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さよなら、アドルフ ★★★

2014年03月30日 | さ行の映画
第2次世界大戦の終戦直後、ナチス親衛隊高官の父と母が去ったあと、14歳の少女が小さい妹弟と共に祖母に会うために困難な旅をする姿を描くヒューマンドラマ。旅の過程で、ナチスの行ったユダヤ人虐殺の真実に動揺し、葛藤する加害者の子どもたちの繊細な心の動きが映し出される。監督は、『15歳のダイアリー』のケイト・ショートランド。ヒロインは、ベルリン国際映画祭シューティングスター2013に選出されたザスキア・ローゼンダール。過酷な現実に直面し、さまざまな経験を経た少女の成長の物語に心を揺さぶられる。
あらすじ:1945年、敗戦して間もないドイツ。ナチスの幹部だった両親が去り、14歳の少女ローレ(ザスキア・ローゼンダール)は、妹と弟と共に南ドイツから900キロ離れたハンブルクの祖母の家へ向かうことに。途中、貼り出されたホロコーストの写真を見たローレは困惑する。翌日、連合軍兵士に呼び止められたローレはユダヤ人青年のトーマス(カイ・マリーナ)に助けられ……。

<感想>ヨーロッパの映画祭・映画賞で高い評価を獲得したドラマ。アドルフ・ヒトラーに虐げられたユダヤ人の話は数え切れないほどおおいけれども、当時のドイツ人の戦中、戦後を取り上げる話は極めて珍しいです。一言でいえば、戦争の悲惨を描いた作品でもある。
そして、戦争というのは、戦勝国、敗戦国を問わず、常に銃後の女や子供に最大の災厄を及ぼすものだと訴えている。父親は捕えられ銃殺されたに違いない。そして、母親も食料調達に行き暴行されて、精神的にダメージを受け、5人の子供たちを置いて一人で何処かへ行ってしまう。収容所だというが、そこで処刑されたのかも。
残された子供たちは、長女が14歳では薄々事情を呑み込めるのではなかろうか、と思っていたが、世間知らずというか14歳で幼い弟妹4人を連れて祖母のいる北へと旅をするには、過酷すぎる。だが、弟が盗みを働きここにはいられなくなったのだ。

一番下の弟ペータは乳飲み子で、お腹がすくと泣き喚くしお乳を探して大変。もちろんオムツの交換もする。それに双子の弟たちは、まだ幼く事情を呑み込めていない。母親が帰って来るまで我慢すればいいのだと、言いくるめている。妹もあまり当てにならない。
ここまでは良く語られるに違いないのだが、しかし、子供の教育がいかに大事かを、織り込んだのが印象に強く感じた。ヒロインの少女ローレは「最終勝利」を信じているし、ユダヤ人を増悪しているのだ。
ナチ親衛隊の幹部の娘たちの、避難行という題材が、第二次大戦終結から67年後に作られたのは、早いのだろうか、遅いのか?・・・ナチズムの申し子として少女を救うのが、ユダヤの身分証を持った青年だという大いなる皮肉だ。
その青年トーマスも、本当にユダヤ人なのかは良く判らない。生きていくために身分証を盗んだのかもしれないのだ。それでも、彼が一緒について来てくれるだけでも心強いのに。食料集めは、トーマスが一番下の赤ん坊を連れて行く。すると、同情心なのか食料を分けてくれるというのだ。

それに、この時代の状況を呑み込めていないのか、悪戦苦闘しながら4人の弟妹たちを連れて旅をするには、ローレの気の強さといじっぱりの性格が、仇となる。つまり、時には世渡りが下手ということもあり、青年トーマスの優しさを跳ね除けて、自分一人で何とかしようと考えるのも大馬鹿だ。
彼女は、川を舟で渡してもらうのに、中年の太ったおじさんにワンピースのボタンを外し、女としての下半身を見せようとする。すると、そのおじさんは少女に襲い掛かるような態度を取る。すかさず、後を付いてきたトーマスがおじさんの後頭部を石で殴りつけ殺してしまう。驚き怯える少女。何も殺さなくてもと言うのだ。
弟妹たちを連れた過酷な旅の共に、ユダヤ人の身分証を持った青年を頼わざるを得ないのは確かだ。少女ローレを演じたザスキア・ローゼンダールの、演技自体は素晴らしいと思います。彼女を育てたものを知るためには、家族がナチスドイツの総統、ヒトラーを崇拝してこの世界を征服すると信じていたのだろう。
たとえ戦時下でも思春期の男女には、恋愛や性への目覚めが平等に訪れる。たとえばアンネ・フランクにとっては、非常な生活におけるかすかな未来だったそれが、ナチス親衛隊の娘にとっては、敗戦後を生き抜くための代償になるという皮肉である。それが恋なのか、否かもわからぬまま、強制的に自分の女としての性が呼び起こされる。白い足に刻まれた無数のアザと傷跡が痛々しく映る。

双子の弟の一人が、アメリカ兵かソ連兵の撃った弾に当たって死んでしまう。それでも、赤ん坊の弟だけは病気もせずに何とか祖母のところまで行きついたという終わり方。アメリカ地区からソ連地区、イギリス地区にフランス地区を経由するという、境界線の描き方にもう一工夫なかったものか?・・・。列車に乗って検問に会い、トーマスが身分証が無いのに気づく。これがあれば、頼もしい兄ちゃんがいつも一緒にいてくれると思い、弟が盗んで持っていたのだ。ここで、トーマスと別れることになる。

そして、やっと祖母の家に着いた安堵感と、自分が描いていた総統の死で今までの立場が逆転してしまったこと。祖母は躾けについてやかましく言うけれど、ここまで旅して来た苦労を考えると、ローレにとっては何が教育なのかと、反抗せざるを得ないのだろう。祖母にくってかかるローレの気持ちも分からなくもない。
途中の教会で食料を貰う時に、壁に貼られていた連合軍の宣伝ポスター。ユダヤ人虐殺の写真には自分の父親が映っていました。ユダヤ人の見るも無残な遺体。それを見てローレは動揺するのだが、まだ信じられないという様子であった。それにしても、ナチス・ドイツのユダヤ人迫害は、尋常じゃないくらい凄惨なもの。そのことを、子供たちに教えなければならないこともあると思う。
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