計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

最高気温の元・王者の貫録

2014年07月26日 | 山形県の局地気象
 今日は暑かった。山形県も非常に暑かった。
 1933年7月25日に観測史上の最高気温(当時)となる40.8℃を観測して以来、2007年8月16日までの74年間、その記録を守り続けてきた伝説の地「山形」。今日の最高気温も13時の37.1℃

 まずは、今日の13時の山形県内のアメダス気温を見てみましょう。全体的に真夏日のようですが、内陸部と酒田・鶴岡では猛暑日になっていました。



 続いて、13時に観測された気温の平均値の空間パターンを見てみましょう。ここでは海面を基準とする各地点の標高に応じて6.5×10-3[℃/m]の気温減率を用いて補正を加え、その空間平均(21地点平均)からの偏差を示しました。この操作により、相対的に温度の低い空気と温度の高い空気の分布の偏りを知る事が出来ます。


 庄内平野も鶴岡の辺りで気温が高いのが目立っていますが、内陸では米沢─高畠─山形の辺りで特に気温が高くなっている傾向が見られます。このエリアは特にフェーン現象による昇温の影響が現れやすいようですね。また、盆地になっているので、一旦流れ込んだ暖気がそのまま停留しやすいことも昇温に拍車を掛けている可能性が考えられます。

 暑い日は熱中症に気を付けましょう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

つかの間の休息

2014年07月12日 | 何気ない?日常
綺麗に晴れた青空の下、緑色が輝く公園の片隅に腰かけて、柔らかいそよ風に吹かれながら・・・



美味い缶コーヒーを飲む・・・至福の時。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本気象学会・機関誌「天気」6月号に掲載されました。

2014年07月06日 | 山形県の局地気象
 待ちに待った、日本気象学会・機関誌「天気」6月号が届きました。
 6月号には私の「山形県における冬季の降水域形成の数値実験」と題した調査ノートが掲載されています。

  

 今回も「天気」編集委員会の皆様には大変お世話になりました。エディターさんの丁寧なアドバイスやコメントに支えられ、さらに月当番の校正委員さんや編集書記の皆さんにも締切直前まで原稿を確認して頂き、ようやくこのページが出来上がりました。今は感謝の想いで一杯です。綺麗にレイアウトされ、印刷・製本されたページを見ると、とても感慨深いものがあります。

 さて、今回の内容は、5年前の2009年に掲載された「3次元熱流体数値モデルの独自開発 ─山形県置賜地方の冬季局地風への適用─」の続編です。

 前回は「熱と流れの理想実験(数値実験)」だったのに対して、今回はさらに「凝結・降水過程の考慮」にトライしてみた・・・というものです。ここまで到達して、いよいよ「局地気象の数値モデル」らしい感じになってきたな・・・と言うのが率直な感想です。

 2009年以前から、山形の冬の気象にアプローチする上で「季節風の強弱」が重要なファクターという事は感じていました。そして、2009年の段階で「熱と流れの数値シミュレーション」により、「季節風の強弱」による「局地風系の違い」は描き出すことが出来ました。この次はやはり、その風の流れの違いによる「降雪域の広がり方の違い」を描き出したい・・・と思ってきました。その想いがようやく実現しました。

 思えば、私が気象予報士になったのは、大学工学部4年に進級する直前(1998年3月上旬だったので)。当時は、機械工学を専攻していました。当時、気象予報士になった直後にふと思ったのは、晴れて合格した後で「局地気象に対してはどのようにアプローチ(勉強)すれば良いのか?・・・」という事です。気象予報士の試験勉強を通して「天気図などの気象資料」の読み方は学びます。しかし、果たして「そのような天気図を分析しただけで、山形県置賜地方の局地気象がわかるのか?」ということです。

 そもそも「局地気象(=当時は山形の気象特性)はどのように学んでいけばよいのか?」ということが分からず、またモデル・ケースも見当たらなかったのです。

 そこで、あれこれと「手探り」が始まります。まずは天気図を基に日々の予想から始めてみます。そうすると地元の冬のある事に気づきます。それを突き詰めると・・・どうやら「季節風の強弱」が重要なファクターであると感じました。

