写真上はホテルに併設されたバー、ゲ・バックのアップルパイ。娘が撮影。添えられたリンゴのコンポートもホイップクリームもアイスもチョコクリームもすべてがほどよい甘さで、くどさがない。表通りに面しているのに、目立たない狭さが常連を呼ぶのか、彫りの深い木彫の長机を持つ老舗の風格に人が集うのか、昼なお暗い照明がいいのか、次々と常連がやってきては一杯を頼んでおいしそうに飲み干し、バーの主人とちょっと語っては10分ほどで去って行った。バーなのにケーキがあるのがおもしろい。
【江戸時代からある? バー】
アムステルダム駅からほど近いホテル・プリンス・ヘンドリックに併設されたバー。
ここで頼んだのがアップルケーキ。これが絶品。リンゴのすっぱさとほどよい甘さが同居し、シナモンなどの香辛料のバランスが絶妙で焼き加減がいいのか周辺のパイ生地はさっくさく。見た目と違ってバターっぽい重たい感じもなく、添えられたホイップクリームもさわやかな後味です。
それに少し苦めのコーヒーがよく合うこと。
そうそう、オランダではコーヒーがおいしい。
日本のケーキの概念の倍はあろうかという大きさなので、店で鼻歌を歌いながら、ひたすらビール用のグラスを磨いている風格のある男性に
「お皿とフォークをもう一組ください」
と頼んでみました。
するとリズミカルに持ってきて、渋い声でウインクしながら
「おれは店に入ってくるときから、シェアするとわかっていたよ」と話すのでした。渋い声で。
むむ、なんともいえない映画のワンシーンのようなおじさん。あなどれません。
店そのものがアンティークのような、と思って見渡すと、昔の肖像画や磨き込まれたアンティーク家具、1800年代の新聞の切り抜きのようなものまで飾られています。
店の外を見ると創業は1789年と書かれていました。日本なら江戸時代。日本がオランダとだけ交易していたころからの老舗だったのでした。そして味もよく、たまに常連らしき客がきては生ビールを注いでもらってそれを流し込んでは去って行く。おしゃれな港町の雰囲気も。
あまりに気に入って、夕飯もここでいただきました。値段もほどほどで、料理もすばやく出てくる、落ち着いた、いいお店でした。
長蛇の列だったパンケーキ屋はどこのガイドブックにもでていましたが、この店は載っていません。やはりふらふらと何も考えずに歩くのもいいものです。
(つづく)
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