計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

タウン情報誌が来ました。

2006年08月26日 | 気象情報の現場から
 この度、地域のタウン情報誌で読者に近い世代(20代後半~30代前半)の人の仕事を紹介するコーナーがあるらしく「気象予報士」をテーマにしたい、という相談が、ウチの社長宛にありました。そこはさすがに社長です。こちらに何の相談も無く勝手に了承したのでありました。

 そんなことを知る由も無く、ある日の朝私が出社すると・・・見慣れない雑誌と資料が・・・「まあ、社長の置忘れだろう。いつもの事ながらしょうがないなあ・・・」と半ば呆れながらも、ご親切に社長の机に戻して置きました。

 ・・・しばらくして社長が出社してきて「あ、これ見といてくれや!お前へのプレゼント!」とまあのんきな事。だったら無造作に置くんじゃなくて「これ見ておけ」とメモの一つくらい置いといてくれないと・・・「いつもの置き忘れ」と間違えるでしょ!・・・と思いつつも、「何ですか、これ?」

 「あ~、取材の依頼だよ。30歳前後の気象予報士を紹介してくれと言うから、ちょうど良いのがいる!ってワケだ。確かにオレは渡したからな!後は宜しく!!」・・・はぃ?あとは丸投げですか?(しばし呆然)

 ・・・というわけで取材を受けるかどうかも含めて丸投げを受けたわけですが、勝手に断るとあとが怖いので、仕方なく?取材を受けることにしました。

 先方に連絡を取ると、しばらくして「取材依頼書」と「記入用紙」がFAXで送られてきました。取材依頼書にはどのようなことを取材するかが大まかに書いてありました。何と、写真撮影やインタビューもあり!仕事内容や日頃の心がけやら業務上の苦労話など・・・

 当日のアドリブで対応することが不可能と思われたので(要するに、日頃の業務があまりにも高度に専門的なので専門用語を使わずに説明する事はできない、と言う事です)事前に、インタビューへの回答資料を作成して、勝手に送りつけてやりました(私ってなんて優しくて親切なんでしょう!)。

 このインタビュー資料も、実はブログ「計算気象予報士が語るここだけの話」やメールマガジン「気象トレンド未来予報」の過去ログを基に作成し、A4版7ページに纏めました。ブログもメルマガもそれぞれ総量A4版で70ページ以上にもなるのでその中から面白い話題を抽出し、噛み砕いて解説するのは容易な事ではありません。しかしながら、全体像が見えるような資料にはなったかな。

 先方からも「しっかりした資料をお送り頂き大変恐縮しております」との返答がありました。ちょうどその頃、社内でもこの資料を皆で見ながら「これは先方もかなり圧倒されてるよ!今頃、恐縮してるかもしれないね~!」と大いに盛り上がっておりました(越後屋、そちも悪よのぅ・・・いぇいぇ御代官様程では・・・)。

 まあ、気象予報士の業務というと、どうしても華やかな「気象キャスター」位しか思いつかないと思われるので、少しでも予備知識をつけておいて欲しいという意図がありました。このような先入観を持ったまま取材に来られると、そのイメージを修正するだけでも一苦労なのです。

 なぜなら私の専門分野は、このような一方的なイメージをドラスティックなまでにブッ壊してしまうわけですから。

 取材当日、記者とカメラマンの二人連れで来社されました。さっそく、会議室で気象予報士の全体的な質疑応答が始まりました。ここで特に強調したのは「気象予報士の専門分野は多岐に渡る」と言う事です。

 その後、大きな机の上一面に実況天気図や数値予報図をバーッと広げて、これらの天気図から読み取れる気象場の説明を行いました。つまり、どうやって予報を行うか?の説明のためです。この時点でそうとう圧倒されている様子

 で、これで終わるワケにはいきません。「このような天気図だけでは局地的な天気の動きを予報するのは不可能」と言い放ち、これらの天気図の基となる数値データを、弊社独自に分析した知見を組み合わせて局地的な予報を行う必要がある、とつなげる訳です。「この部分が気象情報会社の独自のノウハウとなるものです!」と言えば、先方は半ば呆然。この時点で既存のイメージは大きく崩壊した様子。

 そしてお次は会議室からオフィスに場を移して、コンピューターシミュレーションを次々と見せていきます。「天気図から大気の全体像が浮かび上がるがそれを基に、その時の局地的な大気の動きを予測するために独自のシミュレーション技術が必要となる。私がやっていることは、局地予報の理論的研究なのだ」と力説。

