パピとママ映画のblog

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ミュージアム ★★★★★

2016年11月13日 | アクション映画ーマ行
巴亮介の同名コミックスを「るろうに剣心」「秘密 THE TOP SECRET」の大友啓史監督が実写映画化した猟奇サスペンス・スリラー。雨の日に猟奇的な殺人を繰り返す正体不明の“カエル男”と、それを追う刑事の緊迫の攻防をスリリングに描く。主演は小栗旬、共演に尾野真千子、野村周平、大森南朋、松重豊。また、妻夫木聡が自らをアーティストと呼ぶ殺人鬼・カエル男を怪演。
あらすじ:ある雨の日、手足を鎖につながれた状態で腹を空かせた獰猛な犬たちを放たれ、生きたまま餌にされた惨殺死体が発見される。“凶器”となった犬の胃の中からは“ドッグフードの刑”と書かれた謎のメモが。それが、自分をアーティストと呼ぶ“カエル男”による連続殺人事件の始まりだった。犯行はいずれも雨の日に行われ、現場には必ず謎のメモが残されていた。新米刑事の西野とともに捜査に当たる沢村は、被害者の共通点を突き止め驚愕する。それは次のターゲットが沢村の妻・遥であることを意味していたのだった。沢村は冷静さを失い、カエル男の罠にはまって逆に追い込まれていく。

<感想>超満員の観客で、空いている席が前から2番目の席しかなくて、時間の都合もあり観ました。それでも、小栗旬扮する刑事を挑発し、死闘を仕掛けるのは妻夫木聡演じる“カエル男”であり、残虐非道でありながら、その犯行には芸術性をも匂わせる異色さで、確かに「セブン」に内容が似ているような猟奇殺人事件の核心にせまりながら、裁判員制度がはらむ問題点も絡ませて描いているので、これはこれで、サスペンス・サイコスリラーものとして面白かった。

ターゲットを徹底的に調べあげ、ふさわしい“私刑”を執行し、趣向をこらした死体を残す、自らを「殺人アーティスト」と称するカエル男にとって、犯行は芸術性を駆使した“作品なのだ。
カエル男による恐ろしい私刑
「ドッグフードの刑」鎖で縛った女性を、生きたまま空腹のドーベルマンのエサにするとは。理由があって被害者は愛犬を保健所に預けていた。
「母の痛みを知りましょうの刑」
ターゲットは引き籠りのニート青年であり、生きたまま、出生時の体重3280グラム分の肉片を削り取り、殺害したもの。
「均等の愛の刑」
頭部から真っ二つに両断された裁判官の死体。一つは妻の元へ届けられ、もう一つは愛人の働くクラブへ贈るという演出を施すのだ。
「ずっと美しくの刑」
ボトックスや整形を繰り返していた50歳の女性検事。裸で冷凍死させて永遠の美をもたらすというもの。
「針千本飲ますの刑」
大量の釘を飲まされ悶絶した男は、自称占い師だった。オブジェのように口に針を突っ込まれて装飾されていた。
「お仕事見学の刑」
予告された刑は、沢村刑事の妻子を狙っていた。家庭を顧みずに息子の誕生日も忘れて遅く帰って来るし、妻が第二子を身ごもり流産したことも知らない夫。妻が出て行く時に言う言葉「あなたは父親としては最低ね。家庭を持つのは無理だ」と、沢村の仕事で刑の執行を止められるのか?

今作で小栗旬が演じる沢村は、叩き上げの刑事で、髪の毛はボサボサで無精ひげ、地味なスーツをラフに着こなしたルックスは、ヒーローが良く似合うスマートなイメージを180度変えている。おまけにワーカホリックで、妻子に逃げられた後の生活は荒れ放題で、よく眠れないといいタバコを吸いながら、かってないワイルドな一面を覗かせている。
家族への贖罪、カエル男への憤り、そして刑事になるきっかけとなる亡き父親との確執など、その内面も複雑。高校生のころ、父親は刑事で家へは殆ど帰ってこないので、不良少年だった息子。父親が通り魔と格闘して少女を助けて、殉職したのだ。それで、自分も刑事になることに。出番の少ない父親に大森南明が。

心身ともに傷だらけの男をさりげなく演じるその姿に、小栗旬という俳優のさらなる進化を実感させられました。それは、心理描写だけでなく、激しい格闘シーンや車に撥ねられてフっ飛ばされるし、犯人とのカ-チェイスで自分の車にトラックで追突され、横転して車の中から這い出てくる痛々しさなど、自ら演じた痛みを観客は、感じさせるアクションとして魅了させられる。

何故にカエル男は猟奇殺人を繰り返すのか。それは、別の容疑者が自殺することで終わった幼女殺害事件での裁判員裁判に関わった人たちで、裁判官、陪審人の中で死刑を選んだ人たち。これは冤罪事件であり、真犯人はカエル男なのだ。だから、そのなかには陪審人として沢村の妻(尾野真千子)も含まれていたことから、沢村通称「カエル男」の逮捕に異常なまでのこだわりを持つようになる。

それに、後輩の刑事西野が、カエル男の餌食になり、沢村の見ている前で屋上から突き落とされてしまう。西野刑事には野村周平が、イケメン刑事なのにかわいそうな死に方。それに上司に、伊武雅刀、そして刑事役が板についている松重豊と、その他にもたくさんの共演者が熱演している。

それに、何故に雨の降る日ばかり犯行が行われるのか?・・・沢村が調べあげる光線過敏症で、つまり陽射し過敏症なのだ。カエル男がマスクを取ると、妻夫木聡の面影がまったく感じられないスキンヘットで、顔面がただれているキモイ男。それに、何が芸術性なんて言っているのか、エゴの塊のような性格で、もっとも画面に多く登場する沢村の妻子と、沢村が必死に探すシーン、そして監禁されるシーン。
それでも、ついにカエル男の居場所を見つける。豪邸の地下室に住んでおり、この豪邸の主は、妻もろとも強盗に殺されて細かく切断されていたというのだ。そこに生き残った子供が二人いたのだが、霧島早苗とみきえ。写真には双子のような女の子が2人写っていた。一人は養女に貰われていったというのだが、その女が市川実日子であり、この女もカエル男のような非情さを持っている。残った少女は男性のように両親を殺した犯人への復讐ではなく、心の病、心因性の光線過敏症という病気を患っていた。

ラストのカエル男の館、地下室でのアクションは見応えがあり、地下室のグロイ描写に身震いしつつ、人間の殺し方を芸術品だと言うカエル男の頭脳が壊れているような気がした。
いやぁ、小栗旬の文字通り体を張って、自分の知恵と腕で大事な家族を危険から守ろうとする。そして、沢村が徹底的に追い込まれていくラストでは、深く絶望したり、驚愕したり、自分の周りに何が起きているのか分からないままに追い詰められ、否応なしに自分自身と向き合うことになっていく。物凄くアクションシーンがワイルドで、それに身震いするほど恐ろしい場面などが多くて、カエル男の妻夫木聡の悪も大いに存在感がありました。ラストで、息子の運動会でビデオカメラ片手に息子を撮ると、首を掻いているではないか。もしかして、カエル男の心因性の光線過敏症なのか?・・・怖いよね。

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