シリアが内戦の枠を超えて、果てしない戦いが続いている。先月アメリカ大統領が、シリア政府が国際法で禁じられている毒ガス使用の可能性を指摘した。アメリカの武力介入の可能性まで言及した。更には、イスラエルが空爆してより一層混迷が深くなっている。
イスラエルの空爆は、イランを抑え込むとの理由である。宣戦布告もなく、圧倒的な空軍を持つイスラエルが、他国を平気で空爆するのである。最もイスラエルは認めていないようである。
シリア情勢は、中東の大国であるイランとイスラエルの代理戦戦争の様相を見せて来ている。当初は、アサド政権と反政府勢力の戦いであった。反政府勢力はアメリカとEUが後押しし、アサド政権は、ロシアが支援して中国がこれを黙認するという構図であった。
流れ出る情報は、人権団体と称されて、西側ばかりからであった。アサド政権の暴力的行為が圧倒的で、一般市民がこの犠牲になるというものであった。ところが、どうもこの構造はあまりにも単純すぎたようである。
少数宗派のアサド世襲大統領は、スンニー派を頼っていたが、イランを拠点にするシーア派が反政府勢力の支援に動いた。反政府政権支援では、アメリカと歩調をそろえるという奇妙な形である。
ここにレバノンの、最も過激なヒズボラが加わって支援を始めた。武器のみならず、兵士まで送っているのである。彼らはシーア派である。アメリカが反政府勢力に、兵器の提供すらしない理由がここにある。
ヒズボラとイランの天敵は、言わずと知れたイスラエルである。ブッシュの戦争でイラク情勢が混乱する中、イスラエルはシリアの北朝鮮製作と思われる核施設と思われていた、建物を空爆した経緯もある。
シリアの内戦は昨年までの、アラブの春とは明らかに異なってきてしまっている。イスラエルの内戦は今や、大国の思惑に加えて近隣諸国が極めて複雑に交錯する中で、出口のない戦いが進んでいる。この混乱を生んだのは、ブッシュのアフガンとイラク侵攻である。大国の責任はどこにある。