マネジャーの休日余暇(ブログ版)

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奈良県立民俗博物館併設古民家・旧前坊家杉皮屋根葺き替えお披露目建物見学会②

2021年05月19日 09時13分16秒 | 民俗を観る
令和3年3月6日(土)、7日(日)は、旧前坊屋根葺替完了記念の内部特別公開。

両日限りの特別一般公開を見逃すわけにはいかない。

奈良県立大和民俗公園入口ゲートから歩きだし「旧前坊家」に到着するまでの時間はおよそ15分。

早い人なら10分もかからなかっただろう。

見上げた「旧前坊家」。

2階の窓を開放している。

今まで見たこともない光景に、ある意味感動を覚えたのは言うまでもない。

写真でもわかるように、「旧前坊家」を南側から見れば、2階建て。

右側にぐるっと周れば1階建て。

窓を開放していた2階は、離れ座敷である。



写真に写りこんだ来訪者は、内部公開の見学者。

歩く左手側建物を水平にみていけば、2階が、あれれ・・いつの間にか、1階の玄関に、という不思議な建物。

懸造り(※吉野建て)と呼ぶ独特の特徴をもつ建物である。

右手の建物は旧木村家住宅。施設作業に、職員さんの手よる日常の作業清掃がある。



たまたま掃いておられたので撮らせてもらった。

その旧木村家・収穫した稲を干すハザカケ越しに見る「旧前坊家」。



前述に説明した2階建て構造がわかるだろうか。

白い障子は、主屋の1階玄関からあがっていけば、離れ座敷に行き交う渡り廊下がある。

その渡り廊下に沿って、四畳半、四畳の2室がある。

その部屋の窓が白い障子。

入室したらわかるが、その2室の手前に便所、浴室がある。

さて、内部公開である。

準備が整ってから担当のTさんから大まかな説明を受けて入室。

玄関に貼ってあった検査章のあれこれ。



吉野町の「家屋調査済」章から、住んでいた様子が見えてきそうだ。

日本赤十字・社員に大阪ガスなど懐かしいプレートもある。

大阪市内に住んでいた住宅地も同じようなものがあったな、と思い出す。

入口で靴を脱ぎ、スリッパに履き替えて見学する。

まずは、三畳間の「みせ」。



プレート表記に、見せる「見世(みせ)」の文字。

括弧書きに「店」とある。

「見世」と「店」は、同じ意味

詳しいことは、省くが・・「みせ」は、「見せる」から始まった。

「見せて売る」棚を設けた「見世棚(みせだな)」。

商店の原型になった商売方法の「見世棚」。

「見世棚」の略が「見世」。

この大和言葉の「みせ」に、同じ意味の漢字である「店」を充てたようだ。



その奥の部屋は、八畳半の「みせおく」。

「みせ」の奥にある部屋だから「みせ」の奥の間の「みせおく」。

今回の公開イベントに、花柄の唐傘を装飾していた。

次の間は、四畳の「なかのま(中の間)」に、奥が七畳半の「なんど(納戸)」。

その奥に押し入れもあるが、暗くて見えない。



納戸の間から、隣の部屋をみれば、籠が見える。

ぐるっと向こう側に周ってわかった籠は、嫁入りの籠。



室内保管されていたから綺麗な状態の籠であるが、以前に置いてあった場所は「旧木村家」のような気がする。

「みせ」、「なかのま」に続く部屋は六畳の「だいどころ」。

室内移動もできるが、通り土間からも上がり降りができる。



その土間の一角に、竈がある。

通り土間の最奥は、浴室に続く、つまり土間続き。



通り土間を歩いてわかる下り坂。

徐々に下がっていく状態がよくわかる。

籠を置いていた部屋は八畳の「付書院」がある「ざしき」の間。

そこから離れ座敷に行き交うことができる渡り廊下になる。



外側に手すりを設けた渡り廊下。

歩けば、ギシギシ音の鳴る渡り廊下。

対面に見えるのが離れ座敷である。



見学者たちが、思いを寄せて拝観している。

懐かしい間に、昔の暮らし。

それぞれの生活空間から暮らした記憶が蘇る。

離れ座敷は、三間ある。



渡り廊下から見た三間は、六畳の「しもざ」、同じく六畳の「なかのま」に最奥が、六畳の「かみのま」。

床の間に付書院、物入れに押し入れもある間続き18畳の間。



襖を外したら、解放感に浸れる。

できるなら、この広間で大の字になって寝てみたい。



窓は全開、気持ちのいい3月初めの風が流れる。

離れ座敷から、渡り廊下向こう側に建つ2階建て主屋を眺める。

今回の主な修理目的は杉皮葺き屋根である。



右手前の渡り廊下の杉皮葺き屋根が見える。

綺麗に葺いた杉皮屋根が美しく見える。

その先の主屋の屋根もまた杉皮葺きであるが、比較したら、違和感がある。

遠目になるからわかりにくいが、今回の葺き替えではなかった。

担当のTさんの話によれば、何年か前に葺き替え先行工事をしていたそうだ。

それから数年・・苔むす状態ではないが、ややくすんで見えるのは、経年経過の現われであろう。

ちなみに、2階部分は、今回の公開見学対象には含まれていないが、六畳の「かみのま」と八畳の「しもざ」がある。

一番見たかった離れ座敷。



立派なカメラをお持ちの男性。

座敷に座ったまま、床の間方向にレンズを向けて撮っておられた。

その他にもカメラマン姿は何人も・・。

いい写真を撮られたことだろう

離れ座敷を見て主屋に戻ろうとして振り返るそこも窓は全開。



向こう岸に見える建物は、「旧木村家住宅・主屋」。

十津川村特有構造の建屋。

屋根は「旧前坊家」同様に杉皮葺き。

それだけでなく、今ではもう見ることもない、貴重な石置き構造の屋根である。

先だって、拝見した県立民俗博物館。

耐震工事を終えてリニューアル公開に歴代の民博ポスター展があった。



うち、一枚が、十津川村上葛川の地にあった石置き屋根

当時の古民家をとらえたポスターと同じ景観風情に誘える。

2階の窓から見える旧木村家の全景。

屋根の構造がよくわかる映像。

これまで見ることもなかった内部公開見学に参加して、ほんまに良かった、と思う景観にも浸っていた。

一通り、内部構造を拝見して屋外から見た外観。



外に構築した石垣もまた風情がある。

あたかも当時の姿が蘇り、その場に居たような錯覚に陥る壁構え。



数人のハイカーさんが見える建物が離れ座敷。

さらに、右へ廻ってみる渡り廊下。



ハイカーさんたちは、背伸びして覗き込んでいた。

おかげで建物の高さがわかる映像になった。

渡り廊下、離れ座敷の1階部分は、蔵のような構造。

内部は公開していないからはっきりしないが・・。



その付近に置いてあった機械は、稲藁結いの機械。

田所~中型製縄機など他に2台。



玄関口にも1台ある。

この製縄機もまた農機具の展示物であろう。

ざっと見学し終わって、ふり返り。



「本日の見学コース」とあるが、コース資料は、昨年の11月21日(土)、22日(日)に使用したものを再活用された。



なお、吉野建ては、吉野山だけでなく、下市にもある。

吉野川沿いに建つ民家もまた吉野建て構造。

参考になりそうな2点のブログが見つかった。

(R3. 3. 7 SB805SH撮影)


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