たにしのアブク 風綴り

86歳・たにしの爺。独り徘徊と追慕の日々は永い。

クララ・シューマン 愛の協奏曲

2009-08-18 20:41:01 | 劇場映画
お盆休みといえばやはり映画館。
たにしの爺たちの昭和世代は、正月とお盆は映画が娯楽であった。
爺の一番好きなスクリーン、ル・シネマは東京は渋谷の Bunkamura の6階にあります。
ここの2つのスクリーンは、いつも質の高い映画をロングランで上映してくれる。場内では一切の飲食を禁止しているところも気に入っている。

見たかった映画は 「クララ・シューマン 愛の協奏曲」

ドイツ・ロマン派音楽の代表ロベルト・シューマン(1810年~1856年)、その妻でピアニストのクララ・シューマン( 1819年~1896年)、そしてヨハネス・ブラーム(1833年~1897年)の3人をめぐる、よく知られている史実を映画化した作品。

冒頭から、夫のピアノ協奏曲イ短調第1楽章を演奏するクララ・シューマン(マルティナ・ゲデック)を、二人の男が見守っていた。1人は夫のロベルト・シューマン(パスカル・グレゴリー)。もう1人は若き作曲家、ヨハネス・ブラームス(マリック・ジディ)。

舞台はデュッセルドルフ。演奏旅行で疲れたシューマン夫妻が同所で音楽監督の職を得て、豪華な邸宅と料理人や家政婦も付く事になる。子どもたちも大喜び。ようやく作曲活動に集中するようになる。ピアノの弾き語りなどをしながら、作曲に励む若き天才・ヨハネスがシューマン家族の中に迎えられる。

代表作・交響曲第3番「ライン」の作曲に打ち込みながら、神経の病は悪化する。そして、ヨハネスの才能を評価しつつも、妻クララとの疑惑に悩むロベルト。あくまでも明るいヨハネスは子どもたちにも慕われて、献身的にクララに尽くすのだった。

映画としては、複雑なストーリーや伏線は何もない。単線的に史実を追う作りになっている。その点は平凡でもあるし不満でもある。

圧巻はやはり、全編に挿入される二人の天才作曲家の交響曲の数々。クララの葛藤が主題となって、彼女の奏でるピアノ協奏曲をはじめ、ドイツロマン派の音楽が堪能できた映画であった。

それとなんといっても、3人の芸術家らしい風貌と品格。ロベルトの狂気の中にもクララとヨハネスを見つめる澄んだ目。若く才気溢れる天才・ヨハネス。そして気品とやさしさに満ちたクララ。その豊満な胸乳がなんとも美しい。
ロベルトの死後、ヨハネスはその禁断の園に触れることができたが……

最終章ではブラームスのピアノ協奏曲第1番ニ短調第1楽章を官能的に弾くクララ、見つめるヨハネスの複雑な心情が切ない。彼は生涯彼女を慕い尽しながら、大作曲家の名声を音楽史に残した。

監督はヘルマ・サンダース=ブラームス。彼女はヨハネスの叔父から連なる正統なブラームス家の末裔というのも話題のひとつといえる。

毎日新聞の8月20の夕刊に来日している同監督の話が載っています