書棚の一段に、<講談社現代新書>が並んでいる。一頃、この新書版を好んで求めては読んでいた。
その中の数冊を再読するため、施設に持参しているのだが、読まないまま、というより読めないまま、積み重ねていた。
このところ、次第にというよりも、なんだか急速に、生活のレベルが落ちてきたような気がしている。
例えば、朝のうちに2問解くことにしている数独でも、一度で正解が得られなかったりする。
体力も頭脳も、急激に低下しているのでは? と、頭を傾げる日々である。
こんな調子に甘んじてばかりはいけないと、昨日から、『一休』を読み始めた。
読力、読解力ともに、かなり低下しているのかもしれないが、久しぶりに読むことの楽しみを味わった。
実におもしろいのだ。一休の生き方が。
作者の西田正好という方自身が、一休大好きな方のようだ。文章に熱がこもっている。
西田正好 著
『一休』 風狂の精神
一休の生き方は、常識的ではなかった。この本の副題にもあるとおり、風狂の精神を貫き、ある意味では、非常識ともとれるような、すさまじい生き方をした人であった。
大方の人間は、世間のしきたりに合わせて人生を生きている。それが無難であり、楽だから。私も、同じである。
私自身も、心の底では自らの信念を貫き、安易に妥協しない生き方を貫きたい思いながらも、一休のようには生きられなかった。
心満たされることのない妥協の人生を生きてきた。
一休は、自らの信じる道を生き、当時の社会や文化にも、大きな影響を及ぼすことができたのだ。
作者は、その一休の生き方を見事に描ききっておられる。一休の著作『狂雲集』を読み解いたり、足跡を調べ上げたり、その努力の熱量は大変なものであったろう。その徹底ぶりにも、筆力にも感心した。