旅路(ON A JOURNEY)

風に吹かれて此処彼処。
好奇心の赴く儘、
気の向く儘。
男はやとよ、
何処へ行く。

人間の科学と現象学

2010年06月26日 18時22分44秒 | Weblog
心理学や社会学や歴史学(人間の科学)は、その研究が進むにつれて、あらゆる思考あらゆる意見、特にあらゆる哲学を、心理的、社会的、歴史的等外的諸条件の複合作用の結果として示そうとしました。心理学は、フッサールのいわゆる心理主義へ、社会学は社会学主義へ、歴史学は歴史主義に向かったのです。

ところが、そのためにかえって、これらの諸科学はおのれの基礎を危うくする羽目に立ち入りました。事実、もしも、いろいろな思考や精神の指導原理が、いつでも、精神に働きかける外的諸原因の結果に過ぎないとしたら、私が何ごとかを主張する際に拠り所とする『理由』は、実は私の本当の理由ではないということになります。私の主張の『原因』、つまり外からの決定だけをこととする原因はあっても理由はないことになるわけです。

メルロ・ポンティ著 「人間の科学と現象学」