日本人は世界有数の卵好きである。年間消費量は252万トン程度であるが、解り易い表現はすれば一人当たり年間消費量が330個である。ほぼ毎日1個食べていることになる。
ところがほとんどの国民は、この卵が生産される現場を知らない。特に鶏たちがどのように扱われているかを全くご存じない。彼女たちは、ニワトリつまり庭鳥なのである。農家などの庭先でつんつん、土をつついている、かつての風景は今はほとんどないない。
地面から離されて、中空に浮いた狭いケージの中で、流れ来る輸入穀物を食べて、卵をひたすら産むだけである。この子たちは生まれる(孵化する)と直ぐに断嘴(デビング)される。その方がアニマルウエルフェアに沿っているというのである。嘴を焼く技術も機械も発達して痛みもなく素早くできるというのである。
ところが切断された嘴はそのままではなく、再生されるし上図のように上下不均等になるのも珍しくもない。こうした子は再度切断されるか淘汰される。
そもそも何故鶏は嘴を切断させるのか?
ブロイラーや平飼いだと、突き合わないためであるが、採卵鶏は羽根も広げられない狭いケージに浮いたままである。次々来る固いトレイの穀物を食べやすいようにするためにである。
手を飛ぶために進化させた鳥にとっての嘴は、神経が研ぎ澄まされた感覚器官である。タンチョウは目に見えない水中下の泥の中に獲物を見つける。シギたちは獲物を刺し、キツツキは木の中の虫を射止める。
鳥にとって、嘴は人の手のようなものである。それを切り落とすことで、より効率的な産卵を促す行為はあってはならない。ましてや痛みを感じさせずに切り落とすとか、意識もない時期にやるとかいう言い訳は、アニマルフウエルフェアとは無縁のものである。
日本の採卵鶏もブロイラーも、企業が生産している。雛を買って来た時にはすでに断嘴されている。鶏は自由に放たれていると、一日1万回以上地面と突きまわる。そうした意味でも、嘴を切断されることはストレスもたまる。
ニワトリの断嘴に反対する。