『戦場でワルツを』などのイスラエルの鬼才アリ・フォルマン監督がメガホンを取り、スタニスワフ・レムのSF小説「泰平ヨンの未来学会議」を基に描いた異色作。実写とアニメーションを見事に織り交ぜ、欲望にまみれた人類がたどる驚異の未来を活写する。本人役で主演を務めるのは、『美しい絵の崩壊』などの演技派女優ロビン・ライト。圧巻の映像によって映し出される、ヒロインが大金と引き換えに手にする思いがけない先行きに言葉を失う。
あらすじ:2014年、俳優の絶頂期の容姿をスキャンし、そのデジタルデータを映画会社が好きなように使って映像を作り出すというビジネスが誕生。40歳を超え、女優としてのピークは過ぎ去ってしまったロビン・ライト(ロビン・ライト)は、最初は一笑したが難病を抱える息子の養育のために、結局は巨額のギャラで自身のデーターを売り渡す。そして、彼女は大金を得る代わりに、最後の仕事として新ビジネスの申し出を受けるが……。
<感想>やっと東北でも1週間だけ上映になりました。『戦場でワルツを』は観ていませんが、そのイスラエルの鬼才アリ・フォルマン監督が「惑星ソラリス」のスタニスワフ・レム原作である「泰平ヨンの未来学会議」を映画化したアニメが全編を通して3割と実写が2割くらい融合してのSF作品になっている。
主演のロビン・ライトが製作に名を連らねている。他にマニージャー役でハーヴィー・カイテル、息子の主治医でポール・ジアマティーらが共演している。
ハリウッドで絶頂期の俳優の容姿をスキャンして、そのデーターによって実際の俳優は使わずにCGに置き換えて演技させて映画を作るという近未来のお話。
その世界は、実写版では描かず、アニメのユートピアの世界観である。ロビンが体験したのは、大きな鏡張りの球体の中へ入り、麻薬を吸い込み昏睡状態になり、そのアニメの桃源郷のような世界観の中へと入り込む。そこには、実際に映画会社の重役や一般人たちも大勢いて、仕事はしないで楽しんで暮らしているのだ。
監督は、今作では「傷を負った者たちの未来の世界」を描こうとしているようだ。それは前作での「戦場でワルツを」で過去を総括した後必ず通らなければならない道で、とても厳しい道なのであります。
過去を伝えることと比べて、未来を提示するというのはずっと困難なはずだから。過去は共有できても、思い描く未来はみんな違うと思うから。
「フォレスト・ガンプ」のストーリーでは、近未来のアメリカまで描けと言われれば苦戦したのではなかろうか。ロビン・ライトは、確かヒロイン役だった。例えば前作では海が「恐怖の象徴」のところ、今作では空が「希望の象徴」に描かれている。
というのも、主人公のロビンの息子が、大空に真っ赤なカイトを飛ばして遊んでいるシーンがある。飛行場の傍で、フェンスの近くを旅客機が離陸したり、着陸したりしている。そこへ、真っ赤なカイトをその低空飛行で着陸してくる旅客機にカイトが当たってしまうと、空港警備員が家まで注意にやってくる。
息子は、アッシャー症候群で難聴と網膜色素変性を併発する難病。放置しておけば夜盲症になるという。なんだか、このフェンスは現実の世界とサイバーの世界との境界線に見えてしまった。
主人公女優のロビンは、実際44歳なのだが、デジタルサイバー上では34歳で、永遠に美貌を蓄えたままの美しいロビンでいることが出来るというのだ。
だが、その世界では麻薬に依存して、楽しくハイになって暮らす都を「弱者のいない世界」と描写しているのだ。
まぁ、そこはアニメだから、いくらでも変幻自在に未来の都市を描いて、ホテルの給仕がマイケル・ジャクソンだったり、未来を大変革しても、テロで転覆させてもいいという仮想の世界観。
そこから出るには、またもや麻薬を飲み現実に戻る実写版では、まるで第二次世界大戦中のナチスの軍隊がいるのだ。飛行船に乗っている息子の医師も、薬を飲んで現実の世界へ引き戻されるシーンでも、まるでユダヤ人たちを収容所へと送る列車のような風景が映し出されるのだ。
どうやら、アリ・フォルマン監督は1962年イスラエル生まれで、6歳の時に祖父母はアウシュビッツ経験をしている。だからなのか。
ラストシーンでは、「アーロン」と息子の名前を呼ぶ母親ロビンの声に、もしかしてロビンは、アーロンになって生まれ直すことで再会したいと、遥か遠い過去から愛する息子のためだけに。何故なら息子の病は悪化する一方で、生まれ変わる以外に生き延びる方法はないのだから。
何が何だかとりとめがない話だが、過去と未来との死にもの狂いの戦いも、ラストで母親のロビンが、薬から目覚めないままに仮想現実の世界で、息子と娘と一緒に浜辺で暮らすシーンが印象に残ります。
