
2011年に急逝した森田芳光監督のデビュー作「の・ようなもの」(1981)のその後を描くオリジナル作品。東京の下町。落語家一門の出船亭に入門した志ん田(しんでん)は、師匠の志ん米(しんこめ)から、かつて一門に在籍していた志ん魚(しんとと)を探してほしいと頼まれる。志ん米は、一門のスポンサー的存在で、志ん魚を贔屓にしている女性会長のご機嫌をとるため、もう一度志ん魚を高座に引っ張り出そうと考えていた。志ん田は、師匠の弟弟子である志ん水(しんすい)や昔の門下生を訪ね歩いて手がかりを集めようとするが、なかなかうまくいかず……。「の・ようなもの」ほか多数の森田作品で助監督や監督補を務めた杉山泰一がメガホンをとり、森田監督の遺作となった「僕達急行 A列車で行こう」でも主役を演じた松山ケンイチが主演。伊藤克信、尾藤イサオ、でんでんといった前作にも出演したキャストが、同じ役柄で登場する。

<感想>森田芳光監督のデビュー作「の・ようなもの」(1981)を、森田芳光組のスタッフや出演者が、35年後の物語として展開した青春コメディであり、そこには森田芳光監督へのオマージュの映画でもあります。内容は、30過ぎても目が出ない前座の落語家、出船亭志ん田が、兄弟子にあたる元落語家の志ん魚を探し始めるところから始まる。そして志ん魚に出会ったことから、落語への情熱を取り戻して行くというお話。
志
ん魚は、師匠の死後落語の世界を離れてしまい行方知れず。ですが、その師匠の13回忌に行われる「一門会」を前に、タニマチの会長である三田佳子がお気に入りだった志ん魚の、新作落語「出目金」の噺が聞きたいと言い出した。
生真面目な志ん田は、脱サラをして入門したものの、芽がでないまま、30歳の誕生日を迎える。師匠の娘の由美に恋をしているが翻弄されるばかり。

落語家という役柄は初めてだという松山ケンイチ演じる志ん田(しんでん)。古今亭志ん丸さんに指導をしてもらい、本当は志ん魚が作った「出目金」を、「一門会」で志ん魚がお披露目するはずだったのだが、それを志ん田が覚えて志ん扇師匠のお墓の前で、一席を話すという場面で、志ん田が一皮むけるという。やっと噺家らしくなったようだ。

生真面目すぎる志ん田と落語から離れて飄々と生きる志ん魚は、「師弟関係の・ようなもの」。師匠の志ん米のお転婆娘とは「恋愛関係の・ようなもの」。という二人と彼らを取り巻く人々を見てふと笑ってしまう雰囲気のようなものは、森田監督が描き続けた「人間って面白い」というテーマそのものであり、その心をしっかりと踏まえた温かい作品に仕上がっている。

35年前よりも丸くなって太った身体に、不思議な魅力をまとった志ん魚役の伊藤克信。不器用だけれどひたむきな志ん田の松山ケンイチ、2人が同居をして、便利屋の仕事をする共にある風景がいい。兄弟のような、師弟のような、そんな絡みがとにかくいいのだ。人って誰でもが「○○のようなもの」という不安を抱えていることもある。そういう時に、何者でもない自分を悩むのか、それとも「の・ようなもの」状態を楽しむのか、人によって分れると思う。
しかし、中途半端でもいいんじゃないかとも思う。何かにならなきゃなんて焦りって、そんなに必要ないかって気にもさせてくれる。ポジティブなメッセージがある映画でもあります。森田監督作品を彩った役者さんたちのカメオ出演にも、監督と映画に対する愛を感じました。
2016年劇場鑑賞作品・・・19
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<感想>森田芳光監督のデビュー作「の・ようなもの」(1981)を、森田芳光組のスタッフや出演者が、35年後の物語として展開した青春コメディであり、そこには森田芳光監督へのオマージュの映画でもあります。内容は、30過ぎても目が出ない前座の落語家、出船亭志ん田が、兄弟子にあたる元落語家の志ん魚を探し始めるところから始まる。そして志ん魚に出会ったことから、落語への情熱を取り戻して行くというお話。
志

ん魚は、師匠の死後落語の世界を離れてしまい行方知れず。ですが、その師匠の13回忌に行われる「一門会」を前に、タニマチの会長である三田佳子がお気に入りだった志ん魚の、新作落語「出目金」の噺が聞きたいと言い出した。
生真面目な志ん田は、脱サラをして入門したものの、芽がでないまま、30歳の誕生日を迎える。師匠の娘の由美に恋をしているが翻弄されるばかり。

落語家という役柄は初めてだという松山ケンイチ演じる志ん田(しんでん)。古今亭志ん丸さんに指導をしてもらい、本当は志ん魚が作った「出目金」を、「一門会」で志ん魚がお披露目するはずだったのだが、それを志ん田が覚えて志ん扇師匠のお墓の前で、一席を話すという場面で、志ん田が一皮むけるという。やっと噺家らしくなったようだ。

生真面目すぎる志ん田と落語から離れて飄々と生きる志ん魚は、「師弟関係の・ようなもの」。師匠の志ん米のお転婆娘とは「恋愛関係の・ようなもの」。という二人と彼らを取り巻く人々を見てふと笑ってしまう雰囲気のようなものは、森田監督が描き続けた「人間って面白い」というテーマそのものであり、その心をしっかりと踏まえた温かい作品に仕上がっている。

35年前よりも丸くなって太った身体に、不思議な魅力をまとった志ん魚役の伊藤克信。不器用だけれどひたむきな志ん田の松山ケンイチ、2人が同居をして、便利屋の仕事をする共にある風景がいい。兄弟のような、師弟のような、そんな絡みがとにかくいいのだ。人って誰でもが「○○のようなもの」という不安を抱えていることもある。そういう時に、何者でもない自分を悩むのか、それとも「の・ようなもの」状態を楽しむのか、人によって分れると思う。
しかし、中途半端でもいいんじゃないかとも思う。何かにならなきゃなんて焦りって、そんなに必要ないかって気にもさせてくれる。ポジティブなメッセージがある映画でもあります。森田監督作品を彩った役者さんたちのカメオ出演にも、監督と映画に対する愛を感じました。
2016年劇場鑑賞作品・・・19
