計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

山形県内における冬季気象の3次元解析の試み

2022年10月11日 | 山形県の局地気象
 つい先日に「ニューラルネットワーク」の話題を掲載したばかりですが、今回は「熱流体数値モデル」の話題です。

 遡ること「7年前」の2015年2月に「山形県内における降雪域形成の数値シミュレーション」と題して研究発表を行いました。この中では、冬の北西季節風が弱い場合と強い場合の山形県内の降雪域の分布の違いについて明らかにしました。

 (左:季節風が弱い場合 右:季節風が強い場合)

 この時点では、計算自体は3次元で実施していましたが、可視化は2次元に留まっていました。

 今回はこの数値モデル(2015年版)の計算結果を基に「3次元アニメーションGIF」を作成しました。下記の画像では凝結域が白く表示されます。

 アニメーション下の「(拡大)」をクリックして頂くと、各図単体の拡大版が表示されます。凝結域(白い所)の分布を見ると、季節風が弱い場合は海側に揺り戻しが起こる様子が現れています。一方、季節風が強い場合は風下側に広がります。季節風の強弱の条件に応じて違いが見られます。

 元々の数値モデル(2015年版)はFortranで開発しましたが、後にC#に移植しました(計算手法・アルゴリズムはそのまま)。また、3次元画像はpythonプログラムでmatplotlibを操作して描画しました。ここまで実現できて、ようやく「3次元モデル」ですね。
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学会誌9月号届く

2022年10月04日 | 気象情報の現場から
 昨日、(公社)日本気象学会の機関誌「天気」9月号が届きました。

 今回、私の調査ノート「ニューラルネットワークを用いた山形県内の気温および降雪量の予測実験」が掲載されています。実に7年振り・2報目の「ニューラルネットワーク論文」となりました。

 これまで「ニューラルネットワーク」を用いた気象モデルの研究を報告してきましたが、その全てにおいて入力値・出力値共に「観測値(を基にしたデータ)」を使用しておりました。このため局地予報への応用の観点から、入力値に「数値予報データ(GPV)」を用いた取り組みについての期待も頂いておりました。しかしながら、「ニューラルネットワーク」の技術的な課題に直面しており、なかなか「この壁」を超えることができませんでした。

 そもそも「ニューラルネットワーク」を構成する素子「人工ニューロン」は「0」と「1」のデジタル信号を扱います。実際には活性化関数に「シグモイド関数(連続関数)」を用いることで、「0から1の任意の実数」を取り扱うことができます。一方、現実問題として「気象パラメータ」の取り得る値は「0から1の任意の実数」の枠に留まりません。この両者の「折り合い」をどうつけるのが良いのか、これが長年の課題でした(実は今でも課題です)。

 この問題に対する「アイデア」を提示し、「実際に試してみた」のが今回の取り組みです。

 また、これまで「ニューラルネットワーク」は基本的な「3層構造」を使用してきましたが、今回は新たに中間層の多層化を施した「4層構造」も導入しました。さらに、重回帰分析を用いた場合との比較を行いました。



 近年の学会発表(オンラインポスター)の集大成として、ようやく「調査ノート」として投稿・掲載に至ることができました。なお、オンライン「天気」における一般公開は、半年後になるそうです。
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