昼下がりのブックオフに行った。正月に読む本の品定めが目的だ。2、3年前から気にかかっていた岩波文庫がある。ヴェーゲナー著「大陸と海洋の起源」上・下とヴィトゲンシュタイン著「論理哲学論考」の2著3冊だ。たまたま3冊とも揃っていたので、岩波現代文庫コーナーで見つけた「芭蕉・蕪村」と併せて買い求めた。世界地図を眺めたら誰でも気がつきそうなものだが、ほとんどの人は気がつかなかった。ごく少数の者は気がついても、地球物理学・古生物学・古気候学・地質学等の広い分野の夥しい資料を駆使して検証するまでには至らなかった。「はじめ地球には一つの大陸しかなかった。その後この大陸が次第に分裂し、移動して、現在の各大陸がつくられた。」という大陸移動説は、それまでの地球観を覆すひとつの革命だった。「大陸と海洋の起源」は1929年に刊行された第4版(初版は1915年)の完訳だ。「論理哲学論考」は、ヴィトゲンシシュタインが生前に刊行した唯一の哲学書だ。かれは「およそ語られうることは明晰に語られうる。そして、論じえないことについては、人は沈黙せねばならない。」と序論で述べている。数年前から蕪村の句を読み、かれの人物を味あうことが私のささやかな趣味になっている。蕪村に関わる著作で安価なら目を通したうえでとにかく買い進む。「芭蕉・蕪村」を買ったのはその一貫だ。