今週の法話

法華宗北海寺住職-二王院観成による仏教用語と法話集です。毎週水曜日に更新いたします。

感動的な「なかにし礼・不滅の歌謡曲」

2010-11-20 09:45:23 | メディア
 NHK「プレミアム8」・「なかにし礼・不滅の歌謡曲」を見た。前篇1時間30分、後編
1時間30分の二部構成となっていた。なんとなく録画した。最初の一回は、大ざっぱに見た。
何の感動もなかった。真剣に話を聞かなかったからである。二回目は懐かしい歌につられて見
た。礼氏の話に興味がわいた。3回目はメモを取りながら真剣に見た。感動的な内容だった。
 現在の歌謡曲やポップスは音楽ではないと思っている。礼氏のヒット曲の時代までは歌謡曲
も良かった。現在の歌は聞くに耐えないと感じている。むしろ不快に感じる時がある。どうし
てこんなことになったのか不思議に思っていた。昔の音楽はメロディ-が主体だった。現在は
リズムが主体だと云われる。特に高齢者にとっては同じ思いの人が多いのではなかろうか。
 次に、歌謡曲の歌詞は生々し過ぎる、と思っていた。特に男女の愛を歌う歌詞が身近に感じ
られていやだった。反面、欧米などのジャズやポップスは歌詞の内容が分からず、メロディや
リズムを楽しんでいた。また、バンド演奏だけの曲が野僧は好きだった。自分の夢想の世界に
ひたることで満足した。
 しかし、今回の「なかにし礼・不滅の歌謡曲」は感動的なものだった。日本の歌謡界の認識
を完全に反転させられる説得力のある内容だった。とくに大正時代は自由、平等、博愛を求め
る社会情勢の中で、歌謡曲は3拍子だったという。
 昭和になって軍国主義が押し進められる中で、軍歌中心の2拍子となった。その中で、古賀正
男氏の名曲「影をひたいて」は、「まぼろしの影をひたいて」という女性を追慕する女々しい
男の歌だった、と礼氏は分析している。結局、この歌は軍国主義に抗することを意図したもの
だったのではないかと、と礼氏は云いたかったのではなかろうか。しかし、その後、古賀氏は
軍歌を数多く作曲するようになった。軍部からの要請と圧力があったのかも知れないと推測さ
れる。特に、「建設の歌」は、多くの若人などを積極的に中国などへ入植させ、命を落とす原
動力になったと礼氏は分析している。また、礼氏は古賀氏の自宅へ何度も招かれることがあっ
たという。その時、観音像を安置しているのを確認している。おそらく、若人を入植させ、死
地に追いやる結果になったことに対する贖罪から、観音像に手を合わせる日々だったのではな
かろうかと礼氏は見ているようである。一方、山田耕筰氏も「大陸の黎明」という軍歌を作曲
している。いずれも魂を売り渡す戦争犯罪人として連合国から罰せられるのではないかと心配
したと云われる。幸いそれは杞憂にすぎなかった。
 ところで礼氏が作家になったのは石原裕次郎氏からの偶然の誘いがあったからだと告白して
いる。昭和38年、伊豆のホテルで石原裕次郎氏の新婚さんだけのディナ-ショ-があった。
そこに礼氏も出席していた。ショ-の始まる前に、石原氏から礼夫妻は指名され、石原氏のそ
ばに座らされたという。実は、ロビ-で新婚さんの品定めを石原氏はしていたという。その中で
礼氏夫妻が一番かっこが良い、ということになったということである。そして何をしているの
かと聞かれ、シャンソンの翻訳をしていると答えた。日本人なんだから日本語の歌を作詞して
はどうかと進められたという。歌ができたら石原プロに持ってきてほしい、協力できるかもし
れないと云われたという。当時、石原氏は「太平洋ひとりぼっち」という映画の撮影中だった
という。この映画をぜひ見てほしい、と石原氏はいったという。その映画ができて見たら、礼
氏が忘れられないシ-ンがあったという。それはヨットの中で、短波放送を聞いていて、村田
秀男氏の「王将」の一節に「」ふけば飛ぶよな将棋の駒に、かけた命を笑わば笑え」という部
分で、「ふけば飛ぶよな小さなヨットに、かけた命を笑わば笑え」と石原氏が歌い、一粒の涙
を流すシ-ンに感動したと礼氏はいっている。それから「涙と雨にぬれて」という曲を礼氏は
作詞・作曲した曲を石原氏のもとにもっていったという。裕圭子、ロスインディオスの歌で発
売され、20万枚のヒット曲になったという。また、石原氏に頼まれて作詞したのが、「わが
人生に悔いはなし」で、発売2ケ月後に石原裕次郎氏は他界した。また、美空ひばり氏に歌っ
てもらった「さくらの唄」は、礼氏が自殺したいぐらいに落ち込んだときの曲で、そのエピソ
-ドも感動的な内容であった。
 一方、日本の歌謡界に新風を吹き込み、幅を広げたのは「ブル-シャト-」だったと述懐し
ている。しかし、現在のような歌謡界になった原因に対する分析は今一だった。なかにし礼氏
は今後ともわれわれ日本人に好い歌を作ってほしい、と期待している。

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