計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

モンスーントラフ と モンスーンジャイア

2024年08月07日 | お天気のあれこれ
 この記事を書いている2024年08月07日の時点で、日本の南海上には2つの熱帯低気圧が確認されています。梅雨が明けて、本格的な夏を迎えました。これから気になるのが、熱帯低気圧や台風です。

 熱帯低気圧や台風の発生するメカニズムは多様ですが、日本の南側の海上に見られる「モンスーントラフ」や「モンスーンジャイア」の動向も重要なカギとなります。

 日本の南側の海上では、まず南西から季節風(モンスーン)が流れ込みます。一方、太平洋高気圧の縁辺を回るように貿易風(東風)も流れ込むため、2つの流れが収束します。そこで形成される低圧部のことを「モンスーントラフ」と言います。この海域では熱帯低気圧や台風が発生しやすいのが特徴です。

 このモンスーントラフにおける低気圧性循環が成長することで、閉じた等圧線で囲まれた同心円状の低圧部(※)を形成することがあります。これを「モンスーンジャイア」または「モンスーン渦」と言います。この閉じた等圧線の直径は約2500kmにも及びます。また、モンスーンジャイアに伴う雲は、渦の中心から離れた東縁部~南縁部に形成されます。


 また、モンスーンジャイアと似た現象に「モンスーン低気圧」があります。こちらも閉じた等圧線で囲まれた同心円状の低圧部(※)となりますが、その直径は約1000km程度です。また、中心付近に対流活動を持たず、全体としてドーナツ状の雲分布を持つのが特徴です。

 いわゆる「台風」は中心付近で対流雲が組織化されるのに対し、「モンスーンジャイア」や「モンスーン渦」は中心ではなく周辺部で対流活動が活発になる傾向があります。

(※)実際の天気図上は、必ずしも綺麗に「閉じた同心円状」になるとは限りません。
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