うぉんばっとな毎日

大用、現前するとき、軌則を存せず

昆虫の同性愛行動

2008-11-18 21:19:15 | 農・食・医・環境
コウチュウ目のTribolium castaneumは雄同士で交尾をするようです(昆虫の同性愛行動はそんなに稀なことではないですが)。
この行動についての仮説を検証した研究がナショナルジオグラフィック ニュースで取り上げられていました(記事)。

そしてこれに関連してYahoo知恵袋で、「T. castaneumの同性愛について教えて下さいなぜそんな事するのですか?」という問いに対して「精子は体外でそれほど長く生存でき」ないことを理由にねつ造の可能性を指摘している回答がベストアンサーに選ばれていました(記事)。

昆虫学の知識のある人ならすぐにおかしいと気がつくことですが、ナショナルジオグラフィックの訳に誤りがあります。
「オス同士は同性愛行為において互いに精液をかけあっていることが判明した」とありますが、元の論文(Levan et al.)を見ると「mounting males often released spermatophores during homosexual copulations」となっています。
spermatophores(精包)をreleaseすると書いてあり、「精液をかける」とは書いてありません。

もちろん、研究は第三者による追試によって確認されるまではねつ造の可能性があるものですが、誤訳の記事をねつ造だと疑う根拠にされたのでは可哀想です。
科学論文を紹介した一般の記事には誤訳があることが多い(翻訳者の英語能力の不足and/or専門知識の不足のため)ので、注意が必要です。不思議に思った場合は元の論文を読むべきです。

精包授受に関する面白いビデオがありました(記事)。
雄が精包を置き、その精包を雌は生殖口で拾い上げるか、食べてしまいます。さあどうぞとばかりに置くのがいいですね。