パピとママ映画のblog

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青天の霹靂 ★★★★.5

2014年05月25日 | さ行の映画
作家や俳優としても活躍する人気お笑い芸人の劇団ひとりが書き下ろした小説を、自らメガホンを取って実写化したヒューマンドラマ。40年前にタイムスリップした売れないマジシャンが、同じマジシャンであった若き日の父とコンビを組み、自身の出生をはじめとする家族の秘密を知る。『探偵はBARにいる』シリーズなどの大泉洋が不思議な体験をする主人公を快演し、その両親にふんする劇団ひとり、『GO』などの柴咲コウが物語を盛り上げる。涙と笑いに満ちた物語に加え、4か月の練習を経て臨んだ大泉洋のマジックシーンにも目を見張る。
あらすじ:場末のマジックバーで働く、さえないマジシャンの轟晴夫(大泉洋)。ある日、彼は10年以上も関係を絶っていた父親・正太郎(劇団ひとり)がホームレスになった果てに死んだのを知る。父が住んでいたダンボールハウスを訪れ、惨めな日々を生きる自分との姿を重ね合わせて涙する晴夫。すると、突如として青空を割って光る稲妻が彼を直撃する。目を覚ますや、40年前にタイムスリップしたことにがくぜんとする晴夫。さまよった果てに足を踏み入れた浅草ホールで、マジシャンだった父と助手を務める母(柴咲コウ)と出会い……。

<感想>タレント・俳優、小説家「陰日向に咲く」など幅広く活躍する劇団ひとりが、原作、脚本、監督、出演などひとり4役での初監督作です。自身の2作目の著作を基に、生まれる前の時代にタイムスリップしたマジシャンが、「生きる理由」を見出す姿を描いている。主人公晴夫には大泉洋が、雷門ホールの支配人役に風間杜夫が、母親の悦子には柴咲コウを迎えて、劇団ひとりは父親という設定で、心にしみいる笑いと涙の人間ドラマに仕上げています。

時を超えて出会った息子と若き日の両親と言うと、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を思い出します。それにタイムスリップした40年前と言えば昭和48年代ですよね。まるで「ALWAYS三丁目の夕日」のような1973年の浅草の活気を、長野県上田市に再現したリアリティには本当に驚いた。

物語は、かつては自分を「特別な存在」だと思っていた晴夫だったが、今では四畳半の古いアパート住まい。TVで人気上昇中の後輩の活躍を眺めながら、場末のバーでしがないマジックを披露する毎日で、平凡に生きることさえ難しい現実を痛感する。

昭和48年に飛ばされた晴夫は、母親と知らずに悦子という若い女と舞台に上がり、謎のインド人ペペとして、まだ当時は知られていなかったスプーン曲げを披露する。さらに、チンこと正太郎(晴夫の父親)とコンビを組むことで人気を博し、人生で初めて満たされた日々を味わう。

マジシャン役の大泉洋さん、ノースタントでマジックの練習に明け暮れ、冒頭から観客の目を釘付けにするシーンでは、拍手喝采です。それと、父親の劇団ひとりと一緒に舞台でロープ芸を披露するシーンでは、大泉が結んだロープを難なく解くも、父親の劇団ひとりの首にロープを巻き、それを紐解くのが首にしっかりと巻き付き苦しくて取れない。それが観客に受けて大笑いを取るシーンもある。それから、トランプの芸や、鳩を出す芸、ワインを何本も出す芸、最後に泣かせるのが、白い紙の薔薇の花が宙に浮き、本物の赤い薔薇に変えるシーンには、涙が出てしょうがなかった。

自分の出生の秘密が解き明かされ、今まで母親は自分を捨てて家を出て行ったと聞かされていたのに、まさか自分の命と引き換えに、晴夫を産んだことが分かり、これも実に胸につまされて泣けます。

だが、現実離れした設定の今作に優れたヒューマンドラマとしての、リアリティとユーモアを与えているのは、間違いなく主人公役を演じた大泉洋の、運命に翻弄されればされるほど輝く、演技を超えた存在感だと思います。
かつて、「水曜どうでしょう」で、サイコロの目に自らの旅路を翻弄されて、自らの運命をパスポートと共にがっちりと握られ、愚痴とボヤキしか出ないシチュエーションに置かれながら、他でもないその飾りっけなさに、やられっぷりで、観る者を魅了してきた大泉洋の存在感が厚いです。

「探偵はBARにいる」でのクールなマイトガイ感じや、「清州会議」での豊臣秀吉の怪演など、表現のレンジを格段に広げてきた彼だが、40年前の世界への「タイムスリップ=旅」に否応なく連れ出された晴夫の運命に、かくも深く感情移入させ得る役者は、やはり大泉洋しかいないと思った。
俳優である大泉洋と人間の大泉洋が、最大限に体現されているという点では、これまでの彼の主演映画の中では一番のハマリ役だと確信しました。それに、劇団ひとりの才能が開花した作品でもあると言っていいでしょう。
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