マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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新住のお仮屋

2011年10月25日 06時40分07秒 | 下市町へ
前週に建てられた下市町新住(あたらすみ)のお仮屋。

当地ではこれをお仮宮と呼んでいる。

八幡神社の祭りに際して今年の頭家に当たられた家の庭にそれがある。

氏神さんの分霊を祀るお仮屋である。

巨大で特異な形を建てるには工務店を営んでいることから車の出し入れを考慮した場所を設定された。

四方を竹とクリの木で囲った土台を築き大きな青竹を立てる。

周りには上下にたくさんの檜葉を竹で編んだものに括り付ける。

中心に太い孟宗竹、後ろ側は斜めに水差しの筒を挿し込む。

これは神さんが遷ったご神体のサカキや葉の付いた笹などが枯れないようにする水入れである。

後からサカキを通すので挿し込み具合は加減が要る。

そこに水を注ぐのだが、その水汲みは毎日のことだ。

氏神さん八幡神社は山の方角。

氏神が鎮座する宮山から流れる水は地下水となって吉野川に注ぐ。

水が昏々と湧きでる大自然の清水は「風呂の場」。

温めだからその名が付いたようだ。

味はまろやかでコーヒーに丁度いいのだと話す頭家のN氏。

お仮屋は正面に御簾(みす)を据えて、下部は斜めに竹矢来を、さらにその下の檜葉を切り取って間に加える。

そうして恵方の方角に鳥居を、右横に木製の燈籠を立てて杭を打ち込み、周りは二重の竹囲い。

吉野川の川原で集めてきた玉砂利石を敷き詰め飛び石を配置して苔を置いてできあがった。

平成20年に取材させていただいた時の様子はそうであった。

この年も同じように設計図を基に建てたようだ。



その夜。とはいっても日付けが変わった午前3時。

頭家は人に見られないように八幡神社へ行って神遷しされたサカキ(宮山で採取)を手にして戻ってきた。

「お遷りください」と神さんに申して帰った。

それをお仮屋の頂点に挿し込んで注連縄を張った。

それからの毎日はお神酒、洗米、塩を供えて灯明に火を点けて手を合わせる。

神社へ参拝するときと同じ作法でそれをされる。

夕刻も同じようにするが、木製の燈籠にローソク一本を立てて、火を灯す。

ご婦人とともに手を合わされた。



こうして頭家の参拝は9日の仮宮祭の営みを経て翌月16日の本祭まで続けられる。

かつて新住の宮座は上座が8軒、下座も8軒であった。

昔はアンツケモチを作って村内60戸に配った。

その量といえば八斗も搗くというから相当なモチの量である。

現在は村の行事になったことから年中行事の詳細を記した「新住八幡神社祭典行事誌 宮座講」として纏められつつある。

つつあるとしたのは誰でも理解し判りやすいようにさらに工夫を凝らしているからだ。

50頁以上にもなる誌料は立派なものであった。

その頭家では古い寺などの改築工事を担うことが多い。

そこから出てくる廃材の一つに鬼瓦がある。

捨てるには惜しいと貰って帰ってくる。

江戸期のものも相当数ありさまざまな形がある。

所狭しに並べられた瓦は屋根の上。

まるで瓦の博物館のようだ。瓦の研究者にとっては垂涎で貴重な文化財であろう。

(H23. 9.25 EOS40D撮影)


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