 今度はそのメカニズムを理論的に考察し、概念モデルの構築を試みます。当時はその様子をホームページに書き綴っていました(※現在、このホームページはありません)。当時は、LESやRANSと言った乱流解析はもとより、簡単なCFD(計算流体力学)の技術さえも持っていなかったので、大気の流れを質点力学でモデル化しようとしていました。

・・・あれから十余年。

 局地気象へのアプローチを続け、今ではその結果を学会の大会の場や学会誌上で発表しています。これらは全て「(地元の)局地気象はどんなふうに学んでいけばよいのか?」と言う、過去の問いかけに対する、自分なりに辿り着いた「答え」でもあります。

(p.s.)
 この調査ノートがオンライン「天気」上で公開されるまでのは約1~2ヶ月後になります。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

バックビルディング型の線状降水帯

2014年07月04日 | お天気のあれこれ
 集中豪雨が発生するメカニズムとして注目されるのが「バックビルディング型」の線状降水帯です。通常、積乱雲は雨を降らせると消えますが、同じ場所で連続して発生し、上空の風に流されると、積乱雲が線状に並び、風下では雨が降り続けるのです。



(イ)すでに対流雲(積乱雲)①が存在し、活発な対流活動を伴っています。



(ロ)対流雲①は風下に流されます。また、対流雲①からは冷気外出流が吹き降りて、下層の風との間で収束します。この収束域では新たな上昇流場が形成されます。



(ハ)新たな上昇流場に伴って対流活動が活発になり、そこには新たな対流雲②が発生します。



(ニ)対流雲①と②は風下に流されます。対流雲②から冷気外出流が吹き降りて、下層の風との間で収束します。この収束域では新たな上昇流場が形成されます。



(ホ)新たな上昇流場に伴って対流活動が活発になり、そこには新たな対流雲③が発生します。



 このような過程を繰り返すことで、対流雲が連続的に発生し、上空の風によって下流側へと流されていきます。まるでベルトコンベアーに乗っている品物のようにも見えます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

湿舌と梅雨前線

2014年07月04日 | お天気のあれこれ

 梅雨前線の動きも活発になってきました。

 この時期になると「湿舌」と言う用語を良く聞くようになります。私もお世話になっている、日本気象学会の機関誌「天気」の2010年12月号に、新用語解説「湿舌」が掲載されています(http://www.metsoc.jp/tenki/pdf/2010/2010_12_0043.pdf)。

 この「湿舌」という言葉は、高層天気図上で「梅雨前線の南側沿いに、水蒸気を多量に含む温かい気流(湿暖流)が舌状に張り出している部分」を指して言われることが多いように感じます。しかし、厳密な定義は「梅雨期の高度3km付近に現れる梅雨前線帯に沿った舌状の形をした湿潤な領域。前線帯での対流活動の結果として上空に下層の水蒸気が運ばれることで形成される」とされているようです。

 この湿舌がどのようなプロセスで形成されるのか、絵に描いてみました。


(1)下層では、南側の温暖・湿潤な気団からの流れと北側の相対的に低温で乾燥した気団からの流れがぶつかるところで収束帯(梅雨前線帯)を形成されます。一方、上空では西風が流れています。


(2)下層の収束帯付近では次第に上昇流場が形成されます。


(3)収束帯の南側から、南風に乗って水蒸気が(水平方向に)輸送されます。この水蒸気はこのまま上昇流に乗って、さらに上空へと(鉛直方向に)輸送されます。これに伴って、対流雲が形成され、または発達します。


(4)下層から熱や水蒸気が持続的に供給されるため、対流雲はどんどん発達します。また、上空に昇った水蒸気は、上空の西風に乗って東側に(水平方向に)輸送されます。また、集中豪雨を引き起こす水蒸気の大半は高度約1km以下の対流混合層内に蓄えられているようです。


(5)やがて上空では、周囲よりも湿潤な領域(高相当温位域)が東西方向の帯状に形成されます。これが高層天気図では「湿舌」として現れるのです。

 「湿舌が大雨をもたらす」のではなく、「湿舌の位置をもとに大雨となりやすい場所を読み解く」と考えるとわかりやすいかもしれませんね。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする