──中井久夫「精神科医からみた学校精神衛生」
人に話すとみるみる楽になる。しかし、それは心の中であたため反応させてしかるべきものを
水に流したからで、いわば当然なのだ。
医者も気をつけねばならない。自分で考えあぐねたことは同僚…に相談すべきであり、
さらに指導医には克明に報告して批判を仰ぐのが正道とされてはいる。
それはそうなのだが、何事も副作用なしには済まないので、患者の秘密を人に話すことはもちろん、
カルテに書いてさえいけないというユングの極論にも根拠がある、と私は思う。
相談し合う、批判を仰ぐ、という大義名分のもとに、
治療の際に生まれる疑問や仮説をもちとおす緊張を解除しようとしたり、
あるいはもっと安易な自己満足すなわち自己の努力あるいは
その〝成果〟の同僚による是認肯定を求めると、なるほど医者の精神衛生は一時良くなるだろうが、
治療の気が抜けるという〝副作用〟の比重の方が大きいと私は思う。
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