 続いて写真撮影。仕事の様子や研究に使う道具や資料の撮影ですが、資料のほとんどは、連立非線形偏微分方程式のオン・パレード!「こんな資料を一杯集めて研究されてるんですね」と感心する記者の言葉に、「あ、それは全て私が書いた資料です」(爆)。これでカメラマンの方も「ウッ!」と絶句。

 気象予報士がいかに高度な技術をもとに独自の局地予報を出しているのかが大変よく理解して頂けたものと確信しています。ただ、あまりにも高度に専門的であるが故に、果たしてこれを記事に書くことができるのかどうか・・・・それが問題だなあ。

 そんな私に向けられた最後の質問は「気象予報士とは一言で言うと何ですか」私はいつもの言葉で締めました。

 「気象予報士とは局地気象のエキスパートです。
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台風は遠くへ・・・

2006年08月09日 | 気象情報の現場から
台風も過ぎ去って、も~~い~くつ寝~る~と~、な~つ~や~す~み~♪ってな人も少なくないのでは?

私も友人・知人に聞いてみた所、この週末から夏休みという人がほとんどでした。中には、全社一斉の休暇を定めない(連休をどこに持ってくるかは各自決めなさい)という会社もあるようです。

いいな~ぁ・・・こちらは予報提供先が夏季休業となるので、その間は予報だけは休みになるのですがっ!しかし監視業務があるので休暇は取れません。相変わらず鎖で首輪をつながれた番犬の状態ですワン!

まあ、さすがに「犬」と言うのは悲しいので、せめて「天気の番人」位にしておこうか(ちなみに「憲法の番人」と言うと最高裁判所大法廷を思い浮かべますが・・・)。

さて、昨日と今日と連続で局地予報(さらに実況監視)の担当に当たっている私ですが、予報を出す際のプレッシャーは相当なもの・・・と昨日書きました。しかも、いつも以上に難しい判断を要求されました・・・。こういう局面も何日かに1回位の割合であるんですよね。

あ!明日は計算シミュレーションの打合せ・・・最近、停滞してるんだよなぁ・・・。今からでも準備しなければ・・・。

2週間に1日で良いから、な~んにも考えないで、の~んびりできる日が欲しい。
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台風接近

2006年08月08日 | 気象情報の現場から
台風7号、9日朝にも東海地方へ (朝日新聞) - goo ニュース

いよいよ、今年はじめての台風上陸の可能性も出てきました。今回の台風の動向はなかなか予想が難しいです。

私の職場は局地予報の会社なのである程度「限定された」範囲における気象を予測するわけですが、降水一つとってもみても、降るか降らぬかの境界線上に当たっているだけに・・・なるほど、これは難しい

しかも、よりによって私が今日と明日の担当に当たってしまったので、周囲は嬉しそうに(そりゃそうでしょう)「○○さん、(←つまり私ですね)プレッシャー掛けるつもりじゃないけど今日は宜しく頼みますよ!」と、ありがた~い言葉を掛けてくれるではありませんか。

プレッシャー掛けるつもりじゃないけど・・・ってしっかりプレッシャー掛かってます。それにしても台風自体のサイズも微妙な大きさなので、(私が予測する地域は)降るのか降らないのか・・・参考までにチラチラ見ている気象台の予報もなんだか賑やかに七変化(?)しているような気がします(もしかして錯覚?)。それだけ読みが難しいと言う事か・・・。

皆さんの地域については、気象庁や民間気象情報会社などが運営している気象情報サイトや各種メディアなどを参考にして下さいね。こまめに最新の予報をチェックした方が良いでしょう。
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台風のような日々だったあの頃

2006年08月07日 | 気象情報の現場から
だんご3兄弟なら可愛いけれど・・・こっちは台風3兄弟と言った所か?

