マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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西増の地蔵盆

2017年04月19日 08時59分31秒 | 大淀町へ
“みかん蔵”をテーマに挙げた写真家Sさんが取材した地域に野菜造り立て御膳を供える地蔵盆があると話していた。

その場はどこであるのか前月の7月23日に下見した大淀町の西増(にしまし)。

「増(まし)」の文字をもつ大字は大淀町の三地域。

「増」に入る口は「増口」。

そこより山間部奥に「増」があるその中心部に想定される「中増(なかまし)」。

そこより西寄りにあるのが「西増(にしまし)」である。

西増の地蔵盆は6、7カ所の地蔵尊があると聞いていた。

うち1カ所は吉野山の桜守家が祭る地蔵さんだ。

前月に訪れた際に場所を確認していたからすぐにわかる。

当地へ着いた時間帯は午後5時10分。

明るいうちに地蔵尊の場を見つけておく。

初めに拝見した祠の地蔵さんに野菜造りの立御膳があった。



バットと思われる棒を持つ人形。

スイカを土台に串挿ししたと思われる人形の胴体の野菜はなんだろう。

腕はインゲンマメで顔はプチトマト。

周りを彩るのもプチトマトだ。

その下に置いてある紙箱に「51」とあるからイチローであるが、右利きバッターだったっけ。

それとも鏡に映ったイチローかも・・・。

その場から坂道を登っていく。

そこにあった地蔵さんは蓮の座に両手を合わせて座っていた。

珍しい形式の地蔵さんは集落全域が見える高台にある。



そういうことから高見の地蔵さんと呼ばれている。

地蔵さんの下にある立御膳は誰が見てもわかる浦島太郎だ。

「au」の文字に「by浦ちゃん」とある。



auのコマーシャルに登場するお伽噺の三太郎。

桃太郎、金太郎に浦島太郎であるが、この場に登場したのは浦島太郎だ。

トウガンの皮部分が亀の背中。

足はキュウリで頭はナスビ。

口を開けた亀は実によくできている。

そんな亀さんに跨った浦ちゃんの顔はドロイモ。

笑顔が綻ぶ浦ちゃんの髪の毛や髭はトウモロコシの毛。

胴体は白ナスビで足が白ネギで作った。

高見の地蔵さん下はテーブルを出してもはや宴会前の状態。

夕刻になればもう少し人が集まるらしい。

西増の地蔵盆は大字の専念寺の僧侶が地区を巡ってそれぞれの地蔵さんに念仏を唱えて法要するという。

その巡拝には子供たちが随行する。

午後6時半、子供たちが専念寺に集まって練習をするらしい。

廻り法要は午後7時から始まる。

西増にあるすべての地蔵さんを廻り終える時間帯は午後9時ぐらいになるそうだ。

「auの浦ちゃん」から一旦は下って村の道を上がっていく。

道は狭いから車を対向するにはちと難しい。

どちらかが下がるか、登るしかできない狭隘な道を抜けていく。



その先にあった辻にある地蔵さんは立御膳を作り終えて提灯を吊る作業をしていた。

地蔵さんを納めている祠は昭和50年9月12日に再建された。

そのときに銅板葺きに替えたようだ。

提灯を吊るす仕掛りに葉付き竹を立てる。

そこに水平に架けた竹に電灯線をひいて点ける提灯を吊るす。

ここの立御膳は今夏にヒットしたシン・ゴジラ。



細く長いカボチャを胴体にゴーヤの手足。

飛び出す目ん玉はプチトマト。

火を吹く舌は赤ピーマン。

迫力ある姿で立っていた。

そこより右回りに下って桜守家が祭る地蔵さんを拝見する。

ここも同じように水平に架けた竹が提灯吊るし。

御膳は立御膳でなく野菜を盛った御膳であった。

さらに下っていった辻に地蔵さんがある。



立派な屋根瓦もある祠は地区一番の大きさであると思った。

高さもあるから子供の身長では手が届かないくらいに高い石段組に建てている。

お参りにくる子どもたちにあげるお菓子を乗せた祭壇向こうに立御膳がある。



まん丸いスイカに貼り付けたゴーヤは五輪の印。

選手なのか観客なのかわからないがさまざまな野菜で作った顔ぶれが並んでいる。

ニンジン、ナスビ、キュウリ、ヒモトウガラシ、ジャガイモ、シイタケで作った顔に愛嬌がある。

土台下は金、銀、銅。

こればっかりは野菜で埋めることはできなかったようだ。

提灯吊るしは道路一杯に亘って架けていた地蔵さんなど地区を周回して5カ所の御膳を拝見した。

あと2カ所あるようだが、時間切れ。

午後5時半には一旦この地を離れる。

再びやってきた時間帯は午後7時50分。

廻り法要をしていた僧侶や子供たちの姿を見つけたがついていけなかった。

車を停めた処に一番近かったリオ・オリンピックを表現した地蔵さんに立ち寄る。



灯りが点いた立御膳は雰囲気が違うように見える。

まるで夜間開催のオリンピックの場のようだ。



小さな子供さんはお母さんに抱っこされて参拝する。

次から次へと参拝する子供たちに役員さんがお菓子を手渡す。



ここの地蔵さんはほぼ終了する午後9時に垣内におられる導師が般若心経を唱えるそうだから、そのときに燈明をあげるのだろう。

今は一巻であるが、かつては三巻も唱えていたという。

それも拝見したいが、他所も拝見したい。



イチローはどういう具合になったのか。

電灯線をひいた明かりの提灯に照らされてバットを振っていた。



そんなわけはないが、そう見えるのである。

時間も夜8時ころになればここも子供たちが参拝する。



小さな子供は親御さんがついての参拝だ。

そこより坂道を登って高見の地蔵さんを目指す。

その通り道は竹を刳りぬいた明かり窓がいっぱい並ぶ。



手造りの竹明かりはさまざまな形がある。

スイスイ泳ぐ金魚にホタルの灯り。

顔もあればお月のような形もある。

思うように作っているからなんでもあると作り手の男性が話していた。



竹明かりはそれだけでなく盆踊りの情景もある。

躍る姿は女性ばかり。

団扇を手にして踊る姿は実にさまざま。

これだけでも和ませるのにまだまだある。



うーさぎ、うさぎ、何見て跳ねる・・十五夜、おー月さーん、見て、跳――ねるではなく、ぺったこ、ぺったこの餅搗きだ。

何の鳥かわからないが、それらしい鳥の明かりもある。



燈花会も負けるぐらいの力作は地蔵盆を幻想的にしてくれた。

竹明かりを見下ろす高見の地蔵さんも孫を抱っこした婦人も参拝する。



この浦ちゃんはよくできているなぁと云っているんだろうか。

県内事例の多くは提灯そのもの奉った子供の名前が書かれているが、ここでは風鈴のようなお札に名前があったと付記しておこう。

(H28. 8.24 EOS40D撮影)


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