2015年劇場鑑賞作品・・・252映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
あらすじ:2014年、俳優の絶頂期の容姿をスキャンし、そのデジタルデータを映画会社が好きなように使って映像を作り出すというビジネスが誕生。40歳を超え、女優としてのピークは過ぎ去ってしまったロビン・ライト(ロビン・ライト)は、最初は一笑したが難病を抱える息子の養育のために、結局は巨額のギャラで自身のデーターを売り渡す。そして、彼女は大金を得る代わりに、最後の仕事として新ビジネスの申し出を受けるが……。
<感想>やっと東北でも1週間だけ上映になりました。『戦場でワルツを』は観ていませんが、そのイスラエルの鬼才アリ・フォルマン監督が「惑星ソラリス」のスタニスワフ・レム原作である「泰平ヨンの未来学会議」を映画化したアニメが全編を通して3割と実写が2割くらい融合してのSF作品になっている。
主演のロビン・ライトが製作に名を連らねている。他にマニージャー役でハーヴィー・カイテル、息子の主治医でポール・ジアマティーらが共演している。
ハリウッドで絶頂期の俳優の容姿をスキャンして、そのデーターによって実際の俳優は使わずにCGに置き換えて演技させて映画を作るという近未来のお話。
その世界は、実写版では描かず、アニメのユートピアの世界観である。ロビンが体験したのは、大きな鏡張りの球体の中へ入り、麻薬を吸い込み昏睡状態になり、そのアニメの桃源郷のような世界観の中へと入り込む。そこには、実際に映画会社の重役や一般人たちも大勢いて、仕事はしないで楽しんで暮らしているのだ。
監督は、今作では「傷を負った者たちの未来の世界」を描こうとしているようだ。それは前作での「戦場でワルツを」で過去を総括した後必ず通らなければならない道で、とても厳しい道なのであります。
過去を伝えることと比べて、未来を提示するというのはずっと困難なはずだから。過去は共有できても、思い描く未来はみんな違うと思うから。
「フォレスト・ガンプ」のストーリーでは、近未来のアメリカまで描けと言われれば苦戦したのではなかろうか。ロビン・ライトは、確かヒロイン役だった。例えば前作では海が「恐怖の象徴」のところ、今作では空が「希望の象徴」に描かれている。
というのも、主人公のロビンの息子が、大空に真っ赤なカイトを飛ばして遊んでいるシーンがある。飛行場の傍で、フェンスの近くを旅客機が離陸したり、着陸したりしている。そこへ、真っ赤なカイトをその低空飛行で着陸してくる旅客機にカイトが当たってしまうと、空港警備員が家まで注意にやってくる。
息子は、アッシャー症候群で難聴と網膜色素変性を併発する難病。放置しておけば夜盲症になるという。なんだか、このフェンスは現実の世界とサイバーの世界との境界線に見えてしまった。
主人公女優のロビンは、実際44歳なのだが、デジタルサイバー上では34歳で、永遠に美貌を蓄えたままの美しいロビンでいることが出来るというのだ。
だが、その世界では麻薬に依存して、楽しくハイになって暮らす都を「弱者のいない世界」と描写しているのだ。
まぁ、そこはアニメだから、いくらでも変幻自在に未来の都市を描いて、ホテルの給仕がマイケル・ジャクソンだったり、未来を大変革しても、テロで転覆させてもいいという仮想の世界観。
そこから出るには、またもや麻薬を飲み現実に戻る実写版では、まるで第二次世界大戦中のナチスの軍隊がいるのだ。飛行船に乗っている息子の医師も、薬を飲んで現実の世界へ引き戻されるシーンでも、まるでユダヤ人たちを収容所へと送る列車のような風景が映し出されるのだ。
どうやら、アリ・フォルマン監督は1962年イスラエル生まれで、6歳の時に祖父母はアウシュビッツ経験をしている。だからなのか。
ラストシーンでは、「アーロン」と息子の名前を呼ぶ母親ロビンの声に、もしかしてロビンは、アーロンになって生まれ直すことで再会したいと、遥か遠い過去から愛する息子のためだけに。何故なら息子の病は悪化する一方で、生まれ変わる以外に生き延びる方法はないのだから。
何が何だかとりとめがない話だが、過去と未来との死にもの狂いの戦いも、ラストで母親のロビンが、薬から目覚めないままに仮想現実の世界で、息子と娘と一緒に浜辺で暮らすシーンが印象に残ります。
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