パピとママ映画のblog

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アクトレス~女たちの舞台~★★★.5

2016年01月03日 | アクション映画ーア行
『クリーン』などで知られるオリヴィエ・アサイヤス監督が、華やかな世界に生きる女優の光と影を描いた人間ドラマ。自身の出世作の再演でヒロインではなく年配女性の役を依頼された大女優の葛藤を、オスカー女優ジュリエット・ビノシュが体現する。彼女を支えるマネージャーを好演したクリステン・スチュワートは、アメリカ人女優として初のセザール賞を受賞。新進女優を、『キック・アス』シリーズなどのクロエ・グレース・モレッツが演じる。
あらすじ:映画界でその名をとどろかすマリア(ジュリエット・ビノシュ)は、マネージャーのヴァレンティーヌ(クリステン・スチュワート)と一緒に仕事に励んでいた。そんなある日、マリアは若いころの出世作のリメイク版への出演をオファーされるが、彼女が演じた若き美女ではなく、ヒロインに振り回される中年上司役だった。リメイク版の主役には、ハリウッドの新進女優ジョアン(クロエ・グレース・モレッツ)がキャスティングされていて……。

<感想>昨年の暮れに3本の映画を観賞したものを、今年になってからレビューするとは。しかし、昨年は身内に不幸があって忙しくて映画は観てもレビューまでには至らなかった。その中でも、この作品は、あのジュリエット・ビノシュが孤独と老いと不安にかられて、中年の大女優を演じるというのだから。

特急列車内の車内でマネージャーのクリステン・スチュワートと打ち合わせに余念がない女優のマリアのジュリエット・ビノシュ。行先は彼女の育ての親の劇作家の住むスイスの山荘へ。
女優とマネージャー、演じているのはどちらも女優なのだから、演技合戦になってもおかしくない。ましてや、マネージャーがリハーサルで台詞の相手役まで引き受けているわけだから。
つまりは潜在的に女優を脅かす、この設定がうまくて、列車に始まる場の移動も効果的で、その中で少しづつ過去が可視化されていき、見応えのある映画になっている。
かつて自分の才能を開花させてくれたこの劇作家のおなじ戯曲のリメーク版で、今度は若き日に自分が演じた役とは対照的な別の役で出演しないかと誘われる。
その役は20歳の主人公と彼女に翻弄されたあげくに自殺へと追い込まれる40歳の女性の役どころ。マリアはヒロインに翻弄される相手役をオファーされる。

映画の主人公を演じるジョアンの、圧倒的な若さとふてぶてしいまでの挑戦的な態度に、これまでにない不安に駆られるマリア。そのあまりの落差に、そのまま彼女の20年という歳月を象徴しているかのようで、役を引き受けるか否かマリアは悩みに悩むのだ。

若いジョアン役のクロエ・グレース・モレッツが、新進演出家と不倫をしていて離婚を迫り、その妻が自殺未遂事件を起こすことも、そのスキャンダルまでを宣伝に利用とするところが憎いです。

そんなマリアを支えつつ、率直な意見を述べるマネージャーが言うには「彼女に何があるというの?時間、若さ、輝く未来」。鋭利なセリフの数々が真実を突きつける。マネージャー役のクリステン・スチュワートは、眼鏡にパンツのマニッシュなスタイルで、「トワイライト」シリーズのヒロイン・ベラ役でブレイクして一躍有名になり、独特なしゃがれ声で台詞を早口で喋る。まさかここまで演技が上手くなっていたとは想像もつかなかった。

特筆すべきは、本作の持つスピリチュアルな側面だろう。ニーチェを魅了したというスイスの神秘的な山岳地帯を舞台にすることで、スイス地帯の「マローヤのヘビ」現象も美しく撮影され、山と雲の絶景をまるで雲の流れがへびのように見えるのだから。
この作品のテーマは明らかで、誰にでも訪れる過去から現在、そして未来へと流れる時間という魔物にどう対処するかだろう。特に、年齢と格闘せざるを得ない女優にとっては時間ほど残酷なものはないから。それも若いピチピチとした主役の新人女優ジョアンを目の前にすれば、40歳の役を引き受けるかどうか二の足を踏むのも当然だと思う。

大女優役を演じるジュリエット・ビノシュ、もちろん適役ではあるのだが、余りにも見事に役を演じ過ぎてはいないかと、しかし、エンディングでカメラと対峙する彼女はすっきりとただ在る事へと、静かに笑みをたたえて素敵でした。
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