鼎子堂(Teishi-Do)

三毛猫堂 改め 『鼎子堂(ていしどう)』に屋号を変更しました。

母の遺した薬②

2022-06-12 20:53:57 | 健康・病気

正午から雷雨。

雨降ったり、止んだり、急に激しい夏の光が差し込んだり・・・日曜日の梅雨の空は、忙しい。

 

胃腸薬・エスマーゲン錠の最後のひと箱を開封して、さて・・・。

母の遺した薬は、まだまだあって、竜骨牡蛎湯(錠剤)、当帰芍薬散(錠剤)、加味逍遙散(粉末)、人参湯(顆粒)、麻黄附子湯(顆粒)、センブリ(錠剤)、苓桂朮甘湯、疎経活血湯。

薬ではないが、プロポリス液、プロポリス服用時に使うゼラチンのカプセル、薬を飲むときに使う袋状のオブラート。

関節痛に効くらしい?エミューオイルの軟膏、ゲルマニウムテープ、虫刺され用の軟膏(3本)。

 

このほかにも、まだまだいろいろな薬剤を日替わり?・・・というか、症状が現れるたびに服用していた母であった。

一時的に症状が緩和すると、ちがう部分に症状が出てくるので、次々と飲む薬が変わるし、服用して効果があると、その薬の信望者となるけれど、身体が薬に慣れて、効果がなくなると、また違う薬を頼り、違う薬で、症状が治まらないと、またモトに戻り・・・自身が亡くなる迄、薬のループにはまり込んでいた。

この薬は、蕁麻疹がでたから、ダメだっていったのに・・・と説明しても、翌日には忘れるのに、自己で体験した『効能』があった薬などは、メモ書きしておいて、同じような症状が出ると、それ迄、放りっぱなしにしておいたメモなど(他にも『安心』、『壮快』、『私の健康』などの健康雑誌のバックナンバーを押入れから)探し出して来て、止めた薬をまた買う・・・。

高血圧者は、止めておいた方がいいと説明されたのに、高額な高麗人参を欲しがり、服用しては、血圧が上がり、夜間外来へ連れていけと言い出したりした結構、滅茶苦茶な晩年でもあった。

高麗人参などは、一例で、残ったエミュー・オイル(薬とはまた別物だけれど)なども、数回使用して、かぶれたといい、使うのをやめるけれど、また関節痛などが起こると、ソレを忘れて、患部に塗り始める・・・なんてこともあった。

体質に合わないから・・・と取り上げても、無駄にカネを持っていたから、高額な通販で、リピート買いして、結局、使われずに利用期限切れ・・・といった健康サプリメントなども数知れない。

 

若い頃(たぶん、二十代後半頃から)から、体調が悪くなり出して、幼い頃患った中耳炎が悪化してきたのが始まりで、そのあと胃下垂などによる胃腸の不調(これは、老年期にはいって、太り始めた頃から緩和されたもよう)、そして、半世紀にわたって、不眠、めまい、耳鳴りなどを訴えていた。

・・・母に直接聞いたわけではないが、これらの症状は、定年迄務めていた職場(保育所)での人間関係と、そしてたぶん・・・再婚した夫(つまり、私の父)が原因だったように思う。

前夫の方が、よかったんじゃないのか・・・と、後に、異父姉から、少し聞いた話で、推測した。

ハタチ前後の貧乏な小娘(母)が、官職の家に嫁いで、同居する舅、姑、義祖父母などの厳しいお作法(躾け)?に耐えられたなら、たぶん、私の父と再婚するより、多少マシだったのでは・・・とも思うけれど。

それでも再婚するという選択を間違えたような母ではあったが、再婚後は、耐え抜き?夫亡きあと、(多少意のままにならぬけれど)面倒をみてくれる娘を女中扱いして、気儘で、自由な生活で、自身の年金収入もあり、金銭には、困らぬ生活を得た。

 

その母が、最期まで得られなかった『完全』な健康。

その健康も60歳代から80歳代前半くらいの四半世紀は、多少の不調はあったものの、わりと穏やかに過ごせたのではないか・・・。

ただ、コレばかりは、本人に聞かないとわからないけれど。

いつも健康不安、死への不安は、拭えず、内心は、辛かったのもしれない。

 

離婚せず、ずっと前夫の元にいたなら、老後四半世紀を気儘で、自由に迎えられたかどうかはわからないし、あれ程、毎日、思い悩んでいた『死』も、あけっけないくらい簡単に、朝起きて、炬燵に移動して、暖かい部屋で、眠りながら逝ってしまった。

その最後の結末が、分かっていれば、母は、少なくとも『死』について脅え、悩み、苦しまずとも済んだのかもしれない(と思っている)。

 

そんな母の最期のよりどころは、『薬』であった。

医師の処方する薬、市販薬、漢方薬、野草・・・健康を維持できるなら死んでもいい・・・くらいに、毎日、毎日、薬が手放せないひとであった。

一番高額だったのは、1丸3000円する日水清心丸(牛黄清心丸)であったと思う(或いは、もっと高額な朝鮮人参だとか、買っていた形跡もありで)。

金箔に包まれた牛黄を蜜蝋で固めて、その蜜蝋を割って、小さな丸薬を取り出して、服用していた。

効果があるのか、無いのか・・・そのヘンはわからないけれど、少なくとも、『お守り』替わりと言っていた。

結局、その『お守り』も効果を発することもなく、ただわずかな安心の材料となっただけであったような気がする。

 

薬に頼りきり、信じられるのは薬だけ・・・薬大好きな母の一生。