裏日記「B面」

工房しはんが日々、ふと感じたり、しみじみとふけったり、ぴんとひらめいたり、つくづくと考えたりしてること。

世界のつくり/意識編・9

2024年04月09日 12時51分48秒 | 世界のつくり

9・食物連鎖って

彼が最当初にゲノムから命じられたのは、ほんのわずかなことだった。
「死なないこと」と「増えること」、あとは「自分のことは自分でやること」・・・くらいのものか。
そこからはじまって、彼が無意識※1に数億年を過ごすうちに、内蔵するゲノムは大きく変容していった。
ちょっとずつ、ちょっとずつ、コピーエラーによる塩基の置き換えが生じ、余分がつながって伸長し、次第に絡まり合い・・・いつからか単らせんは二重らせん構造になり、要するに例のアレになった。
気づけば※2、ゲノム本体であったはずのRNAは、次世代ゲノムとして勃興したDNAの使いっ走りとなってた。
長大なDNAの塩基配列の中には、膨大な無駄な情報が混じるようになったものの、中には有効な情報の置き換えがあり、環境変化と生存競争の中で実用性のある形質変異を遂げることになった個体は、淘汰の中で生き延びる確率を高めた。
こうした成果から、選り抜かれたゲノムは更新をつづけ、種全体の進化を高等化させつづける一方で、意味のない形質変異を強いられた個体は駆逐されていった。
新たに出現する実用性は多方面にわたり、各個体は独自に能力を多様、多角にアップデイトさせていく。
あちらが長くなれば、こちらは太くなり、そちらは硬くなって、どちらがより強い?という具合いだ。
種の進化は戦略的な多彩さを帯びて、生態系は複雑さを極めていく。
こんな軍備拡張比べの結果、必然的にゲノムは次のような命令を発することになる。
「あいつを体内に取り込んでしまえ」と。
それを受け、別の個体のゲノムは命ずる。
「飲み込まれないように防御しろ」と。
あるものは矛を実装し、対してあるものは盾を身につけた。
食うか、食われるか。
弱肉強食の食物連鎖がはじまった。
そんな淘汰圧のストレスは、さらに種に進化を促す。
リアルな実戦において、変異を有効に活用できたものだけが生き残れる、シリアスな世が到来した。

つづく

※1 彼は自律式で動くものの、意識はない。彼はまだ、機械なのだ。
※2 彼は気づけないので、気づいたのは後の世の学会だ。

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園

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