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ソロモンの偽証 後篇・裁判★★★★★

2015年04月10日 | アクション映画ーサ行
宮部みゆきが作家生活25年の集大成として9年間にわたり連載して書き上げたミステリー巨編「ソロモンの偽証」を、「八日目の蝉」の成島出監督が映画化した2部作の後編。
あらすじ:バブルが弾ける直前の90年代の初頭のこと。男子中学生の謎の転落死をめぐって同級生たちが学校内裁判を開廷。信用できない大人たちに代わって自分たちで深層を究明しようとする姿が描かれる。
告発状によって柏木卓也殺害の嫌疑をかけられた問題児の大出俊次を被告に、校内裁判の提案者である藤野涼子は、検事として大出の有罪を立証しようとする。対して、他校生でありながら裁判に参加する神原和彦は大出の弁護人となり、涼子と対峙する。さまざまな思惑が絡まり合う中、涼子らは必死で真相を究明しようとするが……。
注意:ネタバレになっていると思います。これから後篇をご覧になる方で、内容を知りたくない方はどうか読まないで下さい。

<感想>3月1日にシネコンにて「ソロモンの偽証 前篇・後篇」プレミア観賞チケットにて、一気見で、前篇と後篇を観賞しました。それから1カ月以上経ちましたが、ノートに内容を書き込んでいたので纏めてみました。
高校生たちが、大人たちの怠慢に業をにやし、「校内裁判」が行われることになる。そして、衝撃の真相が浮かび上がるのです。謎解きや法廷劇のスリルに一喜一憂させられつつも、迷いながら成長していく中学生たちの青春の痛みや輝きに共感を覚えずにはいられない。
たたみかけるような悲劇の連鎖に、緊張感は高まるばかり。子供たちが自らの力で、真実に向き合おうとする「校内裁判」という異色の設定にも驚かされます。学校という枠を飛び越えて、かつてないスケールのサスペンス劇になりそうですね。

学校を舞台に、サスペンスと青春が奇跡のように一体となっているようだ。人間ドラマとしての奥行も深く、そしてそれを支えているのが全国オーディションで1万人から選ばれた藤野涼子をはじめとした生徒たちである。彼らから生々しく引き出された真っ新な演技に圧倒されます。

藤野涼子と神原和彦のキャスティングが一番の肝で、裁判のシーンをどう盛り上げ成り立たせるかは、全部子供たちの芝居にかかってくるわけで、俳優として知名度やキャリアがあるわけでもなく、しかし、一般応募からの藤野涼子は、見事に等身大の中学生になっており、父親と衝突して大雨の降る夜に外へ飛び出し、それを父親が追いかけるシーンとか、まだ温かい家族という絆が残っている。

そして、涼子は正義感を持っており、そしてそれを実行できない自分の未熟さも自覚している。だから、映画を観た子供たちが、きっと彼女に共感を覚えるだろう。一方、大人たちは、中学生当時の想いをよみがえらせ、自分が失ったものに気付かされるに違いないありません。

裁判長には、クラスで一番成績トップである井上くんが、検事には藤野涼子が、大出を弁護する弁護人には神原くんが、そして陪審員も決まり、これからが藤野たち検事が、柏木くんの死んだ当日のアリバイを調べるのだが、まるで刑事のように見えた。
この当時はまだケータイ電話は普及しておらず、公衆電話から柏木の家へ電話をした通話記録をたよりに、4本の電話を調べる藤野たち。いやはや、熱い夏の日に、徒歩で調べていく内に、津川雅彦さん演じる電気屋の親父に出会う。
最後に、柏木の家へ電話をしたのが、その電気屋の横にある公衆電話だったのだ。ボケてしまって大出たち虐め男子生徒の写真を見せても覚えていない。ですが、裁判の時に証人として学校へ来てくれた時に、電話をかけていた少年はあの子ですと指をさすんですよ。それは誰なのかには、私も驚きました。
警察はここまでは調べていなかった。それに、告発文を書いた生徒のことも、よくも調べもせず、こういうことを書いて出す生徒には、何か恨みつらみのようなことがあってしかるべきなのに。

