パピとママ映画のblog

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恋人たち ★★★

2015年12月02日 | アクション映画ーカ行
『ハッシュ!』『ぐるりのこと。』などの橋口亮輔監督が、それぞれに異なる事情を持つ3人の男女の物語をつづる人間ドラマ。自分に興味を持ってくれない夫と気が合わない義母と生活している女性、同性愛者で完璧主義の弁護士、妻を通り魔に殺害された夫を中心にストーリーが展開する。作家主義と俳優発掘を理念とした松竹ブロードキャスティングのプロジェクトの一作として、橋口監督の『ゼンタイ』に出演している篠原篤が主人公を演じ、リリー・フランキーも出演。人の感情を丁寧にすくい取った橋口監督の演出に期待。

<感想>橋口亮輔監督の『ぐるりのこと。』は観ていないが、今作では3つのエピソードが交錯する、主人公は次の3人。妻を通り魔に殺されたアツシに、姑と夫との平凡な日々に埋没している主婦の瞳子。ゲイでエリート意識の高い完璧主義の弁護士の四ノ宮である。
共通しているところは、監督の言葉を借りれば「飲みこめない想いを飲みこみながら生きている人たち」であるというのだ。3人は特別に演技が上手いとかではなく、それに素人のような名の知れていない役者ばかり。

知っているのは、主婦が浮気をする相手の光石研と、アツシが訴えを起こすための弁護士を紹介してもらうリリー・フランキーと、アツシが区役所の保険課で健康保険証を出してもらうのに、掛け合う役人が山中崇史。

アツシが金を払ってないので保険証がないのだ。それで、1万円入金に行くと高飛車に断られ、怒ったアツシが食ってかかるとやっと1週間分の保険証を出してくれる。しかし、アツシが働いている橋梁点検の仕事の会社で、社会保険証を出してくれないのか。ということは、バイトで正社員というわけではないのだ。
身も心もボロボロになったアツシは、犯人への殺意と闘いながら裁判を起こそうとし、夢見る瞳子は日常に風穴を開けてくれた男、パートの弁当屋で知り合った肉屋の光石研に女心が揺れ動く。

しかしだ、この肉屋の光石という男は、実は詐欺師で、バーの女と水道水をペットボトルに入れて、「美女水」といって、顔や身体に塗り、水を飲むと白い綺麗な身体になると言って売りつける詐欺師なのだ。

騙される女も、家へ帰れば姑に何にもしない夫、そんな生活に飽き飽きして、パート先で知り合った光石と肉体関係になり、口先三寸の2人で養鶏業をしようという言葉を鵜呑みにして、バーの女とも出来ている光石に騙されているとも知らずに付いて行く女。

この女優も中年ブス女で、どうみても、夫との生活の方がまだマシだと思うのだが。

そして、弁護士の四ノ宮はというと、階段で何者かに突き落とされ、さらに負のスパイラルへとハマっていく。友人の子供に悪戯をしたと誤解されてしまうエリート弁護士だが、結局は働いている事務所をクビになり独立するにも金がない。

それにしても、アツシの太った身体には抵抗を感じた。奥さんが死んで自堕落な生活をしているとはいえ、仕事をしているわけで、普通なら痩せ細って神経がイカレテいるような役者を使うべきだと思う。
絶望の日々を過ごしているアツシの気持ちも分らなくはないが、会社の女の子がアツシに優しい言葉をかけてくれて、珈琲の缶にアメを置き、あっけらかんと話しかけて「ママが家においでよ」って言ってたよ。会社に暗い人がいるなら、家に呼んで一緒にテレビを見たらいいと言ってくれる。それに、片腕を失くした会社の人も、悩み事を聞いてやるよと優しく部屋を訪問してくれる。

まぁ、不幸な状況に主眼を置くのではなく、それでも生きていく人々の感情を描くことが映画なのだと思った。アツシの仕事が橋梁点検の仕事というのも暗示的で、一見安全で平和そうな日本も、叩けばあちこちで見えないヒビが割れているのだ。恋人を失い、あるいは失いかけている中で、日常は灰色になりながらもそれでも続くという。
ですが、見上げれば青空も橋の向こうに見えるということは、いくらかまだまだ住める日本ということなのかと。
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