台風7、8、9号が発生 四国・九州に接近も (朝日新聞) - goo ニュース

何とも豪華絢爛ですねぇ~・・・台風が3つも。上陸の可能性があるので、油断できません。しかも予報円がデカイので今後の進路如何で予報が難しくなりそう。皆さんも最新の台風情報をこまめに確認して下さいね。

・・・そういえば前の職場も台風のような日々でした。また、いつものようにgooニュースを見ていたら、過去の思い出がフラッシュバックしてきました。


「心の病」抱える社員が増加、30歳代が6割 (読売新聞) - goo ニュース

 現在、6割を超える企業で「心の病」を抱える社員が増加傾向にあり、風通しがよく、何でも相談しあえるような職場環境作りが急務とのことです。

実は、タイトル見ただけで・・・「あ~、わかる~ぅ」って思ってしまいました。

30歳代と言えば、やはり色々な意味で中核となるだけに重圧が掛かるのかも知れません。私の場合は、年齢的には30歳になったばかりですが、前職では本当に心身ともに疲弊しきっていたと述懐しています。

ましてや、家庭があれば家庭を養っていかなければならないという重圧があり、かといって独身貴族であれば、家族・親戚からの結婚はまだか?子供はまだか?と言った重圧があるわけです。そしてそれ以前に業務面でも最前線に立って活躍しなければならないというプレッシャーがあるでしょう。その肩にのしかかる責任はとても重大でしょう。

例えどんなに辛くても、最後に頼れるのは自分しかいない。それでも、精神的な支えがあるのと無いのでは天と地の差があります。それは時に友人であり、恋人であるかもしれない。良き同僚仲間であれば尚のこと心強い。もちろん、家族であるかもしれないが、時としては家族でさえも「追い詰める側」になってしまう・・・と言う事も少なくない。最も、家族が支えになればこれ程心強い味方はいないのですが、家族が追い詰める側の存在になっては、心が癒される事はないのです。

かつて梅森浩一氏の「クビ論」という本を読んだ事があります。いまこの本は手元にはありませんのでウロ覚えですが、印象的な話題があります。確か、この本の最後辺りにあった話ですが・・・

一家の大黒柱であった父親がリストラに遭い、専業主婦の妻や学校に通う娘を養うために必死で再就職活動をするというドキュメンタリーがあったようです。父親は何社も就職面接を受け続けます。ランチは一人で公園のベンチに座って菓子パンと牛乳。そんな父を妻と娘は「お父さん頑張って」と応援していると言うものです。

これだけ見ればリストラの厳しい現実に負けない美しい家族愛で片付けられますが、著者は問題提起をしています。「なぜ、父親だけが頑張らなければならないのか」一家の危機的状況なのだから、専業主婦の妻がパートに出るなり、娘もアルバイトをして家計を助けるなり・・・なぜしないのか?「お父さん、頑張って」だけでは結局のところ父親を追い詰めているだけではないか。なぜ、助け合おうとしないのか!

また、話題は変わりますが、職場の労働環境の悪化で疲労しきっており、本人は転職しなければやっていけない状況であっても、家族が理解を示すことなくその転職に反対することもあるでしょう。もしくは、世間体のためだけに転職に反対する人もいるでしょう。

グローバル・スタンダードが進んでいる現在、メガ・コンペティションという言葉が飛び交うこの時代、心の風邪の一つや二つあるでしょう。「心の病」までは行かなくても心に疲れを感じる人は決して少なくないはずですし、それ自体は責められる事でもなければ、恥ずかしい事でもないのです。だからと言って「勲章」といって賞賛するものでもありません。かつての私も何度もありました。

時として試練を乗り越える事は必要です。しかし、ただ辛さに耐える事だけが乗り越えることではないと思います。真剣に状況と向き合い、そのなかでどのように悩み、どのように解決の途を見出すかが大切なはず。

精神的に支えてくれる存在は、健全かつ常識的な存在であれば何でも良いと思います。かつて前職の頃は、関連子会社から親会社(=グループ本社)への派遣という形態だったので、それはもう無茶苦茶で過酷な日々でした。それでも何とかやってこれたのは、同じ子会社から派遣で来てくれた良き先輩がいてくれた事が大きいです。やっぱり同じ境遇ということもあり、苦楽を共にしたものです。最近は、なかなか連絡もまばらになっちゃいましたけど、それでも今でも私は感謝しています。

そして、アンビジョンであり強烈なまでの信念でした。絶対に自分はこのままでは終わらない!そんなこんなで、ひょんなことから?今の会社と出会えた事ですね。私の場合、子会社そのもの(というより原籍部署)の存続に関わる重大な計画が発表されたのを受けて正式に退職を決意するに至りました。

