鼎子堂(Teishi-Do)

三毛猫堂 改め 『鼎子堂(ていしどう)』に屋号を変更しました。

『白昼の死角:高木彬光・著』

2012-03-04 22:54:05 | Weblog
くもりがちで寒い日曜日。


・・・というわけで、昨日の土曜日から読み始めて、深夜に読了。

この小説は、前に一度読んでいる。
病院のベッドの上で、しきりに読んでいた。

天才詐欺師の物語である。
たしか、映画にもなって、夏木勲さんと島田陽子さんが主演したような記憶があるのだけど。
角川さんあたりで、映画化したんじゃなかったと思っていたら、東映さんだったようだ(・・・と文庫版の解説に書いてあった)。当時の文庫版は、角川書店版だったような記憶もあるんだけれど、コレも記憶違いだろうか?
主題歌をダウンタウン・ブギウギ・バンドの宇崎竜童さんが歌っていらした。

ただ、今回、こういう内容だったか・・・という詐欺の手口については、全く忘れていた・・・というよりは、物語の展開が面白くて、詐欺の手法については、ほとんど理解できなかった(そして、現在も・・・)。
勧善懲悪・・・という視点から見えれば、多分、この物語の主人公:鶴岡七郎は、外れているというより、対極の『悪』そのものである。
けれども、鶴岡七郎の天才的な才能は、善悪を超えて、読者(私です)を魅了する。
法律に、正義は、ない!
敗戦後から、混乱期の昭和20年代。
信じていたものが、根底から覆された時代である。
昭和20年代の空気感(実際には、映像でしかみたことがないけれど)が、ダイレクトに反映されて感じることができる。
同じ、昭和20年代を舞台に執筆された作品の多い京極夏彦さんの描く昭和20年代は、私と同じ映像から導きだされた創作上の昭和20年代なんだな・・・と改めて思う(当然、彼もまだ生まれてはいない)。
実際に昭和20年代を生きた高木彬光さんは、よりリアルに昭和20年代という異常な?時代を描ききっている。

そして、この主人公:鶴岡七郎には、モデルとなった人物が実在しているそうである。

以前に読んだときは、それ程、感じなかったのだけれども、著者の高木彬光さんは、一種、神がかり的な占い達人でもあり、運命の研究者でもあったから、そういう視点で、この物語を読んでみると、また違った面白さがある。

こういう悪の天才にも、運があって、それに左右される後半は、早く次のページを読みたくなる。