それに、大出くんの弁護人を引き受けた神原も、夏休みの大出の自宅へと、前篇で家は火事で全焼してしまいアパート暮らしの彼。父親は暴力で母親を殴る蹴る、それに、息子にもお前が自殺した柏木くんを虐めたからだと殴る蹴るの乱暴をする。家庭崩壊の危機である。
それを弁護するのが神原くんで、彼の家にも事情があり、そのことを大出から罵倒されて、そんなお前に俺を弁護できるのかと言われてしまう。実は神原くんには、なんとイワクつきの暗い事件が、父親が母親を殴り殺して刑務所で父親が自殺し、親戚の家に引き取られた神林くん。それでも、勉強ができ秀才で東都大付属校へ入学できたという。仲良しだった柏木くんは、受験するも東都大付属を落ちてしまったのだ。そのこともあり、死んだ柏木君は両親や学校に不満もあり、小学校の時に仲良しだった神原くんが東都大付属校に受かり、自分は落ちてしまったことで、神原を虐めていたようだ。柏木くんの暗い闇の部分を見てしまった。

だから、柏木は自分の将来を悲観し、大出たちにも虐められ登校拒否を繰り返し、そんな息子を両親が見てみぬふりしているような。亡くなった夜は、クリスマスイブの夜で、普通だったら家庭で何かしらお祝いするのに、この家にはそういう気配すら感じず、息子が夜に一人で学校へ出かけたのを知らないとは、情けない両親である。
弁護人の神原くんは、大出が証人として出廷することになり、その法定で大出の無罪を確信する弁護をするのかと思えば、皆に大出による暴力で虐めを繰り返していることを曝露して、公衆の面前で追い詰め、大出を窮地に陥れる。
ですが、柏木くんの転落死は大出たちの犯行ではないと弁護するのだ。つまり大出にはその夜のアリバイがあり、家にいたことが確認できたのだ。

それに、検事側の藤野涼子も証人として、大出から虐められていた樹里を出廷させる。ですが、真実を語ると言っていた樹里は、告発状の送り主が松子だとトンデモ発言をする。死人に口なしとは言え、何ともやり切れない嘘つき女に見ている側には、大出に虐められた樹里に同情の余地はない。本当は、雨の降る夜に松子が樹里の家へ出かけ、告発状のことで話し合うも喧嘩になり、泣きながら帰る道すがら飛び出し、トラックに撥ねられたのに。
他にも、責任をとって辞職した元校長は、学校の隠ぺい体質を問われ、同じく辞職に追い込まれた森口先生は、おどおどしながら小さい声で柏木君のことを「扱いにくかった生徒」だと証言。

ですがこの中学生の法廷劇には少し関係ないような感じもしたのですが、担任の森口先生を演じている黒木華のことなんです。アパートの隣の部屋の住人である夫婦が、夫婦喧嘩騒ぎで妻が先生の郵便物を盗み取り、破いて捨てて、挙句に学校の事件のことで憔悴しきっている黒木華先生に、刃物で襲い掛かってくるんですからね。この女には、市川美和子が扮していて恐ろしい形相で、ただお隣さんというだけで被害にあってしまう。これはまったくもって関係のないことだと。
そして、大出を度々補導していた女性刑事は、自殺と決めつけた警察の怠慢を責められ法廷は贖罪の場になってしまう。裁判が始まっても体育館が騒然となっている。松子の父親が立ち上がって「この子らは、死にもの狂いでここまでやってきたんだよ」と叫ぶ塚地さんが良かった。そして、生徒たちの裁判のために辞職願まで出して、裁判を見守る松重豊扮する北尾先生の応援もよかったですね。他の先生方は、自分の身の安全のためにただ傍聴席で見ているだけ。

ゲームや漫画で簡単に人を殺すようになった時代。この国は平和ボケという人もいるけれど、命の重みや考え方が判らなくなっているようだ。家庭や学校の問題もある。虐められていると家で親に言うと、さらに酷い目にあう悪循環を子供たちは恐れているのだ。
2月20日未明に、川崎で中学1年生の少年が殺害される悲惨な事件がありました。子供たちは、虐められても黙っていようと、自分の身の安全のため、もしくは家庭の問題にも、虐めは絶対に無くさなければダメだけど、問題は虐めの先には“死”があるということなんですね。
虐められて親にも友達にも相談できなくて、飛び降りるという悲惨な結末が。その前に、何故、もう1日我慢しようとか頑張ろうとか、そいう心の中に自分の命を大事にしようとする光が見えてくれば、明日も頑張れると思うから。
この映画を見て、現在虐めを受けている子供たちに、生きていればきっと未来には希望があり、生きるという勇気が芽生えてくれることを祈っています。

ソロモンの偽証 前篇・事件
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