ssayさんの記事、電王戦について、そして続編のコンピューター将棋について・その3
に触発されて、 前から書こうと思っててずっと書けないでいたテーマ、電王戦についてやっと書きます。
まず、今回の企画、5人の現役プロ棋士 VS 5つの最強コンピュータ将棋ソフトは凄く面白かったです。
5週にわたってニコ生でリアルタイムに観戦して、かなり熱狂しました。
人類対コンピュータの戦いという図式。
いつもの観戦とは違って、頑張れ、人類!という共通項が得も言われぬ興奮をもたらしました。
その頃たまたま高校の友人たちと飲む機会があったのだけど、全く将棋に興味のなかった友人たちがかなり見ていて話題にしていたのには驚きました。
終盤はやっぱりコンピュータ強いよなあ、とか、山口恵梨子ちゃん可愛いよなあ、とか、かなりのファンみたいなことを言っていたので、このイベントの注目度の大きさ、そして新たなファン層を開拓したという意味も含め大成功だったと思いました。
興行ということで言えば、三浦八段が『悔いのない戦いができたのはよかったのですが、結果として興行的に次回に興味をつなげられなかったことを申し訳なく思っています。』と言っていたように、今回は人間側がなんとか勝って、コンピュータもかなり侮れない、もうそろそろ本気でやばいぞ、というくらいの結果で終わってほしかったです。
しかし、現実は厳しかったですね。
次回少なくてもあと一回は、ハラハラドキドキの対決を楽しませてほしかったというのが本音です。
ということで、我々にはっきり突きつけられたのは、すでにコンピュータはプロ棋士の力を越えてしまった、さらにその差はどんどん開くはず、という厳しいこの現実。
今回の出場棋士たちの鬼気迫る必死の形相、自分のすべてを賭けて戦う哀しくも美しい姿を見ていてこの現実をどう受け止めたらいいのかかなり時間がかかりました。
インパクトがあった電王戦が終わって、コンピュータ将棋と将棋の関わりについて、上記の記事でssayさんが問題提起しています。
『その成功をこのまま継続させていくことができるとは思えないほど、プロの将棋界にとって大きな課題ができてしまったこと、これを見逃してはならない。』
『将来的に見て、コンピューター将棋を取り入れるということは、プロ将棋界にとって、とてつもなく危険な要素を孕んでいるのではないだろうかと、いろいろな所で散見される意見をみて、そう思い始めている。』
『そうなると「プロ棋士よりも強い将棋ソフト」ができてしまうこととなる。そのことの重大性をプロ棋士の方々はどのようにお考えなのであろう?単に、プロがコンピューターと対局しても勝てないという問題に留まらない。現在行われている、あらゆる棋戦が成り立たなくなる恐れがある。』
『 「プロ棋士より強い将棋ソフト」で、トーナメントプロが研究したとしよう。Aという棋士はGPSで、Bという棋士はBonanzaで研究したとして、それぞれが実際の対局で研究した手を指したとする。それはプロ棋士同士の対局に見えて、実際のところはコンピューター同士の対局となりはしないのか?プロは単にコンピューターの代理人という立場に成り下がりはしないか?いや、そうなったら、もう既に将棋のトーナメントそのものが無価値となる。無価値となれば、当然、プロはプロでいられなくなる。これ以上コンピューター将棋の開発を進めるのであれば、それにより副次的に生ずるプロ棋界への弊害を考慮に入れる必要があろう。』
『その厳しい切磋琢磨の中にコンピューターを持ち込まないで欲しいのです。』
そして、電王戦関連記事も書いているし、上記ssayさんの記事にコメントしている英さんもこのように語っています。
『現在の共同研究による研究合戦も、高度な将棋を堪能できますが、将棋の個性を薄れさせています。また、共同研究やタイトル戦に現れた研究成果やトップ棋士の読みに乗っかって、高度な将棋をなぞってある程度の内容の将棋を指すこともできます。ソフトによる研究を実戦に応用するのは、上記の憂いを増幅させたものになります。私もソフト同士の代理将棋を指す存在に陥り、棋士の存在価値がなくなってしまうと思います。
それと、今後ソフトの棋力が人間をはるかに超えてしまったら、「羽生対森内」「羽生対渡辺」の最高の将棋が、ソフトが解析することにより「稚拙な将棋」と言う評価がされてしまう危惧も充分にあります。
対局における不正使用の可能性も高いです。』
ソフトがどんどん強くなっていくと将棋界の今後の発展はどうなっていくのだろうか。
さて、この件について、コンピュータ将棋の専門家、松原仁教授は週刊将棋でこう言っています。
(松原先生は明日(21日)早朝4時20分からのNHK視点論点に出演され、「将棋ソフト勝利の意味」というテーマでお話しされるようです。)
『勝ったり負けたりの勝負はこの2、3年限りで、その先はコンピュータの方が必ず強くなる。対決の時代は早く終わらせて、人間がコンピュータを道具として将棋のさらなる深みを目指す時代に進みたいとコンピュータ将棋の専門家は願っている。』
トップ棋士たちよりも格段に強い将棋ソフトができたとして、果たして人間は道具として使いこなすことができるのだろうか。
上記のssayさんたちが指摘するいろいろな懸念、危険性については杞憂で終わるのだろうか。
日本が誇る技術開発力を、将棋の未来のために、将棋のさらなる深みを目指すためにしっかり生かすことができるのかどうか。
棋界全体に、連盟に、棋士に、そして我々ファンにもそれが問われているのだと思います。
どちらにしても、今回興行的には大成功を収めたわけで、主催のドワンゴとしてはさらに話題性のあるイベントをやりたいに違いないので、次の電王戦をどうするのかも含め、コンピュータ将棋との関わり方についてはしっかり注視していく必要があるのではないかと思っています。
まだまだたくさん書きかけてるのだけど長くなるのでひとまずこれで。
続きます、多分。