パピとママ映画のblog

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天地明察  ★★★

2012年09月16日 | た行の映画
いつの時代も既得権益を侵すのは至難の業だ。江戸の昔、日々の暮らしに直結する暦を正しく作り直すために文字通り命懸けで挑んだ人々がいた。そのリーダーが実在の人物・安井算哲である。行く手を阻んだのは、幕府に利権を奪われるのを恐れた公家たち朝廷の圧力だった。幾度も挫折を繰り返しながら粘り強く使命を果たそうとする天文学者を演じるのは岡田准一、その妻えんに宮崎あおい。さらに、抜群のコンビネーションで笑いと涙を誘う笹野高史と岸部一徳をはじめ、ベテラン演技陣が脇を固める。原作は冲方丁の2010年本屋大賞受賞の同名小説。米アカデミー賞外国語賞に輝いた『おくりびと』以来となる滝田洋二郎監督作品である。

あらすじ:代々将軍に囲碁を教える名家に生まれた安井算哲は、対局よりも星と算術に夢中になり、時間を忘れてのめり込んでしまう事もしばしばだった。ある日、会津藩主の保科正之から日本全国で北極星の高度を測り、その土地の位置を割り出す北極出地を命じられる。一年半の任務を終え、暦のずれが判明すると、今度は新しい暦作りの総大将に任命される。天体観測と数理解析を重ねた結果、幕府は改暦を帝に請願するのだが…。(作品資料より)

<感想>江戸時代命をかけて金環日食を言い当てた男がいた、それは今から約400年前のこと。日本独自の暦を初めて作った安井算哲(後の渋川春海)の半生に好奇心を刺激された。囲碁や算術でトップになれなかった算哲が、人脈を活かして改暦の大事業を成し遂げるところに爽快感があると思う。

主人公を演じた岡田准一、挫折や失敗を乗り越え、まっすぐに生き抜く算哲を、爽やかに演じているのがいい。妻には宮崎あおいが、出戻り娘に見えないくらい上品で、彼女の演技はいつ見ても上手い。それから市川猿之助の放つエキセントリックさ、見水戸光圀の中井貴一、会津藩主の松本幸四郎など、役の分をはみ出させないまま、俳優の味をサラリと生かす監督の上品な芝居の演出にも感心した。

江戸時代の天文学や、算術の絵馬という文化が面白く描かれ、北極星観測の旅で、歩数で距離を測るため、岸部一徳が行進する姿が見られるのだが、膝を高く持ち上げて歩く姿に始めは驚いたが、そうしないと同じ歩幅が保つことが出来ないため。彼らの手には、算木という赤と黒の棒が計算用具に使われ、赤はプラスで黒はマイナスを表し、日本では算盤が普及されるまで用いられたそうです。
一緒に旅する武士を好演する笹野高史と岸部一徳のコンビが絶妙でいい。それだけではなく、滝田洋二郎監督は、近代囲碁の祖と呼ばれている本因坊道策や日本数学史上の英雄である関孝和など、個性の強烈な脇役の人間模様を生き生きと描いている。

主人公、算哲が示した暦は見事に日食を言い当てられるのか?・・・算哲の暦作成への意志、暦の解析能力が発揮されそれは概に果たされている。天が答えを出すのを待つというクライマックスの、待つという局面を大げさでなく、芝居じみてもなく、爽やかに描いているのが素敵です。
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