パピとママ映画のblog

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WOOD JOB!(ウッジョブ) 神去なあなあ日常★★★★

2014年05月12日 | アクション映画ーア行
『ウォーターボーイズ』など数々のヒット作を送り出してきた矢口史靖監督が、人気作家・三浦しをんのベストセラー小説「神去なあなあ日常」を映画化した青春ドラマ。あるきっかけで山奥の村で林業に従事することになった都会育ちの若者が、先輩の厳しい指導や危険と隣り合わせの過酷な林業の現場に悪戦苦闘しながら、村人たちや自然と触れ合い成長していく姿を描く。『ヒミズ』などの染谷将太をはじめ、長澤まさみ、伊藤英明、ベテラン柄本明らが共演する。
<感想>矢口史靖監督作品としては、「ウォーターボーイズ」や、「ロボジー」がお気に入りの映画ですね。しかし、近年の矢口作品などと比べて、明らかな違いの一つは、この生命力のエネルギーでしょう。初期の作品では、世の中を無視して何をやりだすか分からないような、アナーキズムが映画のダイナミズムを刺激していたと思う。だが、本作品には、アナーキズムはもうない。なくなってシンプルになり、より生命力旺盛なバカバカしいダイナミズムが復活している。

この作品は、都会育ちの平野勇気(染谷将太)が大学受験に失敗し、彼女にもフレれてしまい、ふと目に留まった「緑の研修生」のパンフレットの写真に写っている美人(長澤まさみ)の微笑む彼女に釣られて1年間の林業研修に参加することから始まる。
ローカル線に乗り継ぎ降り立ったのは、ケータイの電波も届かない、超が付くくらいのド田舎、神去村。ケータイは無人駅で建てかけてあったビニール傘の水溜まりに落としてパーになる。鹿やら、蛇やら虫だらけの山、同じ人間とは思えないほど狂暴で野性的な先輩のヨキ、「海猿」の伊藤英明が演じていて、浮気性でスケベなこと。この役者さんは何を演じても上手いです。厳しいといっても、山の仕事を舐めると命に関わるという、可愛さ余ってのしごきですからね。奥さんには優香さんが演じていて、子供が欲しいが中々授からないのだ。
命がいくつあっても足りない過酷な林業の現場。高所恐怖症の人には向かない仕事です。耐え切れず逃げ出そうとする勇気だったが、別の男に先を越されてしまった。でも、そこへあのパンフレットの表紙の美人が直紀・長澤まさみがバイクで駅まで送ってくれる。でも、彼は思い直して最終電車に乗らなかった。

そこで、軽いノリで山奥の生活に逃避した彼は、林業の凄さとか山という別世界、村で暮らす人たちに魅せられて次第に変わっていく。
しかし、そこから逃避しようとする度に妨げるものが、・・・という青年の成長の物語だが、この成長が反時代性を帯びていることに、まず心を打たれる。
クライマックスには、大規模なおおやまづみ祭りのシーンから、驚愕のラストが用意されているのには驚く。矢口映画でしかあり得ない強烈なスペクタルを堪能できます。

祭りのシーンをCGなしで撮ったことや、スケールの大きさも見ものですが、泥臭い男性性を、直球で恰好よく撮っている感性には、これは女子にも必見です。ふんどし一つで、裸の男たちの身体から湯気が立ち込めるカットなど、そしていつもはチェンソーで樹を切り落とすのに、昔の儀式にのってナタで何度も切り口を入れ、杭を刺し込み、長いノコギリで両方から息を合わせて引く作業など、見事なものです。
それに、主人公の勇気も仲間に入れてもらった理由が、ファンタジックで美しいシーンがあるんですね。1年に1日だけ山へ登らない山止めの日。子供たちには大人が絶対に火遊びはいかんと、山火事を起こしたら大変なことになる。川辺で焚火をしていた子供たち、しかられてしょぼくれて、一人の男の子が山へ入っていく。

山止めの日なのに、きっと神隠しにあって山で迷子になってしまうと。村人たちが総出で、救急車や消防車もやってきて、捜索に登っていく村人たち。勇気も捜索に加わるも、途中で霧が沸いて来て前が見えなくなる。以前、勇気が山の中で樹を切る仕事をして、昼飯のおにぎりを半分、沢の地蔵にお供えした。誰か人の手が伸びて勇気を、その男の子のところまで連れて行ってくれる。手にはご飯粒が付いていた。でも、勇気の耳たぶにはマムシが食いついていて、気を失ってしまった。そんなことがあって、勇気は村の一員として認められ、祭りにも参加させてもらったというわけ。そうそう、最初の山へ行った時に、誤って足を滑らせて沢まで落ちた時に、ヒルにお尻や股に吸い付かれた事件もありましたね。

その勇気が、この祭りでもやらかしてくれます。大木を村の下にあるしめ縄の大きなもの2つを合体させて、そこへ目がけて、山で切り落とした巨木をまるでジェットコスターみたいに、スロープを作り巨木を落とすわけ。これは五穀豊穣、子孫繁栄を祈願して、子宝が授かるようにという祭りでもあるんですね。その巨木をレールに乗せる時に勇気が足を綱に取られてしまい、仕方なく巨木の上にまたがって落ちてゆくシーン。これは観ないと損ですぞ、これまでに見たことない映像は新鮮でいいですね。

やはり、本作での伊藤英明さんの存在感は、彼が画面に映る度に、映画にエネルギーが充電され、祭りのシーンでも見事な筋肉美に、これだけふんどし姿が似合う役者さんはそうはいないでしょうね。それと、今回は村のお婆ちゃん4人と、元気な子供たちが良かったと思います。子役をたたくシーンも、児童虐待にならないギリギリの勢いで、田舎のお母さんってあんな感じですからね。今は、子供が少ないから、母親も父親もあまり子供をたたかないです。
この映画ではチラシ一枚でさえ身体性を担っており、主人公の親の都会的ゆるさもさりげなく描かれている。一人息子の将来のこととか、それは自分で決断することも大事だと思う。最後の「緑の研修生」のパンフレットの写真が、勇気くんだったのが最高ですよね。主人公の染谷将太くん、幼い顔なので高校生役も難なくこなして、今までと違う演技を見せて貰いました。
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