イ・チャンドンが製作総指揮を務めた異色のファンタジー・ドラマ。新薬の治験で副作用から不気味な魚人間になってしまった青年の悲哀を、社会風刺を織り交ぜつつユーモラスなタッチで描き出す。出演はイ・グァンス、イ・チョニ、パク・ボヨン。監督は長編デビューのクォン・オグァン。真面目なフリーター青年パク・グは、高額の報酬につられて参加した新薬の治験で副作用を発症し、上半身が魚の姿になってしまう。テレビ局の見習記者サンウォンは、そんな“魚男”の存在を暴き出し、製薬会社の不正を告発する。その活躍によってサンウォンは念願の正式採用を勝ち取る一方、パク・グも魚男として一躍国民的スターとなるのだったが…。
<感想>ギョギョギョッ! 映画ファンの間で、今、フィッシュマンがキテる! キモくてかわいくて笑って泣ける、“全く違う”社会派モンスタームービー
まさに“リアルさかなクン”!? 国民的スターになっちゃう彼から目が離せない!なんてね。魚のハリボテを俳優がただ頭からかぶっているだけで、特殊メイクやCGによる本物らしさなどハナから無視しているのだから、リアリティを云々する方が野暮ってもの。
主人公の青年が割のいいバイト感覚で新薬の治療に参加。その副作用で半人半魚の怪物=フィッシュマンになってしまう。製薬会社から慰謝料を搾り取ろうとする父親、人体実験に異議申し立てする圧力団体。世界の食糧の危機を救うノーベル賞級の新薬発明に水を差すなという愛国者たち、・・・。
世論が白熱する中、フィッシュマンはあくまでもポーカーフェイスを守る。表情筋による感情表現など一切ない、それはハリボテだから。でも、だからこそ半魚人になってしまったごく平凡な青年の悲哀が、その顔には貼りついているようで、これまでの映画の中で出会ってきた怪物たちへの連想に誘われるのだ。
ですが、グロテスクなのは本人以上に彼の自称、恋人や父親、親友、弁護人ら周囲の人間たち。彼らは口いっぱいに泡を飛ばして言い分をまくしたてるだけ。モンスター本人はというと、ただ立ちすくんで恐縮するばかり。周囲が大きな声でワァワァと主張し、他者は苛立ちと嫌悪の対象でしかないのだ。
下半身が魚ならロマンチック・コメディになるが、上半身が魚だとホラーになる。さて、こちらの魚男は風刺劇であり、貧乏フリーターが製薬会社の臨床実験の結果、突然変異__なんて事情は、大衆の同情が集まり人気者になるが、すぐさま立場が逆転し、石持て追われる身となるなんてな展開にも。
行き場のない彼と関わる新米TV局記者と恋人の騒動は、思わぬ展開へと進んでいくのだが、気弱で優しく、競争社会からこぼれ落ちてしまったような魚男。
韓国全土を巻き込んだ狂騒を逃れるように、フィッシュマンは忽然と姿を消す。それは、どんどん魚化してゆく身体が求めるままに、陸から海へと帰ることを選ぶのだ。だから深海という無際限の場所で、生き生きと泳ぐフィッシュマンの姿に、涙しない理由などない。ユーモアと社会風刺の効いたテイストが絶妙だが、最後をファンタジーにしてしまったのが惜しかった。
物語も人物描写もパターンというか、型にはまった味気無さを感じてしまう。そこが食い足りなくて残念な結果になってしまっているようですね。
2017年劇場鑑賞作品・・・27アクション・アドベンチャーランキング
<感想>ギョギョギョッ! 映画ファンの間で、今、フィッシュマンがキテる! キモくてかわいくて笑って泣ける、“全く違う”社会派モンスタームービー
まさに“リアルさかなクン”!? 国民的スターになっちゃう彼から目が離せない!なんてね。魚のハリボテを俳優がただ頭からかぶっているだけで、特殊メイクやCGによる本物らしさなどハナから無視しているのだから、リアリティを云々する方が野暮ってもの。
主人公の青年が割のいいバイト感覚で新薬の治療に参加。その副作用で半人半魚の怪物=フィッシュマンになってしまう。製薬会社から慰謝料を搾り取ろうとする父親、人体実験に異議申し立てする圧力団体。世界の食糧の危機を救うノーベル賞級の新薬発明に水を差すなという愛国者たち、・・・。
世論が白熱する中、フィッシュマンはあくまでもポーカーフェイスを守る。表情筋による感情表現など一切ない、それはハリボテだから。でも、だからこそ半魚人になってしまったごく平凡な青年の悲哀が、その顔には貼りついているようで、これまでの映画の中で出会ってきた怪物たちへの連想に誘われるのだ。
ですが、グロテスクなのは本人以上に彼の自称、恋人や父親、親友、弁護人ら周囲の人間たち。彼らは口いっぱいに泡を飛ばして言い分をまくしたてるだけ。モンスター本人はというと、ただ立ちすくんで恐縮するばかり。周囲が大きな声でワァワァと主張し、他者は苛立ちと嫌悪の対象でしかないのだ。
下半身が魚ならロマンチック・コメディになるが、上半身が魚だとホラーになる。さて、こちらの魚男は風刺劇であり、貧乏フリーターが製薬会社の臨床実験の結果、突然変異__なんて事情は、大衆の同情が集まり人気者になるが、すぐさま立場が逆転し、石持て追われる身となるなんてな展開にも。
行き場のない彼と関わる新米TV局記者と恋人の騒動は、思わぬ展開へと進んでいくのだが、気弱で優しく、競争社会からこぼれ落ちてしまったような魚男。
韓国全土を巻き込んだ狂騒を逃れるように、フィッシュマンは忽然と姿を消す。それは、どんどん魚化してゆく身体が求めるままに、陸から海へと帰ることを選ぶのだ。だから深海という無際限の場所で、生き生きと泳ぐフィッシュマンの姿に、涙しない理由などない。ユーモアと社会風刺の効いたテイストが絶妙だが、最後をファンタジーにしてしまったのが惜しかった。
物語も人物描写もパターンというか、型にはまった味気無さを感じてしまう。そこが食い足りなくて残念な結果になってしまっているようですね。
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