マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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五井町の蛇巻き

2014年06月18日 07時21分30秒 | 橿原市へ
度々訪れていたが、橿原市の五井町で正月初めに行われる蛇巻きの在り方を拝見するには始めてだ。

これまで、見たのは蛇巻きを終えた後日ばかりである。

昨年に訪れたときも終わったあとだった。

蛇巻きの日程決めは水利組合。

それが決まれば春日神社の会所などに張り紙で知らされる。

数日前の正月三日に訪れたときは宮守さんとトーヤさんが元旦祭の片付けをしている最中であった。

その際に聞いた春日神社境内にあるお薬師さんの仏像盗難事件。

盗られてしまったことから、仕方なくお薬師さんは新しくしたと話していた。

今年の蛇巻きは11日の朝8時。

成人の日の前々日だ。

境内にとんど場を設けて火を点けた。

各家で正月を飾った注連縄などを燃やす。

氏子たち20人ばかりが作業を始めてだした。

五井町の水利組合は11戸。

旧村全戸で90戸にもなるが、新町も増えて150戸数にもなると云う。

旧村農家一軒、一軒が寄せたモチワラは30束にもなる。

境内にある樹木の幹とか、座石にバンバン打ちつけるワラ打ち作業。

ワラのシビが飛び散って辺り一面は藁埃だらけになった。

正月飾りもとんどで燃やしているから燃えカスがいっぱい。

風に舞ってこれもまた辺り一面に黒い燃えカスが飛んでくる。

それを避けながら、立ち位置は風が舞う度に移動する。

長老らが藁縄を三本拠って編みだした。

太い藁束に括りつけてできあがったのは蛇頭だ。

両端にある丸めた形が「耳」で、まん中にある一本は蛇の「舌」だと云う。

梯子に掛けて三人がかりで太くしていく。



何度か蛇綱作りは交替する。

力仕事だけに体力が要る。

かつては藁だけで胴体を拠っていた。

今では心棒になる部分に市販のロープを入れて作る。



およそ40分かけて作った蛇の胴は長さが23メートルにもなった。

「いつもそれぐらいや」と云う。



かつては作った胴をU字型に持ちあげて子供らを巻いたそうだ。

その行為を蛇巻きと呼んだのかどうか・・判らない。

蛇ができあがれば直ちに高取川の川堤に運んでいく。



長い蛇はくねくねと動く蛇そのものに見えた。

五井橋付近にある二代目のヨノミの木に登って蛇を巻きつける。



「50年ほど前はもっと太いヨノミで、しかもジャはオス、メスともあった」と云う。

子供に巻き付けていたのも同時代。

この日の蛇巻きには子供の姿が見られなかった。



蛇頭の向きはアキの方角。

今年は東北東。

「あっちや」と下から指示があってその方角に蛇頭を向ける。

幣を数カ所取り付けて、幹周りもぐるぐる巻きにする。

この姿が蛇巻きなのであろう。



サカキを立ててお神酒を蛇にふり掛けて終わった。



手を合わせて拝む。

昭和59年から2カ年かけて調査記録した奈良県教育委員会発刊の『大和の野神行事』報告書によれば「五井のノガミ」はツナクミまたは土橋のノガミサンと呼ばれていたが、蛇を共通項にしているからなのか、どことなくカンジョウナワカケが変化したように思えた五井町の蛇巻きであった。

(H26. 1.11 EOS40D撮影)