農家で取材中の酪農雑誌の記者と出くわした。その農家は、自家産のチーズを生産しているのであるが、その取材であった。チーズの作り方や売り先の取材らしい。
酪農家としての経営のスタンスや牛のことなど、我関せずの取材である。奥さんが、家族経営の中で取り組んでいることや、牛の健康状態や飼養管理など、記者は全く興味がない。ちょっと変わったことをやっている酪農家、と言った感じの取材のようである。
一般紙ならそれでもいいが、酪農専門誌の取材である。酪農に限らず農家のことや食糧一般へ興味もなければ造詣・知識が全くない。駆け出しかと思いきや、2年もやっているとのことである。これでは一般雑誌と同レベルの、興味本位のものでしかない。
横で聞いていて、あまりにもひどい取材なので、「あなた、今年はFAOが決めた国際家族農業年だということ言っていますか?」と切り出してみた。何も知らない。
せっかくだから、家族農業は世界の食料生産を安定にし、飢餓を救い環境を守り、地域紛争を抑える働きがある・・・程度のことを言っておいた。
日本中の高校の農業科が定員不足である。ご多分に漏れず、当町も同様である。定員割れというばかりではなく、普通科に入る学力のない子供たちが集まってきているのである。
農家の若い子たちは、TPPなど大人のやり取りや世情を敏感に受け取って、農業から距離を置くようになっている。
専門誌の取材ですら、上記のレベルである。農業の重要性を説こうといないのである。食料の必要性など関係ないのである。
農業は人の命と健康を守る仕事であること、農業は自然環境を利用し守る仕事であること、先人が築き上げた知識と風土によって生産される、人類が生存するために欠かせない仕事であることを説くことがない、こうして低レベルの専門誌は、農業衰退の一端を担っているのであろう。強くそれを感じ残念でならなかった。