計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

第9回日本気象予報士会研究成果発表会にて成果発表しました

2017年02月27日 | CAMJ参加記録
 先日2月25日は、(一社)日本気象予報士会・第9回研究成果発表会に参加してきました。


 こちらがその会場です。

 当日は受付で綺麗に製本された「予稿集」頂き、その中に自分の予稿が含まれているのを手にした時は、ちょっと感動しました。

 また、懐かしい再会もあり、有意義な一時となりました。

 今回は次の2件の研究成果について報告・発表を行いました。

(1) 山形県内の冬季降水域および気温分布に関するニューロ・モデルの独自開発


 人工知能の基礎としても知られる「ニューラルネットワーク」を気象データの分析に応用して、山形県内の局地気象特性を明らかにしようと試みました。プログラムの部品に相当するニューロンの配置や入出力の変数変換など様々な工夫が必要であり、試行錯誤の末にようやく一筋の成功を得たものです。

 この研究も、開始してから約10年以上掛かって、漸くここまで到達しました。実際には途中で3~4回ほど投げ出しており、その度に1~2年の空白期間を置いて、新しいアイデアが浮かんだら再開して、また失敗して投げ出して・・・を繰り返してきました。

 今回はニューラルネットワークを用いて気象データを分析して結果を出せる段階に至った事それ自体と主題としました。この他に行ってきた熱流体数値モデル(LES)による数値シミュレーションなど、様々な解析結果と合わせて検討することで、「気象学的メカニズム」の考察を行っていくことも、今後の課題として取り組んで行きたいと考えています。


(2) 降水日数を指標とする天候デリバティブのプレミアム算定の試み


 予め指定された期間における土日祝の降水日数が一定値を超えた場合に、その超過分に対して補償金が発生するような金融デリバティブ商品を想定し、その契約料(プレミアム)の試算を行いました。プレミアムの算定は、単に金融商品の「値付」に留まらず、「天候リスクに伴う経済効果の評価」という意味を持っています。

 一方、現実問題として、天候デリバティブは90年代後半に始まって以来、なかなか産業界での活用・普及が進んでいないように見受けられます。その背景には様々な課題があると思いますが、理論的な側面から言えば、そもそも「天候デリバティブ」自体、実務が先行していて、理論が追い付いていないことも一因かと思います。

 オプション取引などのような貨幣に伴う金融資産に基づく理論を、無理矢理に気象要素に当てはめるという、いわば「木に竹を接ぐ」ような手法が用いられるなど、まだ開拓が進んでいない側面が多々あります。さらに、様々な産業において天候リスクが定量的に認識されるまでには、まだ時間が掛かるかも知れません。
コメント
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