計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

高層天気図と上空の寒気

2005年12月29日 | お天気のあれこれ
 冬の大雪を予想する上で、上空の寒気の動きを把握することは必須となります。この時期の天気予報では「上空5000mで-30℃の強い寒気」と言った言葉が良く聞かれるようになります。このような上空の寒気は、ニュースや新聞で目にする天気図(地上天気図)では分かりません。上空の様子は高層天気図という資料を見ることになります。

 高層天気図は上空の天気図であり、地上天気図ではわからない気圧の谷や上空の風の流れや寒気・暖気の動きを知ることができます。地上天気図は海抜ゼロ(z=0[m])の等高度面における気圧分布を示したものですが、高層天気図は等圧面上(気圧が各々850,700,500[hPa] となる面上)の高度分布を示したものです。

 この違いのイメージを図にしてみました。地上には前線を伴った低気圧が解析されています。これは海抜ゼロ面(等高度面・平面)上の気圧配置です。そしてその上層の天気図は気圧が等しい曲面上の天気図になっていることがお分かり頂けると思います。

 気圧は空気の重さであるため、等圧面の高度の高い部分(ridge)は高気圧、谷底の部分(trough)は低気圧にそれぞれ対応しています。気象データを取り扱う上で、高層天気図の概念を理解することは重要です。

 冬の天気予報でよく用いられている指標は次の通りです。

・上空500hPa(約5000~5400m)で -36℃以下・・・大雪の目安
・上空500hPa(約5000~5400m)で -30℃以下・・・雪の目安
・上空850hPa(約1300~1500m)で  -6℃以下・・・雪の目安
・上空850hPa(約1300~1500m)で  -3℃以下・・・ミゾレの目安
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列車を横転させる横風とは?

2005年12月27日 | 気になるニュース
横風、盛り土で風が吹き上げ? JR羽越線事故 (朝日新聞) - goo ニュース

 山形県庄内町での列車事故・・・これから山形県に帰省する身にとっては人事とは思えません。被害に遭われた方々には心よりお見舞い申し上げると共に、亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。
この事故の原因については様々な見解が出されておりますが、どうやら突風による横風が有力な見方のようですね。
 記事に登場している大学の先生は40メートル以上の横風でなければ列車横転はないだろうとの見方を示しておられますが、付近の観測によれば20メートル未満だったとか?
ただ、観測の空白域だけに局所的な強風域が短時間だけ発生した可能性も否定できません。事故発生当時は吹雪や雷が激しかったことから対流雲(積乱雲)の存在が伺えますしこれにともなうダウンバースト(マイクロバースト)があったと考えると、局所的に40メートルを超える強風が一時的に発生したと考えることができます。

 さて、40トンという重量の列車を横転させるほどの風とは如何ほどなのかを、私も計算してみました。各パラメータと計算式は次の通りです。
θ:車両の傾斜角、M:車両の重量、g:重力加速度、h:盛り土の高さ、H:車高
V:横風の風速、L:車両の長さ、ρ:空気の密度

 V={Mg・sinθ / [ρL(H+h)] }^0.5 (式の導出過程は省略)

 これらの値について詳しいデータがあるわけではないので、あちこちで調べたり憶測で値を代入しています。仮に

M=40000kg
g=9.8m/s^2
h=1.0m
H=3.5m
L=24m/両
ρ=1.293kg/m^3

として、車両がθ=45°傾く場合、横風としてはV=44.55m/sという猛烈な風が吹きつけることになります。しかし、ダウンバースト(マイクロバースト)に伴う突風の場合、決してありえない数値ではないと思われます。

 観測網の盲点を付かれた形になったのかどうか・・・最終的には調査委員会の見解に委ねるしかありませんが、このような事故が二度と起こらないよう切に願っております。原因の究明と対策の実施を望みます。
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