
雨が続き徘徊が出来なかったので先週末、久しぶりに映画を見ることにしました。
いつものシネマックスに行きましたが、
第68回カンヌ国際映画祭に出品された是枝裕和監督作品、
「海街diary」を観ることになった。
「観ることになった」とは変な書き出しになりました。
というのは、若年性アルツハイマーと診断された女性言語学者の苦悩や葛藤、家族との絆を描いた、
話題のアメリカ映画「アリスのままで」を観るつもりでした。

ところが着いてみたら、掛かっていたのは「アリのままでいたい」という昆虫映画でした。
「アリスのまま」と「アリのまま」で勘違いしていたようです。
後で知ったことですがこの「アリのままでいたい」は、
昆虫たちの生態をアリの目線で描くネイチャー映画で評判が高いようです。

そんな訳で上映時間のタイミングで「海街diary」を観ることになりました。
この映画もカンヌ映画祭で入賞の期待されていた作品で、予告編も観ていたので、
機会があれば観るつもりでしたのでちょうどよかったです。
係員に取材すると「アリスのままで」は当館では上映予定にない、
というので他のシネマックスに行かないと観れない。
アルツハイマーの適齢期にいる「徘徊たにしの爺」としては、
ぜひ、観ておきたい映画ですな。
前置きが大分長くなってしまった。
「海街diary」はとても美しい4姉妹の鎌倉物語です。
江ノ電「極楽寺駅」近くに祖父母の残した古い屋敷に住む4姉妹。、
界隈の家並み、坂道やお寺、墓、それに砂浜の海岸、
花に囲まれた家屋敷、庭と梅の古木が、
物語のバックグラウンドとして伏線になっています。

信金に勤める次女の佳乃(長澤まさみ)が、
ベットで男に抱かれながら目覚めるシーンから映画は始まります。
市民病院で働く看護師で、しっかり者で母親役のような長女幸(綾瀬はるか)、
スポーツ・ショップに勤める三女の千佳(夏帆)、
そして山形の山間の村から来る腹違いの四女・中学生すず(広瀬すず)。
この4姉妹が祖母が漬けておいた古梅酒、毎年漬ける新梅酒を飲み分けたり、
それほど深刻とは思えないような悩みを分け合い、
鎌倉ならではの旬のシラスや山菜など食事シーン、
女を作って出奔した父の通った海猫食堂の味を懐かしむ。
自然が多く残る鎌倉の美しい景色のなかに、
4姉妹の心の揺れと情感が描き出されていて、
静かな音楽も優しく、映像美を引き立たせています。

幸、佳乃、千佳の3人が喪服を付けるシーンが3回あります。
最初の山形で緑の濃い山野辺で旅立つ父の葬送のシーン。
二回目は鎌倉の家の法事に家を棄てた母が現れるシーン。
そしてラストの砂浜の海岸を寄せる波に4人が歩くシーン。
それぞれのシーンが物語の起伏になっています。

姉妹間の葛藤とかの深刻な出来事は何もないが、
心に響くいい映画でした。お勧めです。
原作は吉田秋生「海街diary」の少女コミック小学館です。
それにしてもレットカーペットに立つ、
いまが旬の日本の美女4人は魅せています。
映画を観ていて、鎌倉の昔ながらの住宅地が記憶に蘇りました。
爺が勤め始めたころ、東京芸大の彫金科を出た同僚がいました。
鎌倉の材木座海岸の近くに住んでいて、
夏に1,2度、日帰りで海水浴に誘われて、
2,3の同僚とお邪魔したことを思い出しました。
ビーチぞうりを突っかけて垣根をめぐらす路地を、
2つ3つ曲がると砂浜に出ます。
40年くらい前の夏の日ことです。

映画に何回も映った「極楽寺駅」は昨秋の記憶です。
駅に続く坂道と木造の駅舎、「極楽寺駅」の駅札。
改札手前の赤いポスト、江ノ電を跨ぐ赤い欄干の橋。
橋から眺める片方は石垣の下にホーム。
もう片方は短いトンネルの入り口です。
「極楽寺駅」は鎌倉を描く日本映画では外せないですな。