今週の法話

法華宗北海寺住職-二王院観成による仏教用語と法話集です。毎週水曜日に更新いたします。

天才、辻井伸行と山下清氏の類似点

2011-02-06 14:51:13 | 人間の資質
 天才ピアニストといわれる辻井伸行氏と山下清氏に興味
ある類似点がある。頭の中に何かを記憶すると絶対に忘れ
ないし、それをいつでも取り出すことができる。また他の
何かと繋いで利用できるという点である。その能力を音楽
の世界では「絶対音感」と云っている。何かの曲や和音を
聞くと、一瞬にして分かり、忘れない能力だと云われてい
る。
 具体的には辻井伸行氏は、CDを一回聞いただけで記憶
してしまう、と東京音大講師の川上昌裕氏は云っている。
また、他とを繋いで演奏することができる、とも言ってい
る。驚くべき記憶力と応用力である。
 一方、天才画家といわれた山下清氏は、一つの風景など
を見ると一瞬のうちに記憶し忘れない、と云われる。その
画像を部屋に帰ってから思い出しながら切り絵にするとい
う。デッサンして絵を書くのではないという。テレビや映
画などで画帳を持ってデッサンしているシ-ンがあるが、
あれは事実ではない、という。すなわち画帳を持ち歩くシ
-ンはフィクションということになる。
 また、山下清氏は放浪の画家といわれるように、あまり
金も持たずに施設を飛び出した、といわれている。したが
って放浪先で泊めてもらったり、オニギリをもらったり、
親切にしてくれた人に、お礼がわりに絵をプレゼントした
という。
 ここから先は伝聞であることをお断りしておきたい。先
月(一月)、テレビの「開運! 何でも鑑定団」で山下清
氏からもらったという一枚の絵が登場した。さらに先祖か
ら受け継がれた絵であるという。世界の国旗と軍旗が一枚
の絵になっている。これは本物と鑑定され、高額の価値が
認められた。恐らく、一度に見たのを書いたのではなくて、
何度かにわたって見た国旗や軍旗を一枚の絵にしたものだ
ろうという結果だったという。たとえ一枚の印刷物を見て
書いたとしても素晴らしい記憶力である。
 このような具体例からして、両氏の類似点が見えてくる。
一瞬にしてできる記憶力と、それを何度でも応用きる能力
である。いずれにしても、卓越した能力であり、すばらし
い人間としての資質である。一般的に云われているのは、
身障者や精神薄弱者には、絶対音感や、記憶力や何らかの
特質を持っている人が多い、といわれている。大変失礼な
がら、辻井伸行氏は全盲という身体障害者である。その原
因は、父親の医師という立場を考えれば、レントゲンの影
響ではないかと推察される。一種の職業病の影響と云える
のではなかろうか。一方の山下清氏は精神薄弱者と云われ
る。しかし、両者とも天才といわれる。「伝説のピアニス
ト」と云われるヴァン・クライバ-ン氏は辻井氏のことを
「奇跡のピアニスト」と云っている。楽譜を読めない若き
全盲のピアニストの出現に打ちのめされた、ということで
あろう。これまでは考えられなかったことだからである。
これまでのクラシック界には全盲のミュ-ジシャンはほと
んどいないからである。ジャズ界ではレイ・チャ-ルズが
有名である。身障者や精神薄弱者の方々は頑張ってもらい
たい。健常者にない能力を発揮してもらえれば、社会全体
に良い影響をもたらすことができると考えられる。
 辻井氏のピアノの魅力は、何と云っても、ソフトタッチ
の弱音が甘美な点にあると思っている。これは現代の歌謡
界やジャズ界に欠けている点である。また、強打する強音
とのコントラストが素晴らしい。第一、ジャズ界には、ほ
とんどフルバンドの楽団がいなくなった。一台のシンセサ
イザ-で数種の音を出すのでは味気ない。さびしい限りで
ある。しかし、ジャズのフルバンドよりも素晴らしいクラ
シック界の多人数のオ-ケストラがいることを辻井氏は教
えてくれた。おそらく辻井伸行氏はショパンの生まれ変わ
りではないかと思っている。辻井氏の出現によってクラシ
ック・ブ-ムが巻き起こるだろう。期待して止まない。

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