日(7月末日)、(公社)日本気象学会の機関誌「天気」7月号が届きました。この中で「降水日数を指標とする天候デリバティブの価格付けに関する検討」と題した私の「調査ノート」も掲載されています。


 2月には(一社)日本気象予報士会の研究成果発表会で「降水日数を指標とする天候デリバティブのプレミアム算定の試み」と題した研究発表を行いましたが、この内容をさらにアップグレードしたものを、学会誌「天気」に投稿したものです。

 さて、広く知られている事と思いますが、気象条件の影響を受ける事業は少なくありません。そのような事業において「気象情報・気象データの活用をどのような形で進めて行けば良いのか」は重要な課題です。

 現在では、気象予測を基に商品の発注・在庫管理を行う「ウェザーマーチャンダイジング」は広く知られておりますが、この他にも、ロジスティクス(物流・商品の輸送など)も影響を受けます。特に大雨や大雪の際は商品が販売店まで届かず、販売期間の損失につながることもあります。

 また、気象予測を販売管理に活用できるのは、あくまで(意思決定から結果が出るまでの)リードタイムが「短期」のものに限られます。リードタイムが「長期」のものになればなるほど、気象要因の不確実性の増大に伴い、商品需要や売行などの予測も難しくなります。

 そこで、予め想定される悪条件が実現した場合のネガティブな経済効果(天候リスク)に対して保険を掛ける意味で「天候デリバティブ」という対応策が選択肢として浮上します。これは厳密には「保険商品」ではないのですが、リスクマネジメントの一環(リスクの移転)として活用できる店頭デリバティブとして金融商品化されています。

 そして、天候デリバティブに限らず、デリバティブ取引は「金融工学」を基に開発されています。つまり、天候デリバティブを理解するためには、少なからず金融工学を学ばなければなりません。

 金融工学と言いますと「株価などの金融資産を上手に運用してお金儲けする」というイメージがありますが、その本質は「不確実性を伴って時間と共に変動する数量の振る舞いについて、確率論的にアプローチする」ことにあります。

 金融資産に限らず、気温や風をはじめとする気象要素もまた「時間と共に変動する数量」であり、予測対象の時期が将来であればあるほど「不確実性が増す」という点も似ています。

 従って、金融工学の手法(Black-Scholesモデルなど)をそのまま気象予測に適用することはできないとしても、金融工学の発想や考え方(仮定の立て方やモデリングなど)から学べるものはあるのではないか、と感じています。
コメント (2)
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