そんなわけで、不遇の時代に自分を支えたのは、共に苦労を共にした子会社の皆様であり、転職の扉を開いてくれた今の会社であり、何より決してあきらめない自らの信念だったのだと思います。

さて、今はどうなんだ?という話になりますが、計算シミュレーションも結構苦戦しています。プレッシャーはありますよ。特にクライアントに対して予報を出すときのプレッシャーは恐ろしい位です。これについてはまた別の機会に書きましょう。でも、辛いという重圧ではなく「オレはやったるで~、いまに見ておれや~」ってな感じです。

同じ重圧でも、ネガティブなプレッシャーとポジティブなプレッシャーがあるのかもしれません。もしくは、かつての壮絶な体験があったから、今をポジティブに捉えられるのかも知れません。

辛い時に「辛い」と言える環境があるだけでも、心の健康は違ってくると思います。辛くて苦しいと感じる事は、決して恥ずかしい事ではないのです。なぜなら、それは自分がそれだけ頑張ったからなのです。頑張らなければ悩む事も苦しむ事も無いでしょう。私の好きな言葉で締めくくろうと思います。

何事も『適度に』頑張るようにね!頑張るのは良いけど『適度に』

 前職の頃、原籍子会社の先輩技師が本社に出張してきた時に、疲弊しきっていた私に言った言葉です。この先輩は出張の度に、飲みに連れ出してくれました。地獄の日々の中のつかの間の安らぎの時でした。

今日の記事は、おそらくこのブログ始まって以来の3000文字超えを記録しました。こんなに超長文にお付き合い頂きありがとうございました。
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梅雨が終わり、夏到来

2006年08月02日 | 気象情報の現場から
東北地方が梅雨明け 列島、長い雨の季節終了 (共同通信) - goo ニュース

 気象庁は2日、東北地方が梅雨明けしたとみられると発表しました。これで梅雨のない北海道を除き、日本列島全域で梅雨が明けたことになります。ようやく忌々しい梅雨前線の呪いから開放されたわ。

 学校はもう夏休みも真っ盛り、と言ったところでしょうか。社会人の方の多くはまもなくお盆休み・・・という事でそろそろ帰省や家族旅行の準備も始めている頃でしょうか。ま、私には関係無いんですけどね(爆)。何を隠そう、まだまだ24時間気象監視体制は続くのです。

 ん?24時間?♪うごき~ はじ~めた~ きしゃの~ まどべを~~・・・それは24時間テレビなんですが、これが終わると今度は、♪なつが く~れば おもいだす~ よほうししけん~・・・ん?一部歌詞が違うようなf(^^;)まあ、8月の終わりにはまたあの試験ですよ。そうです、泣く子も黙る?気象予報士試験です。もう何回目になるんでしょう。受験生時代は、こんなの人間が受ける試験じゃないってな感じに(要するに難しい)思っていましたが・・・f(^^;)

 まあ、最近は試験問題もほとんど見ませんが・・・試験で勉強した事が基礎になっているのをつくづく実感しています。実技試験では(最近はどうかは分かりませんが)、資料をもとに記述(プチ論述)する形式ですが、要は様々な角度から大気の状態を分析して得られた知見(俗に言うキーワード)をどのように体系付けて理論的な予測見解を導くかが問われるわけです。私も、理論的に体系づけた考察を行うように心がけています(これがなかなか難しい)。

 実際には「結論」が最重要なんですが・・・そこに至るまでの考察過程を明確にして、それを文章なりメモなり形にしておくと、後で振り返った時に役立つんですよね。当たればマニュアルに、外れればケーススタディの教材になるのです。どのデータから、何を、どのように、読み解くか・・・どのように考察していくか、数をこなす中でノウハウを積み上げていくしかないのです。

 局地気象は半端じゃなく難しいです(だからニーズがあるわけですが)。突如としてムクムクと雲が湧いてきます。夏場は高気圧に覆われて晴れ易いのですが、返って気温が上がりすぎて雷雨が発生しやすくなります。梅雨時もたまにこのようなケースが見られて、大雨になるのかどうかと判断に苦慮しました。それ以上に梅雨前線上の雨雲の挙動には悩まされました。まだまだ気苦労は絶えないようです。

 というわけで、私に夏休み等というものはありませんから・・・。ざんねーーん!!
 (そういえば「ざんねーーん!!」のギター侍は最近どうしてるんだろう?)
 
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