川を上っている間は、水生昆虫などを積極的に捕食するが、上流域に達すると、各々縄張りを定め、川底の石についた苔を食むようになる。
川によって違うこの苔が、鮎の味を決めるわけだ。
日本でただ一か所、琵琶湖周辺の鮎だけは、海ではなく湖である琵琶湖に下り、生涯を淡水のみで完結する。
一種の陸封であるが、サケ科のイワナやヤマメなどのようなネオテニーではなく、ちゃんと成魚形態に成熟する。
お国自慢と言うわけでもないけれど、この貴重な純淡水鮎の味を楽しめるのは、湖国人の特権の一つ。
自分の生まれ育った郷里の川の味が楽しめる。
政治や経済の事はよくわからないが、そんな庶民のささやかな幸せがいつまでも続く国であって欲しい。
もちろん、湖国生まれのナキオカヤドカリにとっても、いつまでも忘れられない故郷の川の味なのだ。