計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

ウェザー・クオンツ

2017年12月23日 | 経済・金融気象分野
 年末のこの時期、あちこちから「金払えー!」の便りが届きます。「(電気料金などの)請求書」や「(所属団体の)年会費」という類です。決して、怪しい話ではありません。ただ、この手続きを行うことで「年の瀬」を実感しております。

 「お金」に関する話のついでという事で・・・昨年から今年にかけては「金融工学」を勉強してきました。金融工学に対しては、(気候変動などに伴う)経済的なリスクを定量的に評価する手法として興味を抱いておりますが、その重要な担い手となる専門職「クオンツ」についても関心を持っています。もちろん、いまさら「気象予報士」から「クオンツ」に転職しようという話ではありません。むしろ、「クオンツ」という専門職が現れた背景に興味があります。

 さて、「クオンツ」とは、「数量的、定量的」を意味する単語「Quantitative」から派生した言葉です。高度な数学的手法を用いて様々な金融市場や投資戦略を分析したり、デリバティブなどの金融商品を設計・開発する専門家です。ある時は複雑な数式を操り、またある時はプログラミングを行ってコンピュータで計算シミュレーションを行います。その基本となるのは確率論や金融工学の理論です。

 クオンツの起源は、1980年代のアメリカでNASAのロケット工学の分野に関わっていた科学者が金融分野に転身した事と言われています。彼らは、持ち前の数学や物理学の理論を金融の問題に応用して、金融工学の様々な数理モデルやデリバティブ取引などの理論を開発していきました。現在、金融工学の理論に物理学の理論が活かされているのは、この名残と言っても良いでしょう。例えば、有名なブラック・ショールズ方程式を導出するに際しては、熱伝導方程式を解く必要があります(この他にも別の方法もあるようですが)。

 改めて考えてみると、お金(経済学)の問題を解決するために、わざわざ物理学の方程式を解くというのも変な話です。しかし、そこが面白い所です。(畑違いの)経済学の問題に対して、科学者(数学者・物理学者・工学者)がその(異分野の)専門知識を使ってアプローチしているのですから。私が日々取り組んでいることも実は同じようなものだと気付いたのです。

 私はもともと「気象学」の専門ではありません。ちょっと大げさに言えば「工学者(工学屋)」です。それこそ畑違いの気象学の問題に対して、機械工学(主に熱流体工学)や情報工学(主に人工知能)の専門知識を使ってアプローチしているのです。気象に関するデータを「工学屋のやり方」で分析し、どローカルな気象の予測モデルを設計・開発しているわけです。言ってみれば「気象版クオンツ」もとい「ウェザー・クオンツ」みたいなものです。

 若かりし頃は、数学の授業を聴きながら「こんな数学を学んでも、社会の何に役に立つんかな~~」と思っておりましたが、いやいや・・・「めちゃくちゃ役に立ってるやん!!」と今更のように実感しております。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする